第21話

更衣室に置いていた私服に着替えなきゃ。


げ、私のブラ…切られてる。


これ、小学生のときにもやられた。私を妬んだ子にやられた。誰かに、妬まれてる。

…これ気に入ってたのに。


そういえば、瀬川さんが、困ったことあったら社長を頼ってねって…。それは、私の所属事務所じゃなくて、ここのモデル会社の。


水着のまま、荷物を持って、社長室のドアを叩く。


「すみません、ピーチです」


「どうぞ?」


すぐ返事があったので入る。


「…どうかされました?」


やっぱり言っていいのか迷った。だって私は他の事務所の人。


「どうぞ、かけてください」


社長は優しく扱ってくれた。


「…あの」


「なんでもお話しして下さい」


「私の、下着、ハサミで切られてました」


「…え?それは、私にも見せられますか?嫌ですか?」


「これです」


バックから引きずり出して、机に置いた。


「…ひどい…。これは…個人ロッカーを早々に作らないといけませんね。これ、同じもの買いに行きます」


「え、でも…」


「車で送ります。申し訳ありませんが、今着てる水着の上から上着を着て移動しましょう」


慌ててバックに閉まった。

車に乗せてくださるのですか。

外は寒いからって、車にあった毛布を膝にかけてくれた。


「不快な思いをさせてすみませんでした」


後部座席に座る私に向けて話してる。


「…いえ、ごめんなさい、私が…」


「マネージャーさんに連絡しますね」


「いえ!それはしないで下さい」


「え、しかし…」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る