第53話 続下位ダンジョン・5


・下位ダンジョン19階層


 危険な物を入手してしまい逃げる様に18階層を後にして19階層へと移動した。


 先程よりも林が増えている様に見える、モンスターも変化しているのかな? 魔導眼の遠見で確認・・・ああっ、装備が増えている。


 ゴブリン・ラットマン・コボルトが武器持ちになっている、防具はかわらず腰布一枚だけれど、Eランク冒険者には脅威度が上がるなこれは、武器の内容は錆びた剣・錆びた槍・錆びた斧・獣の短剣・棍棒、飛び道具は無し。


 なるほどだからここの冒険者パーティーは少ないのか、しかもセーフエリアは無いみたいだ。


 何処かに気になるところは無いかなとセンサーを張り巡らせて進む事20階層への降り口前、何の成果も得られなかった。


・下位ダンジョン20階層


 何も得られなかった19階層を後にして降り立った最終20階層、下位ダンジョンの最奥は20階層までだそうだ、つまり最大20階層のダンジョンを下位ダンジョンと呼んでいる。


 実際はこのダンジョンにも本来の呼び名があるが、ダンジョンの何処かに名を記している所があるらしく、発見した場合は冒険者ギルドに報告して案内する必要がある。


 報奨金と評価が上がるが場所によっては面倒なので見なかった事にされる事も希にあると聞いた、真偽に関しては不明だ何せ冒険者酔っ払い同士の噂話なのでね。


 この下位ダンジョンの名は『ライアー』ダンジョンと言うらしい。


 20階層でのマップ生成で奇妙な事に気付く、マップ中央に巨大な木がある、初期の前世で記憶にある「大きな気になる木」に似ている。


 鑑定してみても「今はその時では無い」としか表示されない。


 ボクも実際この世界のダンジョンについてはド素人なので、下位ダンジョンだからってどんな秘密が隠れているかなんて分かるはずも無い、世界は不思議で溢れている位の気持ちでいる方が人生楽しめる。


 ・・・そんな気持ちに浸っていると索敵に突然の反応が現れる!


 おかしい? 索敵も感知も隠密に対しても看破を発動させていたはず、突然大きな木の枝全体に敵性反応が出た。


================


名前 無し 

Lv 20

種族 ダンジョンスパイダー

性別 無し


筋力 F

体力 F

器用 F

速力 F

知力 F

魔力 F

幸運 F


スキル

〈種族スキル〉

・噛み付き(毒) ・粘糸 ・麻痺毒(微) ・集団ポップ


================


 拳大の蜘蛛がわらわらと木の枝から襲い掛かってくる、そして突然の出現にも納得した、集団ポップが原因だった様だ。


 流石に存在しないモノは索敵は出来ない、スキルの頼り気味だったかな、まぁ焦らずに徐々に鍛えていこう。


 今はこの大量のダンジョンスパイダーを何とかしないと、うわ地面を埋め尽くすような蜘蛛の群れがちょっと引くなぁ。


 しっかしどう処理しようか、この数なら広範囲の攻撃系になるだろう、火炎系は全て燃やしてしまいそうだし、対象のみ攻撃するタイプだと情報処理が半端ではないから脳と精神に掛る負担も無視出来ない。


 ・・・被害が多分少なくて目立たない攻撃、凍らせるか!


 ぶっつけ本番おニューの凍結魔法、エターナル系は危険臭がするから気分的にランクが低そうな呪文名でいこう。


 この間思考0.5秒! 迫り来るダンジョンスパイダーの群れへ両手を向けてボクはこれから発動させる魔法のイメージを固める。


 長々と詠唱を唱えるのも良いが、見物人がいないので省略、魔法発動の呪文のみ唱える。


『ダイヤモンド・ミスト!』


 魔法の発動と共に瞬間、周囲の空間が静寂に包まれ視界を覆うほどの霧が世界を白く染まる、静寂は次第にキンキンと響く音と共に周囲を飲み込み、そしてキーン鳴り響く耳鳴りへと変わっていった。


 周囲を覆った霧が次第に薄くなるとダンジョンの光源を反射させキラキラと輝くダイヤモンドの様に世界を彩る。


 ボクの眼前に広がる白い世界は幻想的な一枚絵の様だ、だがここで終わりでは無い、ボクは右手を掲げ指を擦り合わせ弾く!


『ブレイク!』


 パチンッ! と鳴り響くフィンガースナップと共に発したボクの言葉と同時に白銀の世界が砕け霧散する。


 地面を覆っていたダンジョンスパイダーの群れも草原の草も大きな気になる木も全て粉々に砕け散り、後には剥き出しの地面と大量のドロップ品と銀色の宝箱が残されているだけだった。


 ・・・やべぇ、やり過ぎた! あの大木ってリポップするのかな? ドロップ品を回収しながら大木があった場所へと向かう。


 ドロップ品は魔石と麻痺毒(瓶入り)とスパイダーシルクに各種薬草・毒草だった。


 草原の草もドロップ品を落とすとは知らなかった、今回は量が量なので魔法でドロップ品を集め収納に押し込んでいった。


 大木の跡地には銀ランクの宝箱とサッカーボール大の魔石に大量の木材がドロップ品として落ちていた。


 ・・・跡地を鑑定した結果、『スパイダーラージツリー』という植物系モンスターだった。


 スパイダーラージツリー自体には戦闘力が備わってはいないが

高い偽装能力と、ほぼ無限に近いダンジョンスパイダーを召喚出来る種族スキルを持っている。


 一度に召喚出来る数の制限はあるがダンジョンスパイダー自体も集団ポップという、出現時に自身を合わせて10匹の群れでポップする種族スキルを有するため。


 そのスキル同士が合わさると、とんでもない数の膨れ上がる、初めはボクもダンジョンスパイダー単体でここまで一度のポップで増えたと勘違いした。


 だが真相は一度はボクの鑑定をその高い偽装スキルで誤魔化したが、次は看破されてしまうと感じたスパイダーラージツリーが、脅威に感じたボクをここで始末しようとダンジョンスパイダーを上限一杯まで召喚したようだ。


 しかしあんな意味ありげな「今はその時では無い」とか言われたら興味が湧いて色々試してから再度鑑定しちゃうだろう、もっと別の答え方にすれば良かったのに。


 今回は少しやり過ぎたと思ったが、結果オーライだったよ、それに根まで壊す凍結系の魔法を使用するとダンジョンの植物からもドロップ品が落ちるとは思わなかった。


 方法は誰にでも出来る事では無いし、乱用するとダンジョン内で異変も起こりそうだからたまにしか使用出来ない方法だけれども裏技的でちょっと嬉しい。


 ドロップ品の木材は魔力を含む素材でマジックアイテムの材料として重宝されるし、魔石もデカいので使い道は様々ある。


 宝箱も銀ランクで美味しいモンスターだ・・・ただリポップには30日掛ると鑑定に出ていた。


 まぁこんなモノだろう、楽な儲け話はそう簡単には無い。


 ・・・さてそんな事は置いといて、宝箱の確認だ!


 おおっと今回は施錠あり、罠ありしかも爆弾罠・・・急に殺意高くない? まぁチョチョイと解錠して罠も取り外してしまうけれどさ、この爆弾、再利用出来るかな? 収納に入れておこう。


 それじゃあ、中身とごたいめ~ん。


 ・・・? 種が一個だけ。


 野球ボール位の種が1個だけ入っていた、こんな立派な銀の宝箱に一個だけ! 宝箱を引っ繰り返しても何も出てこない! 調べても二重底でも無い! 爆弾まで仕掛けておいてこれだけ?


 しかもこの銀の宝箱って初回のみ出現するタイプで、もうこのダンジョンのスパイダーラージツリーからは宝箱は出ない、何故なら暇な落ち人集団が検証して後世に記録を残しているからほぼ間違いない、希にそれを覆そうと躍起になる現地人はいるが上手くはいっていないそうだ。


 ボクもそれ程気にしてはいなかったし、下位ダンジョンでお目に掛る事なんて無いと思っていた、実は宝箱には必ずナンバーが刻まれている、法則性は今の所分かってはいないが、初回限定のみのナンバーは全て統一されておりその番号『№000』を刻まれた宝箱は、初回のみで中身も非常に希少だが全て一度きりで同じ物は二度と出ない。


 宝箱は持ち帰りが可能なので、『№000』の宝箱は希少で蒐集家には垂涎すいぜんの品だ、ただし偽物も出回るし面倒事にも巻き込まれる、宝箱である以上当然中身があるので内容を聞かれる、売っても良い物なら話しても良いが、そうではない物なら揉める事もある。


 希少な品には色々と面倒な者達がたかって来る、特に面倒なのが貴族に商人と裏家業の連中だと書物の隅に憎しみを込めて書かれていた。


 回想は終わり、この種が何物なのか鑑定してみよう。


 ・・・? ・・・? ・・・『命の樹の種』と出た、世界樹の亜種らしい・・・またか!


 どう扱おうか考えている最中に売る事を考えると『私を売るなんてトンデモナイ!』と直接脳内に苦情を念話して来る!


 では誰かに譲渡するの『私を譲渡するなんてトンデモナイ!』と思考の途中から念話で抗議して来る!


 捨『私を捨てるなんてトンデモナイ!』と泣きそうな念話で泣き付かれた。


 扱いについては少し保留にしておこうと思う。


 ひとまずはダンジョンボスを片付けてから考えよう。






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