第24話 義妹と新生活スタート
ホテルへ帰り、安全に過ごした。
だが、あのサイトウというニセ警官が気掛かりだ。明日にはホテルを変えておこう。
こういう時、ホテル暮らしなら簡単に移住できるから楽でいい。
泊まっているホテルは、夕食つき。
おかげで外食する手間がなくて助かる。
飯を済ませ、再び部屋へ戻った。
「疲れたね、お兄ちゃん」
「そうだな。そろそろ寝るか」
あれから、時間も経ち……就寝時間。
幸い、この部屋にはベッドが二つ。
間違いが起きることはない。
いや、けどちょっと残念かな。
渋々、自分のベッドへ向かうと詩乃が俺の服を引っ張ってきた。
「一緒がいい」
「詩乃……いいのか?」
「うん。だって不安なんだもん」
「分かった。詩乃がいいのなら」
添い寝は一度している。しているけど、やはり緊張する……。
まだ慣れないというか、ずっと慣れないだろうなぁ。詩乃は可愛いし、良い匂いもするし。
そうだ。俺はずっとドキドキしている。
今だって――。
「もうちょっとこっち来て」
「お、おう」
密着するように詩乃が抱きついてきた。
まるで俺を抱き枕にするように。
こ、これは想定外すぎる密着度だ。
寝ようにも寝られないかも……。
けど、せっかくのお誘いを無下にするわけにもいかない。俺は腕を回し、詩乃を抱き寄せた。
「……嬉しい」
「よかった」
「あのね、お兄ちゃん」
「ん?」
「いつも守ってくれて、ありがと」
「ああ、これからも一緒だぞ」
「……絶対だからね。いつか……結婚……して」
うとうとする詩乃。今にも寝落ちしそうな勢いだ。
――って、結婚して!?
願ったり叶ったりだよ、それは。
俺の願望は案外、簡単に叶うかもしれないな。でも、今はまず、安心して暮らせるようにしないと。
それが最優先事項だ。
◆
目を覚まし、体を起こすと目の前で制服に着替える詩乃がいた。
ぼうっとする頭の中、その光景を目の当たりにして――時が止まった。
ん……詩乃が下着姿で……えっと、制服で……。
「うぉ!?!?」
思わず飛び跳ね、俺は後ずさった。
ま、まさか現役女子高生の生着替えを目撃してしまうとは!
すげぇ焦った。
てか、さすがに制服補正強すぎるって。
「あ、おはよう。お兄ちゃん」
「お、おはよ……。可愛いな、制服姿」
「えへー。今日から高校生に復帰だよ~」
「そうだったな。おめでとう、詩乃」
「ありがとう~!」
「それと、今日から正式に『柴犬家』の養子となった」
「え、それって」
「ああ。これで兄妹だ」
「お兄ちゃん!」
ぱぁっと笑顔になる詩乃は、制服姿のまま飛びついてきた。
おぉ、こんな天使な笑顔は出会って初めてだ。
俺も嬉しい。嬉しい、嬉しい……!
「今日は俺も詩乃についていく。どのみちホテルも変えるしさ」
「分かった。一緒に登校だね!」
「うん。俺も準備するよ」
「待ってるね!」
俺も仕度を進めた。
久しぶりに校長とも会うし、一応身だしなみはしっかりしておかないと。
数十分後、準備を終えて部屋を出た。
学校へ行く前に三鷹さんに挨拶をした。
「おはよう、三鷹さん」
「おはようございます。今日は学校ですか?」
「ああ、そんなとこ。詩乃についていくよ。ほら、一人だと危険だろ」
「そうですね。私もお手伝いできることがあれば良いのですが」
「いや、大丈夫だ。それより、ホテルを変える。あとで場所を送るから、先に行ってくれ」
「分かりました。お気をつけて」
「じゃ、また」
荷物を三鷹さんに任せた。
俺は詩乃を連れてホテルの外へ。いよいよ学校へ向かう。
外へ出ると、青空が広がっていた。それと変わらない雑踏。みんな世話しなく、どこかへ向かっている。そんな波の中へ俺たちも潜り込む。
「ちょっと緊張する……」
詩乃は不安気だった。
そうだよな。これから新しい学校での生活が始まるんだ。
今まで一人で大変だったようだし、悩みも尽きないだろう。だが、大丈夫だ。俺がいる。俺が詩乃を支える。
第一に義妹の幸せを考える。それが俺に出来る事だ。
「なぁに、今日は俺がいるんだ。安心しろって」
「そうだね……そうだよね。うん、がんばるっ」
元気が出たのか、詩乃は俺の腕に抱きついてくる。おいおい、周りの視線が――いや、気にしないか。
都会人は他人のことには無関心だからな。
気にせず学校を目指した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます