私のおもちゃ

10話 アソビ

 天音は、やっぱり面白い。

 少女漫画を読ませた時はそれなりに苛立っていたし恥ずかしがっていた。それに、いつも無表情の彼女が表情を出すところは見ていて飽きない。


「スミスさんってイジメの事、どう思う?」

「もちろん、どんな理由があろうと許される行為では無いと思いマス」


 天音は何を考えているか分からないような目で尋ねてくる。天音はそれで救われる人もいるというけれど、私はイジメを撲滅するのが一番だと思う。


「じゃあ、なんでイジメは起こると思う?」

「ソウデスネ〜、仲いい友達でイジられキャラが居ますが、それの延長線上の話では無いですか?」


 天音は何故こんな質問をしてくるのでしょうか?

 こんな事を思うのは変なのかもしれないが、イジメは自然と出来上がるものだと思う。事実、学校でのイジメは消えていないから。



「私は、上と下があるのがいけないんだと思うよ。スミスさん、生きてきた中でカースト下位になったことある?

 ないでしょ。結局、スミスさん含め正義感の強い奴らがイジメられている人間を助けようって思うのは、その人が弱い人間だと決めつけてるからだと思うよ」

「そんな事はアリマセン!」


 天音は、まるでさっきの仕返しをするかのように私に現実を押し付けてくる。


 私は心の中で分かっていたのかもしれない。だから天音に本当の事を言われてムカッときたのだ。


「まぁ、頭の片隅にでも考え方があるって事、置いといてよ」

「天音はイジワルです」


 私はせめてもの抵抗に天音に毒を吐いてみる。だけれど、彼女は無表情のままで面白くない。


「ご、ごめん……」


 私が背を向けると小さな謝罪の声が飛んでくる。


 前言撤回、彼女は優しくて面白い。まさか彼女から謝罪の声が飛んでくるとは思っていなかった。また間接的に謝ってくるものだと思った。


「ワカリマシタ、仲直りのハグをしましょう!」

「いや、いい」


 彼女は、無表情のまま冷めた声でそう言ってさっきの私のように背を向けた。天音は嫌悪感を纏っていて再び殻に閉じこもってしまった。


「じゃあ命令にシマス」

「言うと思った」


 私は手を広げて天音からくるように促したが顔を向けるだけで一向に天音からハグする気配はなかった。


「じゃあ、コウシマス!」

「ッ!!!」


 まさか私からハグするなんて思わなかっただろう、そういう命令だから。


 天音は、一瞬何が起こったのか分からない、という風で首を後ろ向きにしたままだったが少しして前を向いて俯いていた。


「これで仲直りデス」


 そう呟いて彼女から離れた。


 嫌だったのか、泣いているのかは分からないけれど天音は俯いたままだった。だから謝るつもりで顔を覗き込んだ。でも、そこには顔を真っ赤にして恥ずかしがっている天音がいた。


「そういう素直な顔は好きです」


 天音はその後も下を向いて話してくれなかったけれど、良い収穫だったと思う。 


 結局、家に帰ったのは夕方の五時だった。


 私はベッドに寝転がりながら溜まっていた通知を処理してゆく。


「エッ!?」


 毎日連絡をしてくる兄からのメッセージに、『誰の家に行っていたんだ』という文があったのだ。


 兄は何故ここまで心配性なのだろうか?

 部屋に盗聴器でも付けられているんではないかと思ってしまう。


 天音の家に行っていたことを伝えると彼氏ではないのか確認する旨が送られてくる。


「ココマデクルト病気なのか疑いたくなります」


 兄は一緒に過ごしていた時もそうだった。自分の事は後回しにして私の面倒を見ていた。それなのに成績優秀、運動神経抜群で兄には一度も追いつけなかった。


 本当に凄い兄だと思う。今では有名会社の偉いさんだとか。でも、カノジョのカの字もないから少し心配だ。まぁ、彼氏を作ろうとしたことがない私も人のことは言えないのだが。


「ん?」


 ベッドに投げ出したスマホが着信音を鳴らす。相手はもちろん兄だ。


「ハイ、」

『彼氏は、彼氏はできてないんだよな!?』


 電話までしてくるか?、と思う。


 因みに私の家族間の会話は母の影響あってか日本語で行われている。今の世の中、2か国語喋れたほうがいいとかナントカで父も賛成のようだった。


『ちゃんと食事は取ってるんだろうな?

 それと、九時以降のお菓子は駄目だからな』

「ワカッテマス。そういうお兄様は食生活然り、彼女はいるんですか?」

『いや、全くだ。というか彼女など必要ない』


 彼女ができれば少しは心配性も治ると思うのだ。それに、将来の事も考えて彼女、または奥さんは居たほうが良いと思う。なんたってお兄様は家事全般全て不得意で体を壊しやすい方だからだ。


「お兄様、お母様やお父様は元気ですか?」

『この前帰った時は二人共会社の事で忙しいみたいだったけど、夜更かしして俺に弁当作ってくれるくらいには元気だったさ』


 兄の言葉を聞いて少しホッとする。あの二人も兄と同じ完璧超人だが一つの会社を回す経営者でもある。だから過労死、なんてことも有り得なくは無いのだ。


『ちょっと待て、今から風呂もご飯も、勉強もあるんだよな?

 マズイな、9時にはねさせないとだし……』

「ちょ、ちょっと!」


 何かモゴモゴ言いながら兄は電話を切ってしまった。


 しかし、自分から電話してきたくせしてすぐに電話を切るなんて酷いでは無いだろうか。


 そんな嫌悪感を抱きながらも久しぶりに家族と話したからか寂しさが紛れたような気がした。



――――――――――――――――――――――――――


どうもこんにちは、イセです。

今回も読んでいただきありがとうございました。


なんか物語いぜんに人に伝わる書き方がムズすぎます。

ファンがつく人って3、4年書いてる人がほとんどなので凄いですよね…


さて、次話は『バイト』です。

是非明日も立ち寄っていただけると嬉しい限りです。

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