第43話

「アキト様、俺です」

「入って……」

「失礼します」

「どうしたの?」

「いえ、今日はこれで訓練終了だったので……その、あの、すいません」

「なんで謝るのさ?」

「いや、その、調子に乗りすぎてしまったかなと」

「別に怒ってないし、気にはしてないの」

「本当ですか?」

「うん、だから気にしないで」

「ありがとうございます」

「じゃあ、僕は温泉入ってくるから」

「はい、わかりました」

アキトは温泉に向かう。

そして、夕食を食べ終えるとアキトは自室に戻る。

ベッドに腰掛けていると

グラウディウスもベッドに腰掛ける。

「アキト様」

「ん?どした?」

「俺、もっと強くなりたいです。アキト様の力になれるように」

「そうか……わかった。明日は冒険者の店でクエスト受けるからね」

「はい。わかりましたアキト様……おやすみなさい」

「うん、おやすみなさい」

翌朝

朝食を食べるために食堂へ行く。

今日の朝食は

『秋刀魚の塩焼き、野菜サラダ、納豆、豆腐、浅利の味噌汁』だった。

浅利なんてこの世界で食べるのは初めてだな。

「ラムレス」

「何でしょうか?アキト様」

「浅利はこの辺だとどこで捕れるんだ?」

「ん?浅利?あ、今日の味噌汁の具材ですね。『アルカルプ』ですね。あれは沖合で捕れます。」

浅利ではなく『アルカルプ』というのかあれは。

(ねえ?アルカルプに、ついて教えて)

『はい、アルカルプは、貝の一種で、主に岩礁地帯で生息しています。』

(なるほどね。)

「ご馳走さまでした」


朝食を食べ終わったアキトは部屋に戻り着替えを行い、冒険者の店に行く準備をする。

冒険者の店へ行くと

ラムレスが居たので話をする。

「おはよう、ラムレス今日はどうしたの?」

「あ、アキト様。ちょうど今冒険者の店で依頼をしていたのです」

(ラムレスが依頼を?)

「あ、ちょうどいい所に……アキトさん力を貸してください。ラムレスさんから依頼を受けましてこの依頼はアキトさん達の方が適任かと」

「ちょっと見せて欲しい」

詳細の書かれた書類に目を通す。

依頼内容はこうだ。

・村を荒らすゴブリンの討伐 報酬は金貨5枚

・ゴブリンの巣の調査 金貨10枚

・巣の破壊 金貨20枚

・魔獣の肉納品 銀貨1枚

「ふむふむ……これって、普通に僕達が受けても問題は無いけど……多いね」

(ゴブリン討伐に巣の調査及び巣の破壊か)

「受けましょうアキト様」

「やりましょうアキト殿」

「我も賛成」

(よし、やるか)

「これ受けますので受理をお願いします」

「かしこまりました。では、ギルドカードをお願いします」

「はい」

アキトはカードを渡し手続きが完了する。

「では、行ってらっしゃいませ」

「ああ、行ってくるよ」

アキトは、早速目的地へと向かう。

まず、依頼のあった(ラムレスが仲介したけど)村へ向かう。

村へ到着すると村長が出迎えてくれる。

「おお、よく来てくれました。ささ、こちらに」

「どうも、僕はアキトと言います。よろしくお願いします」

「私は、この村の長をしている『ジック=ルベル』といいます。アキト様ですね。ラムレス様からお噂はかねがね」

(ど、どんな噂だろう。き、気になる)

『はい、貴方様の噂は現在『救世主』『神の御使い』と評判です』

(な、なんじゃそりゃ~!?)

「まあまあ、とりあえずはお座りください」

「はい、失礼します」

「それで、今回の件なのですが……最近この辺りでゴブリンが出るようになりまして……」

「この辺りは元々はゴブリンは出ない地域なのですか?」

「はい。本来なら出るはずが無いのですが……」

「何か原因があると?」

「はい。恐らくですが……『アルカルプ』が原因かと……」

「アルカルプですか?(それって今日の朝の味噌汁の具材……)」

「はい、『アルカルプ』は、本来は浅瀬に生息する貝型の魔物でして……それが、何故かこの辺りで大量に発生しているのです。そして、その『アルカルプ』を餌にする魚や海草類も大量発生しており……漁をしてもすぐに食べられてしまい……」

「なるほど……だから、ゴブリンが……(増えるにはおかしくないか?魚や海藻類が増えるのはあるとしても)」

「はい、そうなんです」

「わかりました。では今回は、その調査も兼ねてきてますので……では、ゴブリンと近辺調査、それにアルカルプのこの場所での異常繁殖も調べますね(焼き貝食いたい)」

「はい!よろしくお願いします!」

こうしてアキトは、村周辺を調査するのであった。

アキトは、村の周辺を調べていた。

「うーん、特に異常なしかな~」

(やっぱり、自然的に増えただけかな?)

アキトは、考えながら歩いていると

「グギャ(おや?)」

ゴブリンが現れた。戦闘態勢を取ろうとしたらゴブリンが僕の手を掴んで

『来てくれ!来てくれ!頼む助けてくれ』と言い出した。

あ、最近『魔物言語』を取得したんだった。

『魔物言語』は、その名の通り魔物の言語を理解できるスキルだ。

(これは、意思疎通できるかな?)

『おい、お前なんなんだ?』

『俺は、ラルゴという。ゴブリンの戦士だ』

『ほう、ゴブリンの戦士か……なぜ、ここにいるんだ?』

『実は、アルカルプを知ってるだろ?貝型の魔物の』

グラウディウスたちは魔物言語を取得してないので僕の会話に驚いている。

(アキト様が魔物言語を!?)

依頼内容は調査、巣の破壊であるがこれはどうやら一大事の可能性もあるな。

『ああ、知ってるが……』

『そいつらが最近この辺りで増えてるんだよ。』

『え?そうなの?でも、なんでそんな事が分かるんだ?』

『それは、俺達の村の近くにもアルカルプがいるんだ。だが、奴らは普段は浅瀬にいる筈なのに、何故かこんな場所にまで移動してきているんだ』

『なるほどね。わかった。じゃあ一度戻ろう。皆にも話さないといけないからね』

『おう!』

アキトは、一旦村へと戻る。

村に戻ると村長とラムレスが待っていた。

「あ、アキト様。おかえりなさい」

「あれ?ラムレスはどうして?」

「あ、なんでゴブリンが」

「あ、大丈夫ですよ僕が先程この者と話をしていてどうやらゴブリンが巣を作っていたのはアルカルプの異常繁殖が原因らしいということがわかりました」

『そうだろう?』

『そうだぜ』

いきなり僕が魔物言語を話して目の前のゴブリンと話をしている光景に2人は目を疑う。

「「え!?魔物言語」」

「あ、ごめん。僕、最近魔物言語取得したから」

「「な、何だって~!?」」

村長とラムレスは同じ反応をする。

「うん、だから今はこのゴブリンとも普通に話ができてるよ」

「す、すごいですね」

「でしょ?」

「はい、びっくりしました」

「とりあえず、このゴブリンの話によるとアルカルプの異常繁殖が原因らしくて、その原因を除去してゴブリン達には別の住みやすい場所を提供するというのはどうだろうか?これならば無益な殺生も無くことが運ぶと思いますが」

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