第15話 騎士として

 リースティアヌ王国の第一王女ティアナの騎士であるヴィルは、自分が仕える主であるティアナに好意を寄せていた。

 しかし、ヴィルはティアナの騎士であり、身分差がある為、この恋は決して叶うことはない。それでもヴィルはティアナの側で、騎士としてティアナの役に立ち、守ることが出来るのなら、それでいい。と最近までは思っていた。


 だが、このリースティアヌ王国の第一王子であり、ティアナの実の兄でもあるサクヤが、アリーシェに堂々と自分の気持ちを伝えているのを見て、ヴィルは少し考えが変わったのだ。


「俺もサクヤ王子殿下のように、自分自身の気持ちにもっと素直になろう」


ヴィルはベットに寝転がりながら、暗い天井を見つめて呟いた。徐々に重くなってくる瞼を閉じ、ヴィルは深い眠りへと落ちていった。



 秋の肌寒い風が服越しに当たり、アリーシェは、身震いする。用があって騎士団の営所に訪れていたアリーシェは、騎士団の一人に用がある人物を呼んでもらい、その人物がやって来るのを待っていた。


「おお、アリーシェ!! 久しぶりだな。元気にしていたか?」


 そう言いアリーシェに声を掛けてきた人物を見てアリーシェは軽く会釈をしてから、返事する。


「はい。元気ですよ! というか、遅かったですね」

「待たせてしまって申し訳ないな。それで、何用だ?」


 王立騎士団団長であるオリヴィスは、アリーシェの大先輩に当たり、アリーシェのことをティアナにゴリ押しした人物でもある。

 

「大丈夫です。最近、休暇をとって実家に帰っていたんですけど、王都で手土産を買ってきたので、もしよかったら皆さんで食べてください」

「おお、そうだったんだな。ありがとう。頂くとするよ」


 オリヴィスはアリーシェから手渡されたクッキーの入った丸い缶を受け取ると、アリーシェを見てにこやかに告げる。


「アリーシェ、お前、サクヤ王子殿下に気に入られたみたいだな。よかったじゃないか〜!」

「え? なんで知ってるんですか?」

「騎士団の間ではそこそこ有名になってるぞ。アリーシェがサクヤ王子殿下に好かれているってな!」

「うわー、最悪……」


 アリーシェはあからさまに嫌そうな顔をする。オリヴィスはそんなアリーシェの顔を見て、何故かにこにことしていた。


「まあ、いいじゃないか。悪い意味で認知されるよりは」

「そうですね、わざわざ教えていただきありがとうございます。それでは私はこれで失礼します」


 アリーシェは別れの言葉を告げて、その場を後にした。オリヴィスはアリーシェの去り行く後ろ姿を見つめながら、嬉しそうに呟く。


「しかし、大分、いい顔つきになったなぁ」

 

 これからも騎士として成長し続けるであろうアリーシェに、オリヴィスは心の中で頑張れよ!とエールを送った。

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