第20話 完全決着と同棲のはじまり

 直ぐに後退して俺は、刀の場所を目指した。

 ガードマンの男達が俺を追いかけてくるが、その前に刀を掴んだ。直ぐに鞘から抜き、俺はブンブン振るった。



「やめろッ!!」



「「!?」」



 屈強な大男たちも、さすがに刀を前に怯んだ。



「お前たちを切り殺すぞ!」


「さ、さすがに刀を相手にできねえ……」

「命は惜しい。ずらかるぞ」



 二人は勝てないと判断して逃げ去っていく。



「お、おい!! お前達をいくらで雇ったと思っている!! くそ、役立たずが!!」



 凍夜はガードマンを失った。

 刀と素手では雲泥の差がある。

 それに俺はガキの頃に剣道を習っている。その時、木刀や真剣での訓練も積んでいた。

 だから、素人よりはまともに扱える。



「おい、凍夜。もういい加減にしろ」

「や、八一てめぇ……銃刀法違反だろうが!」

「不法侵入とレイプ魔のお前が言うな!! てか、この刀は登録してあるだよ、バカ!」

「だからって武器に使っていいのかよ!」


「不法侵入者から身を守るための正当防衛だ」

「くそが!!」



 青ざめる凍夜は、幸来から離れて逃げようとしていた。もう逃がさん。



「凍夜、お前にはもうウンザリだ。断罪してやる」

「ふざけんな! 八一、てめぇみたいな雑魚に殺されてたまるか! それより、詩乃って子を探して先に犯してやるよ!!」



 走って奥へ逃げようとする凍夜。させるわけがない。


 俺は刀を全力で投げた。



「くらええええッ!!」



 飛翔する刃が凍夜の肩をかすめた。



「ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!」



 刀は地面に突き刺さって、直後、凍夜が転倒。

 俺は走って距離を詰めた。


「こんなもので終わらせないぞ」


 倒れている凍夜に馬乗りになり、俺は見下した。



「ひ、ひぃぃぃ! 八一、や、やめてくれ! それより、血が……血が出てやべえ! 救急車を呼んでくれえええええ!!」



 情けない声で叫ぶ凍夜。

 涙をボロボロ流し、鼻水も垂れ流し。


 自分が敗北すれば命乞いか。


 なんて情けない奴!


 けどお前は容赦なく可奈や幸来を犯した。この罪はあまりに重い。



「はぁ……もういいよ、凍夜」

「助けてくれるのか!?」


「そんなわけねぇだろ!!」



 右ストレートで凍夜の顔面を殴った。



「ごほっ!?」


「痛いか。凍夜。けどな、可奈も幸来はもっと痛かったはずだ」


「ばふぅ!?」



 また一発と殴っていく。



「これ以上俺に関わるな。人を貶めるな!」



 鉄拳制裁を加える。



「ぼぎゃああ!! ……やべ、やべてくれぇ……し、死んで……しまぶ」



 顔が変形していく凍夜。これ以上は過剰防衛になってしまう。

 俺は腰を上げて凍夜の体を踏みつけた。



「素直に捕まれ。そして刑務所に入れ。罪を償うんだ。それで命だけは見逃してやる。約束しろ!」


「…………は、はい。約束……しまづ」



 決着はついた。

 俺は直ぐに通報して警察を呼んだ。



 ◆



 三回目ともなれば警察には飽きられるしかなかった。



「まったく、柴犬家でまた騒動ですか」

「すみません。お巡りさん」

「いや、殺人事件にならなくて良かったですが。しかし、不同意性交等の現場に立ち会うことになるとは」



 そう。幸来は凍夜に乱暴されてしまった。

 彼女は意識を失い、精神をズタズタにされてしまった。トラウマでしばらく目覚めないかもと医者が言っていた。


 屋敷もメチャクチャになってしまい、セキュリティの甘さも指摘され、しばらく住めなくなった。


 それと詩乃は地下で見つかった。


 そういえば、父上が趣味で地下室を作っていたっけな。そこが避難所になったというわけだ。


 よかった。父上の趣味に救われた。



「お兄ちゃん……大丈夫?」

「ああ、詩乃が無事でよかった」

「うん」

「でも、幸来は病院に運ばれた。しばらく目を覚まさないかもって……酷いよな」

「……幸来ちゃん、わたしをかばって……」


 辛そうな表情をする詩乃。

 そうだったのか。

 幸来は詩乃をかばってくれたのか。


 俺は……なんてことを。


 もう少し早く帰って来れていれば。



 その後、凍夜は逮捕・収監されることに。

 天王寺家の癒着も指摘され、警察上層部も今度は凍夜を釈放するなど出来なくなった。

 もうこれで二度と会うことはない。


 そして、俺と詩乃は邸宅を去ることにした。

 二人で同棲を決めたんだ。

 しばらくはホテル暮らしだ。

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