第2話 旅立ちの時ペン!

「……どうしよ。」


スライム…いや、マーラ姫の姿をしたスライムは改めて自分の姿を見つめる


しなやかな体…年相応のかわいらしい中に凛々しさを感じる美顔…なんといっても……本を読むことだけではわからなかった!あんなに強いマーラ姫の若い女の子

特有の吸い付くような柔肌……そしてそれを感じることができる五感……はっきり言って最高です………と、スライムは思っていた


「……村から…出よう…、人の国に…いきたい…!!マーラ姫みたいに…仲間を作って…笑いあいながら冒険するんだ……!!」


「―――でも…村の試練……う〜ん…めんどくさいなぁ……」


村の試練、それはスライム村のスライムが村の縄張りから出て巣立ちできるかの試験である。まぁ、ただ試験と言ってもスライム村の村長と話して許可をもらうだけなのだが…もらうだけなのだが……


「―――よしっ!夜逃げしよう!」


スライム、逃亡を決意


「これとこれと〜…後少しずつ貯めてた人ヒューマンのお金!…………よしっ!これおっけー!ペンタロウも準備いい?うん!いこう!」


周りのスライムにバレないようにそろり…そろり…と静かに歩いてスライムむらの出口に向かおうとしたのだが…


しかし…荷物が重い…進化したとはいえ……水や食料は必要だから仕方ないが、いかんせんマーラ姫の本が束が重い……。これでは途中でバレる可能性がたかい……


「……いやっでもマーラ姫の本は絶対捨てられないぃ……マーラ姫ぇ……」


「……………………ごめんね…、絶対いつか取りに来るから……!」


スライムが悔やみながら本をおいていく決断をした。


そしてもう一度夜逃げを決行

さっきとは違い素早く移動することができ……スライム村出口のすぐそばまで来た……


「ふぅ……よしっ…」


出口についたスライムは振り返りむらの方を見て一礼する。

たくさんお世話に場所だ


「いままで…ありがとうございました……!」


そうして…新たな生活を目の前にし、わくわくしながら村を出る……

 

『﴾⦕待て⦖﴿』


 その時だった。


絶対に抗えない…その言葉に籠もった魔力

『バサァ!!』と大きな音を立て翼を仕舞う空気の圧で吹き飛ばされそうになる

『ズシン…ズシン…』と音を立て後ろから迫ってくる圧倒的な存在

やがてそれは月明かりを隠しスライムの背に立つ


「そ…そんちょう…さん……」


そのスライムは…スライム村村長にして魔王に最も近い強さを持つスライムの進化の現段階での一番先の進化…『エンシェント・ドラゴノイドスライム』


ドラゴンの姿をしていた…先程言ったスライム村の試練……「村長とはなすだけ」……つまり”この”村長とスライム村の外に出るだけの資格があるかの話し合いをしなければならないのだ


『村の外に出ようとしたな…?』


「あっ…いや…ちがくて………」


『違う……?ならば村に戻れ、今すぐにだ』とんでもない威圧、見るだけでその生物を射殺すことができそうな目に睨められスライムはその場で縮こまりたい気持ちになる。


「―――っ!……」夜逃げは失敗した。この村長にバレてしまってはどうにもできない………。


でも…!それでも…!


(冒険したいんだ…たくさんの仲間と一緒に……今、今じゃないと……次いつ出ようと決断できるかわからないんだ……!)


「あ、あの村長さん…!!」


『……なんだ』


「わ、わたし…!人間の国に行きたい…!…です…」


村長は驚いた顔をしたが一息ついて言う

『……お前は人間の国に行く…その意味がわかっているのか?』


「えっ?」


『昔…お前の他にも人間の国に行きたいと言うやつが多く居た…だが、その子達はどうなったと思う……?』


『全員死んだ。スライムは進化先の姿を長時間維持するには訓練がいる…訓練をして出たものもいる。だがな、全員死んだ。あるものは食われ、あるものは核を生きたまま切り刻まれ削られ、あるものはスライムの特性として慰めものにされ餓死した。」


「…………」


『……あるものは生き残った。生き残ったが…そいつはスライムだということを理解してくれる旦那と結婚して…スライムということがバレ……眼の前で旦那をゆっくりと殺され、多くの変態どもに犯され、心をスタボロにして村に帰ってきた者もいる』

『まぁ…その恨みでここまで強くなれのかもしれないがな……』と小声で付け加える


『わかるか…?人間共の心が…あいつらは私達を材料やおもちゃとしてしか見ていない。それくらいの存在として見ているんだよ』


「…………」


『だから…諦めろ。せめて行くならもう100年はここで暮らしもう一段階進化してからだ……』


そう言って…申し訳無さそうに…でも自分を心配して言ってくれていることがわかる

でも……


「ゃだ…」


『……なんて言った?』


「いやだ!!」


『……』


「私も…私だってもしかしたらひどい目に合うかもしれない…お母さんのいとこだって帰ってこなかったことは知ってる…きっと死んじゃったんだって…」


『ならば……なぜ…!』


「それでも…!ずっとずっと待ってた!いつ進化できるかって…でも今日やっと進化した…それもずっと憧れてたヒューマノイドに…だから…!!」


『だから!それはここで100年特訓した後でもできるだろう!?』

怒っているその言葉が体に重い圧が足かせとなってついてくる


「今じゃないといやなんだ!!今じゃないと……もう…いつ私が決断できるかわからないから……だから…今私が大好きで大好きでやまないマーラ姫の冒険みたいに…辛いことも楽しいことも共有できるような仲間をつくって死ぬ前に『人生で一番面白い冒険』だったって!そんな冒険を…!マーラ姫の冒険を長い時間で忘れる前に!大好きな間に!したいんです!!最高の冒険を!」


『…………そ…うか……そうかぁ…………はぁ〜〜〜………』


村長の特大のため息に身がこわばる…しかし


『…………いつでも帰ってこいよ』

『何かあったらこの森の中まで逃げてこい…そしたら……なにがあっても私が助けてやる』


「……!!…はい…!」

怒ってる村長なんて初めて見たから怖かったけど、改めてやっぱり皆から好かれてる人?なんだなぁ…と感じる


そして…いざ旅立ちのときがやってくる生まれた頃からずっと住んでいたスライムの村…出口をくぐるその直前、振り返って


「…今までお世話になりました!みんな大好きです!いってきます!」


『…あぁ、いってらっしゃい』


こうして一人のスライムの大冒険はここから始まった・・・!





――――――――――――――――――半年後―――――――――――――――――





「いけぇーー!!差せーーー!!!!ゴブライダー!!!!」


「あぁあああーーーーーー!!!!シーホースきちゃだめええええ!!!!!」


【ゴール!シーホースが一着でゴールしましたー!盛大な拍手をお願いします!】


・・・・・・


「あぁぁ〜…………ぺん、また一文無しになっちゃったぺん……」

そう言ってトボトボと帰路につく一人の少女


『あ!見つけたぞーー!この野郎はやく借金100万ビー返しやがれー!!』


「…!?うげ!?もう借金取りに見つかったぺんー!?」


自身の事を「ぺん」と名乗るその少女は





半年の月日を経て借金額100万に到達したスライム村出身のスライムであった







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こんにちは!「まよつな」です!

二話目も読んでくれた読者様…ありがとうございます!

こっからバシバシ「ぺん」ちゃんの冒険について書いていく……いやでも次回からは私が書くんじゃなくて……?………まぁそこら辺は次回をお楽しみに!


「スライムちゃんかわいい!」とか「スライムたん(;´Д`)ハァハァ」とか思ってくださる方はフォローや☆、♥などしてくださると作者がラージャン並のビームで喜びます。思ってなくてもしてくださると極限化ラージャン並の飛鳥文化アタックで喜びますので…ぜひ!ぜひ…!お願いします!















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