雪女と赤鬼の節分物語

藤泉都理

第1話 如月




 雪の力が強くなる月でもあり、春夏秋眠に向けて栄養を集める月でもある如月。

 節分のために、鬼界からたくさんの鬼が地上へと訪れる如月。


 栄養をたらふく奪おうと考えた雪女が、活きのいい鬼を氷漬けにしようとしたが、俊敏で凶暴で破壊力の強い鬼に逃げられ続けてしまう。

 今年も鬼は無理か、やはり動かない植物の栄養をたらふく奪おうか、いや今年はもう少し頑張ろう。

 自分を鼓舞した雪女が一体の鬼に狙いを定めて、力を集中して、雪風を一点放出し続けた結果。


「やった………やったわ!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、雪女は全身氷漬けにした一体の赤鬼に近づいた。

 あとは、たらふく栄養を奪い取ってまた野に逃がすだけ。

 殺しはしないから安心してね。

 雪女が鬼に言った時だった。

 分厚い氷に亀裂が走ったかと思えば、氷は蒸気を上げながら瞬く間に消失。


「悪い。行かなきゃならんので、またな」


 氷から解放された赤鬼は、さわやかな笑顔を雪女に向けては駆け走って行った。


「また。逃げられた」


 ぐすん。

 雪女は暫くの間、その場に座り込んでいたのであった。











(2024.1.30)



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