第3話 逆襲
鬨の声と共に隠れていた若い衆が一気に馬に駆け寄った。手下どもの馬を取り囲み、そこから引きずり下ろすと手下どもを叩きのめした。手下は5人だった。うち3人は駆け出して逃げていってしまった。残り2人は気絶したようなので川原にほっぽりだしておいた。余りにあっけなく、血しぶきの一滴も散らずに夜襲は終わった。
ケンジと若い衆たちはめいめい家に帰って、死んだように寝てしまった。
しかしコウスケは、逃げていった手下どもが「覚えとけ!」と叫んでいたのが気になっていた。
その日の昼のことである。ケンジはコウスケの大声で目を覚ました。
「どうした?朝っぱらからうるせえなあ」
「襲撃だよ!シンネンの手下の!火事だ!」
なんと、村の周りに火をつけられ、今にもアヘン畑の方に火が広がろうとしているところではないか。
「今朝の仕返しか……」コウスケが言う。
村じゅうがパニックになっていた。村長など、ショックで足がガクガク震えている。
シンネンの手下は片っ端から家に火をつけ、めぼしいものを略奪している。村の家々がどんどん燃えていくのを見ながら、コウスケは激しい怒りに駆られていた。
「俺の家がぁ!」
「ヨーコが攫われたわ!」
口々に被害があったのを叫んで、村人たちが右往左往する中、ケンジだけは違った。真っ直ぐ、燃え盛っているアヘン畑に向かったのだ。
彼はアヘン畑に立ってそこで深呼吸し、村の住人たちに叫んだ。
「おい!お前ら!せっかくクスリが盛大に燃えてんだ!吸わねえともったいねえぞ」
村人たちは最初、呆れてものも言えなかったが、最早村のことなどどうでもよくなってきた村人がひとり、またひとりとアヘン畑の輪に加わっていった。
じつは、このあとの数時間、村人たちの記憶は途切れている。しかし、状況から判断するに、とんでもなくハイになった村の住人たちがシンネンの手下をぶちのめしたと見るのが妥当だろう。とにかく、村襲撃の数時間後には手下は全員、死骸か半身不随、とにかくまともに生きていくことはできない状態になっていた。
それでやめとけば良かったものの、特にハイになっていたケンジとコウスケは
「俺らはシンネンをぶっ殺しに行ってくるぜえ」
と言って、ままならない足取りでシンネンの根城があるコーフの方に行ってしまい、村人もまだ多幸感が抜けきっていなかったので馬鹿2人を送り出してしまった。
こうして、ガンギマった不良2人は、暴君タケダ=シンネンに天誅を下すこととなったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます