第52話 続下位ダンジョン・4


・下位ダンジョン16階層


 15階層から階段を降りるとそこは明るい草原だった。


 フィールド型の階層か、16階層からは少し難易度が上がるのか。


 見渡す限りの平地に明るい空、太陽や雲は無いが気持ち悪いぐらい澄み切った青空が続いている。


 何処までの高さがあるのかな・・・好奇心から投げ槍を一本上空に投げ放つと、約100メートル程で天井に当たって弾かれた、何らかの幻影魔法と防護魔法が施されているのだろう、槍の先が潰れて柄が折れた。


 さて困った事になった、ボクの隣でうずうずしたいるシャイニスが鼻先をぐりぐりしながらお強請ねだりしてくる。


「ぴいいいい!」


 ちょと走らせろ! と騒がしいので冒険者を避けるように進路を取りながら走る事となった、もちろん偽装して認識阻害最大レベルでこちらの正体を誤魔化しながら爆走する。


 どうせ後日には正体不明のモンスターが出たと報告が行くだろう、知らんけど。


 草原を走る、走るボク達を遠目で確認する冒険者達、草原のモンスターも今まで出て来た4足歩行のものばかり、レベルが上がっただけで脅威度は低い、邪魔するものは容赦なく吹き飛ばす。


 そのまま特に何もせずに17階層まで走り抜けた。


・下位ダンジョン17階層


 そこそこの速度で走る事が出来たのでシャイニスも気が晴れたらしく、17階層からはボクのペースに合わせてくれるそうだ。


 まぁこの階層も特に変わった事は無いが群れで行動するモンスターがほとんどになる、今も群れで追いかけられている斥候職の冒険者がキルポイントまで誘導している。


 上手くいく事をお祈りしつつ、彼とは別方向を目指す事にする。


 障害物の少ない草原では双方の発見率が高いので索敵スキルの高い者は重宝される、早速反応有り・・・前方にパターン黄色、中立×6・・・更にその後方からパターン赤色、敵対×1、モンスター反応×10・・・モンスタートレインの可能性有り。


 反応からして真っ直ぐ休憩中の6人パーティーに向かっているね、モンスターを押し付けてその後に仲間と襲撃かな・・・ああ更に奥に赤反応の5人がゆっくり移動しているね、接触まで40秒・・・仕方が無い。


 ボクは収納から『魔法弓病毒の牙』を取り出し素早く狙いを付ける、矢にもしっかりと病毒(小)生成で毒矢にしておき、付与魔法で飛距離増加を付与して山なりに続け様に3連射を放った。


 毒矢は中間に位置する6人パーティーの上空を抜けて、彼等にモンスターを押し付けるために速度を上げた襲撃者の両太ももと右肩に立て続けに命中し、襲撃者は盛大に声を上げながら転倒。


 その声と転倒時の音により6人パーティーも異常に気付き戦闘態勢に移行し迫り来るモンスターに対応する。


 転倒した襲撃者は追い着かれたモンスター半数に襲われおそらく死亡、もう半数は6人パーティーに向かうが迎撃準備が出来ていた為、損傷も少なく討伐完了。


 残りも苦戦する事無く討伐、モンスターの処理と襲撃者を調べているようだ。


 ボクの存在にも気が付いているようだが、位置を特定出来ていないようだ、ボクも当然認識出来ないようにしているし、下位ダンジョンを攻略中の冒険者パーティーでは、ボク達の痕跡を完全に辿れるような優秀な人はいないだろうし、襲撃者も失敗した事に気付いたら撤退するだろう・・・撤退するよな?


 引き際を・・・あっ! ダメだこりゃ、いちゃもん付けてるぞ襲撃者達、何故引かない? ??? あっ! ボクの放った矢が原因みたいだ!


 襲撃者の言い分は仲間は擦り付けトレインはしたいないと主張して、そんな仲間を矢で負傷させてモンスターの餌食にした責任を取れと主張している。


 6人パーティーは矢による攻撃などしていない、そいつがモンスターの群れをこちらに擦り付けようとして勝手に転倒して自滅しただけだ、それよりも仲間襲撃者がしでかした責任はお前等が取ってくれるんだろうなと主張する。


 一触即発の状態、5人と5人が睨み合いをしている中で6人パーティーのおそらく斥候職がしきりに周囲全体に索敵と感知のスキルを発動させている。


 第3者を探しているのだろう、つまりボク達だ! でもゴメン君のスキル範囲ではボク達に届いてはいないし、届いていてもその程度の技量ではでは捕える事は出来ないよ。


 じゃあボク達はこれで御暇おいとましますから、後は若い人達でお好きにどうぞ。


 しっかし、何故襲撃とか擦り付けとか碌でもない事をするのかね、ボクには理解出来ないよ・・・と言っていた時期がボクにもあったなぁ、転生の回数を重ねると知らなくて良い事まで知ってしまって、お陰で事前の被害防止に役立ってしまって、新米の頃のボクに「甘い事を言ってんじゃねぇ!」と言ってやりたい。


 DQNは何処に行ってもDQNなんだよ、アレが彼等にとっての日常であり常識なのさ、ただ周囲に知られると大多数に駆逐されてしまう常識だけれどね。


・下位ダンジョン18階層


 面倒な睨み合いを無視して、辿り着いた18階層。


 草原に若干の林が生えたいた、ついでに2足歩行モンスターも追加されて、様々なモンスターの群れが混在する状態だ。


 ・・・新しいモンスターの反応は今の所は無し、まぁ隠れられると直ぐには見つけられないのはしょうがない。


 冒険者パーティーの数も結構な数の反応があるな、一カ所に集まっているのはセーフエリアだろうか? そう言えばセーフエリアって必ず各階層に在る場所では無いらしい。


 知らない事や見落としている情報が後出し出て来るのも醍醐味として楽しもうかな。


 ・・・奥の林からおかしな反応があるな? 調べてみるか?


 隠し部屋かな? ・・・違った隠し穴だった。


 木の根元に落ち葉で埋まった穴があった、落ち葉を収納で取り除くと銅ランクの宝箱を発見した。


 周囲に索敵・感知・魔力視を発動、異状無し・敵影有り:宝箱


 ここで宝箱かい! 魔導眼・・・鑑定完了、ミミックだった。


 狭い空間でミミック、殺意が高いな! ・・・鍵穴目掛けてサンダードラゴンの短槍を突き刺してみた。


 刺したと同時に放電! 宝箱がビクンッと跳ねたのち蓋が半開きになり触手のような物がはみ出している。


 そして淡い発光が確認出来たのでミミックを穴から引きずり出した、外観は銅の様な光沢をしていて鑑定すると銅の箱と出た。


 中身の確認の為に蓋を開けようとすると抵抗があり少し強めの力を掛けると「ブチッ」と千切れる音がしてその後抵抗もなくなった。


 ミミックの中身は、ボク的にはタコと貝が合わさったような中身だった、まぁ貝に要素は蓋の貝柱みたいなところだったけれど、中身を綺麗に取り出して、その際に魔石と乳白色の小粒の玉を2つ回収した・・・オスだったのかな。


 肉は珍味らしく加工すると酒の肴か保存食にもなり、以外と高級食材とされている、更に偽装するランクに高いミミックほど美味しいらしく、銅ランクはそこそこの美味しさだとか。


 外殻の銅の箱は収納系マジックアイテムの素材としても希少で高価買い取り対象。


 肉以外の部位も余す事無く素材になる、制限時間内に全ての解体が終わり、更にドロップ品が現れるこの辺りは解体スキル様々だ。


 今回のドロップ品は、魔石・干しミミック柱・干しミミック・収納ボックス(銅)・宝石箱、中々良い内容だと思う。


 収納ボックス(銅)・宝石箱はレアドロップだ。


 収納ボックス(銅):容量5㎥・時間経過10分の1・積載重量完全無効化・保存内容可視化


 宝石箱:宝石を劣化させずに保管収納する。


 収納ボックス(銅)は相談次第で売りかな、宝石箱は宝石の保管用の箱だった、中にはクリーム色で均等粒の真珠のネックレスが入っていた。


 真珠が劣化しないための保管用の箱のようだ、他の宝石にも効果があるようだからこれも要相談かな。


 あっ、真珠って世界によってはとんでもない高値になったり、殺し合いにまで発展したような記憶があるけれど、この世界での扱いが分からないなあ、魔導眼でわかるかな?


 ・・・やべえ、しまっちゃおう! 封印決定!


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る