第3話 妙案




 二回目の豆まきが始まるから行くわ。

 巫女はそう言って立ち去って行った。

 まだめそめそと泣く雪女を置いて。


 いつもは十分もすれば泣き止んでいたのだが、よほど悔しかったらしい。

 毎年毎年逃げられている鬱憤が溜まりに溜まっているのだろう。

 二回目の豆まきが終わったら、梅シロップのかき氷でも持って行ってあげるか。

 巫女が振り返ると、もう雪女はいなくなっていた。

 まあどうせまた会えるだろう。

 のんきにそう思っていたのだが。




 節分用に建てられた高台に巫女や神主がずらりと並んで、袋詰めした豆やもち、ピーナッツを下で待ち構えている人たちに投げる中に、雪女も、いた。

 誰よりも素早く勢いよく袋詰めされた豆やもち、ピーナッツを投げ続けていた。


 狙いは、群衆に紛れこんでいる赤鬼一体のみ。

 逃げられたあの赤鬼だ。


 豆を当てまくって弱らせてから氷漬けにすればいい。

 長年逃げ続けられた結果思いついた妙案を、嬉々として実行していたのだ。











(2024.1.31)



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