第4話
「こんなのはどう?」
「全然ちがーう。」
彼に誘われて海に来た。
私は部屋に海の作ったアートを置くのが好きだ。
欠けて丸くなったガラス、波に洗われた貝殻、そしてイメージだけで何にでもなれそうな流木。
せっかく、引きこもりがちの私が海まで来たなら、戦利品を持って帰りたい。
「じゃあ、これは?」
「笑う。それは薪になりそう。」
センスないなぁ。見たことないかなぁ・・・。流木アート。
波打ち際へ。今日の波はべた凪だ。
静かな波が寄せては返し、時々、白い貝殻を置いて行く。
水平線に目をやれば、遠く半島が見える。あれは、本物の島なのかなぁ。
波がクルクルと砂を飲み込む。
こっちにおいで。楽になれるよ。もう、いいよ。よく頑張ったよ。
自然に涙が溢れる。
波に誘われた気がした。波に許された気がした。
「何に黄昏れてるの?」
「私って漂流物みたいだなぁと思って。」
「ミカちゃんワールド、だね。」
彼はまた肯定も否定もしない。ただ、じっと私を見ていた。
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