第2話 白梅
「うえ~~~ん!また逃げられたあ~~~!」
「お~~~。よしよし」
節分神社にて。
この時期にしては少し高いながらも、曇天の空なので体感的にそれほど温かくは感じられない中、毎年恒例の豆まきの第一回目が終わった頃の事であった。
日陰になっている白梅の傍らで巫女が休憩していると、顔馴染みの雪女が突如として出現。胸に抱き着いては、大泣きし始めたのだ。
鬼にまた逃げられたと訴えるのだ。
またか、もう諦めて梅とか水仙に標的を絞ればいいのに。巫女は思った。
鬼はとかく栄養があるらしい。
その話が本当なのか噓なのか。
この雪女が鬼を氷漬けにできた事がないのでわからない。
ただ、鬼を捕縛する困難さはよくわかっている。
なんせ、強靭で俊敏で凶暴で攻撃力が強いのだ。
さっさと諦めるに尽きるのだ。
「何度も言ってるけど、さっさと諦めなさいよ。ほら、この白梅を氷漬けにすればいいわ」
「やだやだ~~~。鬼を氷漬けにしたい~~~。鬼の栄養を味わってみたい~~~」
高級食材みたいなものか。
フォアグラとか、キャビアとか、あと、何だっけ、松茸だっけ。
まあ、そんな感じかな。
ぼんやりと巫女は思いながら、二回目の豆まきが始まるまで、よしよしと雪女を慰め続けたのであった。
(2024.1.30)
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