私は仲良くなりたい
4話 天音は興味深い
その日、私は告白を断るために教室へ向かった。
少しココロが痛みマス。
そう思いながらドアを開けると天音が席に座って外を眺めていた。
キレイだ。
風になびく黒髪を見ていると落ち着く。
「いきなり呼び出してごめんね、スミスさん」
「大丈夫デス」
やっぱりキライだ。私に気づく前までは本当の彼女が垣間見えたようなそんな感じがした。でも今はいつもの天音に戻ってしまった喪失感がある。
「ソレで、話ってナンデスカ?」
「まぁその、あんまり十文字さんのテリトリーを荒らすのは辞めたほうがいいと思うよ?」
いやでも天音が千尋と喋っているところなんて見たことがありません。
「私、
「この前、彼女達のオモチャに手出したでしょ?」
「でも、それはあの方がイヤガッテいたからですし」
確かにこの前私は千尋にパンを買ってきてほしいと頼まれていた方を助けた。けれど、あれは私に非があるとは思えない。だって彼女は凄く嫌な顔をしていたから。
「じゃあさ、その子は助かったとしても次の日には違う子がオモチャにされるかもしれないとは考えなかったの?」
「その時は私がタスケマス」
「まあ、一応忠告はしたから」
そういうと天音はそそくさと教室を出ていってしまった。
私はあの考えが嫌いなのかもしれない、凄く嫌悪感を抱いてしまった。確かに天音の考え方は合理的で正しい選択といえるかもしれない、けれど皆のために一人が犠牲になるのは違うと思う。
「天音は機械のヨウデス」
窓から入ってくる秋風は冷たくて彼女のようだと思ってしまう。
「あれ?アリス何してるの?早く練習しよ!」
「は、はい、今イキマス」
バレー部の友人に声をかけられて我に返り、私は大きな喪失感を引きずりながら体育館に向かった。
――――体育館
「何か今日のアリス集中できてないけどどうしたの?」
「ご、ゴメンナサイ」
眼前には私を心配して声をかけてくれる友人がいた。
練習に私情を挟んじゃだめだ!
私は頬を叩いて頭から天音を追い出す。どうやら相当精神に堪えてしまっているみたいだ。
「もうダイジョウブです!」
それから時折浮かんでくる、あの冷たい顔を振り払いながら練習を終えた。
「アリス、やっぱり今日なんかあった?」
「いえ、何もナイデス……」
多分今、自分の顔を見たらきっと最悪なんだろうと私でも分かる。なんで、私はあんな事を引きずっているんだろう。彼女とはそんなに接点も無いはずだ。
「……ス、…ミス、スミス!?」
「は、ハイ!」
「ほら、早く着替えて帰るよ」
気づくと、再び心配そうに私の顔を覗き込んでいる友人がいた。ダメダメ!やっぱり私が引きずることなんて無いんだ。早く忘れよう。
結局、学校を出たのは下校時刻ギリギリだった。
「ふぅ〜ギリだったね」
「いや、危なかったデス」
それから彼女は駅の方に向かうとのことで別れた。
「彼女には悪いことをシマシタネ、今度埋め合わせをしましょう」
そう言ってLINEのアイコンをタップする。私は、兄や、最近友達になった子からの通知をスルーして、さっき別れた友人に謝罪文と埋め合わせをする旨を伝えた。
これでヨシッと。
私が歩きスマホをしていると、視界の端にコンビニから出てくる天音が目に入った。
あんな大荷物、何を買ったのでしょうか?
彼女が肩にかけているエコバックはパンパンに膨れ上がっていたので、気になって尾行することにした。
「別にやましい事なんてないので尾行する必要は無い、ハズナンデスガ…」
目を離していなかったはずなのに彼女が門を曲がると姿が見えなくなってしまった。
まさか、バレてたとか……!
ニャ~
鳴き声の方に目をやると天音が猫にエサをあげているところだった。普段あまり笑わない彼女が微笑んでいる。
キレイだ。
「ごめん、もう無い。また明日来るから我慢して」
そう言って立ち上がった天音は再び歩き出した。
それから、横断歩道を渡っているお婆さんの荷物持ちをしていたり迷子と一緒に親を探してあげたりと様々な善行をしてマンションのエレベーターに乗り込んでいった。
「天音は優しい子デスネ」
天音のことだ、あれは偽善なのかもしれない。でも、あの笑顔は本物だということだけは信じてもいいじゃないだろうか?
彼女が7階に着いたのを確認すると同時にもう片方のエレベーターに乗り込んで数字が上がってゆくのを眺める。
7階に着いて天音がいないことを確認して自宅に向かうとドアノブにコンビニ袋がかかっていた。
中を覗くと、一通の手紙と共に沢山のスイーツが入っていた。
手紙には天音が私の机に落書きしたこと、教科書を破った事を謝罪する旨が書かれていた。
「天音がそんな事をするとは思えませんね、やっぱり千尋が関係してるんじゃ…」
天音がそんな事をするなんて、と驚きもあるが、今日で彼女の知らない一面がしれたと思うと得した気分になれる。
下校時に曇っていた空はいつの間にか雲一つない快晴に変わっていて、暖かな西日は私を照らしていた。
―――後書きに興味のない方は飛ばしてください―――
どうも、こんばんは?イセです。
今回はスミスさん視点で書かせていただきました。正直、心情の所はデスマス口調にしようか迷っています……もし途中から変わっていても『あぁ、変えたんだー』位の気持ちで見ていただけると幸いでございます。
次は『先生と生徒の関係』という題名で書いています。是非、明日も立ち寄っていただけると嬉しい限りです。
もし良かったら、(お願いします)ブックマークや♡、★なんかもお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます