2話 陽キャの極み
スミスさんが転校してきて、はや数日。
彼女は瞬く間にスクールカースト頂点に君臨し、クラスの支配者と化していた。
「やっぱり、凄い人だね」
「とてもじゃないけど近づけない……」
彼女の周りには、予想通り陽キャバリケードが設置されている。また、他のクラスからもスミスさんを一目見ようと沢山の人々が彼女を中心に取り囲んでいた。
彼女の人を引き付けるカリスマ性には驚いたけれど、そのせいで私の席が奪われている現状も知ってほしいものだ。
「ねぇ、知ってる?スミスさん、毎日何人もの人達から告白されてるんだって」
「まぁあのスペックで告白されてないのは無理があるよ」
桜がどこから見つけてきたか分からない噂を口にする。
まぁ、噂好きの桜が言うのだからスミスさんの男子人気は凄まじいのだろう。それに、彼女の下駄箱には昨日だけで数十もの手紙が入っていた。
先に入れている人がいるのだから二人目、三人目のメンタルは鋼で出来ていそうだ。
「あんまり大きな声では言えないけど、十文字さん達はあんまり良く思ってないみたい」
「へー、」
桜の視線を追って十文字さんの方へ目をやるとスミスさんを恨めしそうに睨んでいた。
たった数日で新参者にカーストトップを奪われたのだから当然、か。でも、それがスミスさんだけに向けられるものなら良いけれど、二次被害が生まれる可能性も否定できない。
「あっ、先生来たよ」
「分かった、また後でね」
それからお絵描きタイムこと、授業をこなすと、あっという間に放課後になった。授業中に絵を描いていた通り、私は美術部なので、火曜日と水曜日の放課後に絵を描いている。
「それじゃあ始めるね」
「はい、おねがい、シマス」
流石に毎日クラスメイトを描いていると飽きてくる。もう5、6周は描いたであろう。だから今日は、スミスさんを誘って描くことにした。
こうしてみると、やはり超絶美人だ。
目はパッチリとしていて鼻は適度に高い、オマケに金髪ときた、こんなのアニメか少女漫画のヒロインにしか見えない。
「スミスさん、私の誘いに乗っても良かったの?」
「どういうコトですか?」
「いや、数十人から告白に呼ばれてたんじゃないのかなって」
まさか八方美人の彼女が告白をドタキャンなんてことはしないだろう。
私が質問をすると、スミスさんは少し面倒そうな顔をして答えてくれる。
「私、今はまだそういうことに興味がない、デス」
そういうところもヒロインって感じがする。大体、それから運命的な出会いがあって恋をするっていうのがテンプレじゃないだろうか。
「スミスさん、そんなに力が入っていたらこっちとしても描きづらいから自然な格好でいて」
「ワカリマシタ!でも、天音は凄いデスネ、そんなことまで分かってしまうナンテ」
『天音』、彼女とは転校初日のあの一件から事務的な会話しかしていないのにもう呼び捨てなんて凄まじい陽キャ力だ。でも、一番凄いのは呼び捨てで呼ばれても何の嫌悪感も感じない、むしろ心地良いと感じてしまう事だ。
口調や格好は派手なのに桜と話しているような安心感を感じる。
「………」
私が集中するために黙ると、スミスさんは静寂が苦手なのか鼻歌を歌い出した。
心地良い音色だな、とおもう。
まるで母の子守唄のような懐かしさを感じる、まぁ、私は子守唄など聞いたことが無いのだが…
「そういえばスミスさんはなんで日本に来たの?」
「母方のオバア様が亡くなって日本に来ました。それで、本来なら帰る予定だったのデスガ、ニホンの文化にドハマリしてしまいマシタ」
スミスさんは一瞬寂しそうな顔をしたがすぐに元の笑顔に戻った。
スミスさんにも色々あるんだな、と思う。
いやいや、気になるところはそこではないだろう、ドハマリしたくらいで日本に住める財力だ!
まぁたしかに右手に付けているブレスレットもイアリングも高そうだから納得っちゃ納得なんだけど……
それから、私は再び集中タイムに入ってスミスさんを完成させた。
「はい、これあげるよ」
「イインデスカ……いや、でも天音の作品ダシ」
「いつも描いてる人にあげてるし、どうせ家に持って帰っても置く場所ないし」
そういうとキラキラの笑顔で受け取ってくれた。
今回のは初めて色を塗ったものだから上手くできたか分からない。でも私が絵を描いている理由はきっとこの顔が見たいからなんだろう。
「スミスさん、転校初日の日、私に言った事の意味ってなに?」
美術室を出て下駄箱まで歩く間に今まで気になっていた事を聞いてみる。
「今もですけどこの前の朝会った時と違うなッテ、直感ナンデスガ私はその顔がキライです」
どうやらスミスさんは薄々、私が学校で猫を被っていることに気づいているようだ。皆少しくらい学校で自分を偽わっているんだろう、でも私のは全てだ。
「キャッ」
「うわ、今日も一段と凄いね」
スミスさんが下駄箱を開けると溢れるほどの手紙が入っていた。これまでは同学年だけだったようだけど、遂に全学年にまでも彼女の魅力が伝わってしまったらしい。
私のはもちろん靴以外入っていないはずだ、なんせこれまで告白なんて一度もないしこんな性格だから当ぜっ――――。
靴箱を開いて唖然とする。こんな私を好きなやつとかいるんだろうか?
そう、手紙が入っていたのだ。
―――後書きに興味のない方は飛ばしてください―――
どうもこんにちは、イセです。
この度は2話を読んでいただきありがとうございます。
さて、次回の話は『イジメ』です。是非、明日も立ち寄っていただけると幸いでございます。
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