第36話

「さあ、行くぞ。」

「はい」

宿屋を出て冒険者の店に向かう。

道中、グラウディウスは僕を抱きしめたりしてくるので困った。

なんとか振りほどいて、目的地に着いた。

「着いたね。」

「着きましたね。」

中に入ると、人が沢山居た。

「さて、依頼の確認でもするか。」

「そうですね。」

奥の依頼掲示板を確認しに行く。

「どれにする?」

「この依頼なんてどうでしょうか?」

グラウディウスは一枚の依頼書を見せてきた。

『緊急依頼 ワイバーン討伐 報酬1匹につき金貨50枚 期限無し 参加条件 Bランク以上』

「これって結構難しいんじゃない?」

「そうかもしれませんけど、アキト様なら大丈夫でしょう。」

「そうかな?」

「そうです。ワイバーンの肉は美味しいのでアキト様には是非とも堪能してもらいたい」

「じゃあこれにしようか」

受付に行き依頼を受ける。

「あら、お兄さん達Bランク以上の方ですか?」

「ええ、一応そうなりますね。」

冒険者カードを提出する。

「確かに」

カードを返してもらう。

「じゃあ、頑張ってくださいね。」

「ありがとうございます。」

ギルドから出てワイバーンが目撃された場所へ向かう。

「ここか」

森の奥深くにある山だった。

「じゃあ、早速行きましょうか。」

「そうだね。」

森の中に入る。

しばらく歩くと、ワイバーンが現れた。

「グルルル……」

「アキト様、ここは俺に任せて下さい。」

「わかった」

「では、行って参ります!」

グラウディウスは駆け出すと、一瞬にしてワイバーンに接近し剣を振るう。

「グギャァア!!」

「チィ」

(硬い)

グラウディウスの攻撃が弾かれる。

「グルル」

(邪魔するな貴様)

「アキト様には指一本触れさせない!」

「グルゥ」

(小賢しい)グラウディウスに爪を振り下ろす。

「はぁぁぁぁぁ!!!」

グラウディウスは避けずにそのまま受ける。

「ぐはぁ」

「グラウディウス!?」

「問題ありません。」

「ガルゥ」

(その程度か?)

「ここは僕が」

『剣格士』『蓮刃剣』をセット。

「ガルゥア!

(人間に何が出来る)

「どうか……な!」

ザシュッ

「ガゥ」

「まだまだぁあ!! はぁぁあ!!!」

「ガフゥ」

ズシャッザシュッザクゥ

「ガハッ」

「これで終わりにする」

「まてまてまて!?」

人語を喋り出すワイバーン。

「なんだ?まだやるのか?」

「当たり前だ。俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ」

「ほう、なぜだ?」

「それは、俺が竜だからだ」

「はぁ、何を言っている。お前はただのワイバーンだろう」

「違う。俺は魔界七将の1人『アキゾメトル』だ。訳あってワイバーンに扮しているのだ」

『アキゾメトル』と名乗るワイバーンは元の姿に戻る。

「は、アキゾメトルだったのか」

「ん?よく見たらグラウディウスでは無いか。」

どうやらこの人は魔族で魔界七将の1人らしいな。

「にしても人間よお前何もん?あんなに強いとは思っていなかった」

「やはりアキゾメトルもそう思ったか!この方こそ我が現在の主!アキト様その人である」

(うお!?グラウディウスそういう紹介はやめてくれ)

「ほぅ、お前があの噂に名高いアキト殿か」

「そうだが、僕は男だぞ」

「そんなことは知っている」

「そうか……そのアキゾメトルさんは僕を性的に襲ったりとか考えたりは?」

「無いな。我は女が好きだからな」

ほっとする。

「よかった」

「(ん?こやつグラウディウスと何かあるのか?にしてもこのふつふつとくる魔力は)」

「あっこの魔力のこと?この世界に来た時かららしいからなんとも言えないよ」

「!?……え!?」

「あ、言うの忘れてたアキト様は『伝心』持ちだぞ」

「な、なにぃ!?あの高貴な魔導師しか使えないとされる『伝心』を!?」

「あ、はい」

「アキト様凄いでしょ」

「あ、ああ、まさか本当に実在していたとはな。しかも、それを使えるとなると……」

「あ、なんかまずかったですか?」

「いや?そんなことは無い……(魔王からこっちに寝返るチャンスでは……)」

僕はアキゾメトルさんに近づいて耳許で

「魔王からこっちに寝返るの?」

「どぅわ!?」

「あ、ごめんなさい。つい」

「い、いや大丈夫だ。さ、流石は『伝心』持ち」

(嬉しくない!)

アキゾメトルさんは僕の肩に手を乗せると

「ど、どうだアキト殿……我は?」

「どうと言われてもね……うーん……メリットがあれば」

「アキト様こやつのメリットは『魔術』ですね。ですがアキト様も『魔格士』をつけている時はかなり強い『魔術』の力を得られる訳ですよね?」

「まて!?『魔格士』とはなんだ?聞いたことないぞ」

「あ、魔格士はね覚えてる全ての魔術スキルを使うことと覚えてる全ての体術スキルを使える『スキル』なんだ」

「ん?スキルにそんなスキルは無いはずだが」

これは、僕だけの能力であることをアキゾメトルさんに伝えるとものすごく驚かれた。

「おい!グラウディウス!!このお方魔王なんかより凄いぞ!我!今日からアキト殿に付いてく!」

「アキゾメトル殿?これはアキト様に確認しないと」

「いいよ」

「はぁやはりそう……え!?いいのですか?」

「うん!なんか面白そうだからアキゾメトルさんって」

こうしてアキゾメトルさんは僕の仲間に入りました。

彼の部下たちも僕の側に来てくれることになりました。


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