第45話 可愛い義妹たちの為に

 麻雀アプリを遊び終えた。

 気づけば時間もかなり経っていた。

 というか、詩乃も幸来も遊び疲れてベッドで寝落ち。


 幸い、ベッドは二つある。


 もう片方の空いている方で寝るか。



「おやすみ、二人とも」



 俺も眠りに就いた。

 三秒で夢の世界に落ちた。



 ――次の日。



 ガタガタと音が聞こえて俺は目が覚めた。


 ん、なんだ?


 目を開けると、そこは詩乃と幸来の着替えシーン……って、マジか!?



「……急がないと!」

「ち、遅刻寸前! あたしは今日が初登校なのに~!」



 二人ともそう口走っていた。え、遅刻寸前!?

 急いでスマホを覗くと時間が結構経っていた。まずい!!


 起き上がると二人ともこちらを見て顔を赤くしていた。



「あ……お兄ちゃん。起きたんだ」

「お、おはよう……ございます」



 詩乃も幸来も下着姿で今から制服を着るところ。ああ、そういえば幸来も登校をはじめるんだったな。

 手続きはかなり前からしてあり、奥野校長も(事件の関係上)特例として認めている。だから今日から幸来も登校することになったのだ。


 いやしかし、これはマズイ。



「……お、おはよう……」



 二人とも気まずそうに固まっている。

 俺はどうしようか。


 うん、とりあえず目を隠そう。



「お兄ちゃん、あんまり見ないでね……」

「し、詩乃ちゃんの言う通りです。ジロジロ見ないでくださいっ」



 追い出されないだけマシか。

 今は目を隠して待つしかない。



 数分後、二人とも制服に着替えて終えていた。



「おぉ、幸来。可愛いな!」

「えへ。ありがとうございます……! こう言うのもなんですが、前の学校はあんまり好きじゃなかったので、詩乃ちゃんと学校へ行けて嬉しいです」



 過去にいろいろあったんだろうな。

 けど、幸来もこれからは第二の人生を歩んでいく。

 可奈が八塚家に話を通してくれたおかげで、事はスムーズに運んでいる。


 今や、幸来は正式な義理の妹。

 まあ本人が希望していることでもあるし、問題ないのだ。



 俺は私服に着替え、仕事の準備をした。

 もちろん、今日も事務員の仕事をこなすのだ。



「よし、行こう」



「うん!」

「はいっ!」



 詩乃も幸来も俺の手を繋ぐ。


 こうして出勤・登校できる日がくるなんて夢のようだ。



 今日もがんばろう。


 可愛い義妹たちの為に。

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