第4話 揉む
……学校の非常階段で催眠アプリを突き付けられた現在、僕はやむを得ず虚ろな脱力状態を演じながら、
(……なんてヤツだ)
と思った。
……まさか学校で催眠アプリを使ってくるとは。
こいつ、催眠アプリ系エロ漫画の主人公並みに強欲だな……。
「琉斗、学食では酷いことを言ってしまってごめんなさいね」
ひとけのない踊り場で僕の頬をねっとりと撫でながら、里帆はそのまま僕を抱き締めるようにして――ちゅ、とキスをしてきた。
無論、マウストゥーマウスで。
「好きよ琉斗……でもこの想いを今はまだ真っ直ぐ伝えられる自信がないの。だからこんな形で勝手に想いをぶつけてしまうことを許してちょうだい」
懺悔の如く言葉を発しながら、里帆はキスを続けてくる。
……この関係は、どうするのが正解なんだろうか。
今更「演技でした」とは言えない以上、アンインストールさせれば僕の勝ちか?
でも僕は、実を言えばこの状況がイヤではない。
困ったな、参ったな、みたいな思考を巡らせているが、里帆と大胆に触れ合えることに喜びを覚えているのだ、本当は。
だから別にこのままでもいいんじゃないか? なんて思ってしまう中で――
「ぷは……そういえば、催眠アプリの命令ってどこまで作用するのかしら?」
唇を離した里帆が、催眠アプリの検証を始めそうな雰囲気をかもし出していた。
まぁ、その手の能力を手に入れたらやっておくべきだよな、検証は。
「私は現状、放心状態になれという命令を出しているけれど……これに別の命令を重ね掛け出来れば色々と捗りそうよね」
……ナニを捗らせるつもりだ。
「試しにやってみましょう」
里帆はそう前置きしたのち、
「――琉斗っ、足踏み!」
と言ってきた。
……足踏み程度でいいなら、まぁやってやろうか。
ズン、ズン。
「わっ、追加で命令出来てしまったわ! じゃ、じゃあ琉斗っ、今度はちんちんを見せてみなさい!」
――飛躍し過ぎだろ!
幾らなんでも!
おい!
なあ!
「あ、あれ? 言うことを聞かないわ……もしかしてお下劣過ぎる命令はダメ?」
そうだよそういう設定で行こうぜ!
「うーん……じゃあお下劣の範囲を探りたいわね。私のおっぱいは揉める?」
……揉めます。
僕は欲に負けて里帆のおっぱいに早速手を伸ばした。
制服越しでも目立つおっぱい。
何カップかは知らんが、少なくともE以上だとは思う。
そんな膨らみに両手を這わせ、揉み揉みしてみる。
制服越しだからゴワゴワしてるけど、堂々と揉めるのはいいな。
「ん……♡ なるほど、おっぱいは揉めるのね……だったら、しばらく揉んでてちょうだい……♡」
それが指示なら仕方ない。
僕は揉む。無心で。
変な気分になったら負けな気がする。
場所が場所だけに、理性を失うわけにもいかんし。
「んっ……これ結構気持ち良いわね……」
気持ち良いらしい。
それと同時に里帆は多少恥ずかしそうにしている。
それでも自らが指示を出した以上、当然だけれど抵抗はしてこない。
にしても、里帆のおっぱいはとにかくおっきい。
小さい頃、一緒にお風呂に入っていたときは真っ平らだったのになぁ。
どこか懐かしい気分に浸りながら、僕は揉み続ける。
それが注文なわけで、演技だとバレないためにも仕方がない。
そう、仕方がないんだよなぁ。
「んぅっ……♡ りゅ、琉斗ダメだわ……一旦ステイよ」
やがて里帆がそう言ってきた。
内股になっていて、その脚は生まれたての子鹿のようにブルブルしている。
「はあ、はあ……マズいわ。替えはないっていうのに……」
おいおい……まさかこいつ……。
「こ、こんな姿を素の琉斗に見られたら死ねるわね……今回の戯れはもうこの辺でやめておきましょう」
見てますよ! 思いっきり!
「……琉斗、あなたは私がここを立ち去った5秒後に記憶を保持せず正気へと戻ること。いいわね?」
そんな指示を言い残して、里帆は非常階段から立ち去っていった。
がちゃん、とドアが閉まったところで、僕はふぅ、とひと息。
やれやれ……なんとか乗り越えたか。
にしてもあいつ、僕が演技だと知ったらガチで恥ずかしくて死ぬんじゃないのか?
あいつの名誉のためにも、僕は今後も演技を頑張るしかないのかもな……。
まぁ、今回みたいな演技なら……望むところではあるが。
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