1 かかえ「黄昏トランペット」

全一話 完結済 7,492文字


公開 2023/10/20


現代ドラマ


短編



 元吹奏楽部の、社会人デビュー間もない女性が主人公。ひとことで言えば、悩み多き青春期の自分探し的なテーマを扱った作品です。

 登場人物も物語時間も切り詰めた設定で、派手な展開のドラマチックなストーリーではありませんが、そのぶんキャラの内面がじっくり描き込まれた濃密さがいいです。

 この時期に誰もが無意識下で感じる焦燥感、あるいはとりこぼし感とでも言うのか、そんな茫漠としたもやもやがイメージとしてうまく表されていて、何かしらデジャヴュみたいなものまで感じますね。いつ、どうなふうにとは言えないけど、自分にもなんかこんなのあったわ、みたいな。

 そして、そんなどうとでも解釈できそうなイメージに対し、明快に断を下し、活を入れてくれる存在がいることって、お約束っぽいけどやっぱりいいなあと思います。

「吹奏楽部」は思い出話の中にしか出てこず、人によっては「音楽小説」の中にさえ入れない方もいらっしゃるでしょうが、湾多自身は、まさにこういう作品こそ、「吹奏楽小説」と呼ぶべきなのではと思いました。絵がいいですよね。黄昏とトランペット、という。


 紹介文によれば、集英社の短編小説新人賞で最終選考の手前まで行った作品だとか。文芸小説寄りの青春小説好きな方には、お勧めです。


 → 「黄昏トランペット」https://kakuyomu.jp/works/16817330665539327582




ポイント分析

  (元)トランペット吹きなら胸がいっぱいになるかも **

  青春あるある ***

  シーンの構成・配分等は新人賞向け作品の一つのお手本 ****

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