第34話

友達の名前は先人さきとさんという。私の話を真剣に聞いてくれた。


「…なるほど。別居してて、無視されてるけど、離婚を引き延ばされてる状態か」


「はい」


「なんで?あいつ別れたくないの?」


「ただ、反省しろと…」


「反省って、不倫したって言ったのか?」


「好きな人ができたと言いました」


「まじ、お前らうまく話ができねぇな…」


「そういうことなのでしょうか。僕は、なにをしてもすぐに怒られてしまって…」


「零くん。その子が好きなのか?」


「はい。とても」


…いや、なにそれ、恥ずかしいんだけど。

暗いからよかった。サングラスもしてたし…。


「ですが、このまま離婚しないで付き合うのは辛いです。早く届けを出さないといけないんです」


「子供の件は?」


「今まで通り、養育費を支払います」


「子供と離れるの辛くない?」


「辛いです…が、僕は…触ったりすることも、世話することも許されていません」


「…え?」


「育児はするなと…」


「なんで…一緒にやってるって、柚香ゆかが…」


「いいえ」


零さんの横に座ってた先人さんはうなだれた。


「仕事して、お金を稼がないと、僕には存在意義はないようでした」


「そんなの、ありえねぇから。てか、お前なんで引っ越ししまくってたんだよ!」


「ほのかが、嫌そうにしてました…僕が、友達と話してたり、ご近所さんと話すのも」

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