第14話 いつもの日常

 1週間の休みが終わりアリーシェが城に帰って来ていることを知ったサクヤは、アリーシェと顔を合わせる為、早朝、城の中庭で剣の鍛錬をするアリーシェの元に訪れた。


「アリーシェ、久しぶりだな!」

「何でこんな朝早くにサクヤ王子殿下が…… あ、はい。お久しぶりですね」


 サクヤが声を掛けてきた為、アリーシェは木刀を床に置く。

 アリーシェは満面の笑みでこちらを見つめてくるサクヤの顔を見て、ため息を吐きそうになる。1週間、離れていたから、少しは私へのアプローチも落ち着いたかと思っていたが、全然そうでもないみたいだ。


「あの、サクヤ王子殿下、そんな笑顔でじっと見るのやめてもらっていいですか?」

「何でだ? 気にしないで鍛錬続けていいぞ」

「わかりました。では、今日はここらで終わりにしますので、失礼します」


 アリーシェは床に置いていた木刀を手に持って、その場を立ち去ろうとしたが、サクヤに左腕を掴まれたことにより歩き出そうとしていた足を止める。


「アリーシェ、少しでいいから話さないか」

「わかりました。長くなりそうだったらすぐ帰りますからね」


 アリーシェはそう釘を刺してから、サクヤに向き直る。


「あと、手を離してください」

「あ、すまん」


 サクヤはアリーシェの左腕を掴んでいた手を離す。サクヤ王子は私と何を話したいんだろうかと疑問に思いながら、アリーシェはサクヤが話し始めるのを待つ。


「休暇だったみたいだが、休めたか?」

「はい、休めましたよ」

「そうか、ならよかった。引き止めてすまなかった。またな」


 サクヤはそう言い残し、立ち去って行く。アリーシェは遠去かるサクヤの後ろ姿を見つめながら、ぽつりと呟く。


「何だったんだろ……」


 相変わらずサクヤ王子殿下は、変な人だな。とアリーシェは思いながら、その場を後にした。

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