第2話 私からあなたへ

乱反射する小さな小川を眺めていた。時々、鮮やかな緑の葉がゆるやかに流れていった。


私も、ただ流れていく葉っぱでしかないのかもしれない。


岩にぶつかってはあっちへ行き、よどみにはまってはくるくる回る。私には何もコントロールできない。


普通に話していたと思うと、急に彼の目の奥に灰色の粉雲が立ち込めて、彼との間を遮る。簡単に手で散らせそうなものなのに、じっとりとまとわりついて、余計に色濃くなっていく。


あぁ、また、私はここに取り残されていく。一人、溺れているのでも、泳いでいるのでもないこの美しい小川に、放り出される。


「好きだよ」


振り返ると、彼は今にも泣きだしそうな顔で目を細めていた。こんなにきらめく木漏れ日の下で、彼は静かにとても静かに灰の雨を降らせる。私には、この雨を光で照らすことはできない。それでもまた、届いているかもしれない光を探して、灰の粉雨を払い続ける。

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浮いた言葉 山野 樹 @kokoro7272

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