歩兵(ふひょう)と金に成らずや
椿屋 蒐
一話完結。
前へー進め!
号令と同時に、足を一歩踏み出す。
前へー進め!
また一歩、足を進める。
前へー進め!
号令と同時に足を踏み出せば、これまでより一歩前進した位置にいることができる。
前に進めば、ゴールに近づく。
ゴールには望んだものがあるのだ。
だから、号令に従っていれば。
前へー進め!
足を一歩踏み出す。
前へー進め!
また一歩、足を進める。
前へー進め!
号令と同時に足を踏み出して一歩前進…することができなかった。
前に進めなければ、ゴールには近づかない。
ゴールには、私が望んだものがあるはずなのに。
それでも、もう号令に従うことができなくなっていた。
前へー進め!
ゴールに向かうべく、下される号令。
前へー進め!
足が進めることができなくとも、鳴り続ける号令。
前へー進め!
従ってさえいれば、ゴールに近づけるもの。
ゴールに近づけば、望んだものが手に入る。
しかしゴールに近づくにつれ、道は険しくなる。
角ばった石がごろごろ転がっていても、車が通れない獣道でも、号令が下れば前に進まなければならない。
前進せずして、望むものは手に入らない。
だから、号令をかけ続けなければ。
前進することができるように。
そう自らを鼓舞して、また号令をかける。
ゴールに辿り着けさえすれば。
そう信じて前進のみを続けた同志がもう視界にいないことに目を瞑り、重い足を上げる。
次に目を開けたら、金ぴかに輝くゴールが見えることを願って。
歩兵(ふひょう)と金に成らずや 椿屋 蒐 @Sell_Camellia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます