第50話 続下位ダンジョン・2


 5人の治療を終えてからこれからどうするのかを一応聞いてみた、5人ともまだ意識が無いので彼女もみんなで話し合ってから良い方法を考えたいそうだ。


 まあこんな時にこそ人の本性が出てくるから理想通りには行かないかもよと、アドバイスはしておいたけれど、その時の彼女の顔が困った様な何とも言えない表情だった。


 まあボクがそんな顔にしているのは分かっちゃいるけど金額をまける気は無い、何せ1人につき金貨1枚(100万ギル)を請求した。


 本来であれば彼女ロルミアさんが切り札のレアスキルを使用しなければ彼女以外の全員が死んでいた。


 ロルミアさんのステータスを覗いてみたが、レアスキルを3つも所持していた、どれも自身と周囲のサポートに優れたレアスキルで彼女とパーティーを組んだ幼馴染達は非常に恵まれている。


 彼等が目覚めるまでの間、暇だったのでロルミアさんに確認をした後、ボク達は隠し部屋の小ボス、ダンジョンラットマン(変異種)に挑む事にした。


 勿論サービスでロルミアさんとお仲間さんの周りには結界のマジックアイテムを設置して安全を確保しておいた。


 後顧の憂いも無くなり隠し部屋へと突入。


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名前 無し 

Lv 13

種族 ダンジョンラットマン(変異種)小ボス

性別 無し


筋力 F

体力 F

器用 F

速力 E

知力 F

魔力 F

幸運 F


スキル

〈種族スキル〉

・噛み付き ・引裂き(爪) ・病毒(中) ・毒腺


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 通常よりも一回り大きい白い毛並みのダンジョンラットマンが、此方を威嚇するように待ち構えて居た、流石はボスクラスだけあり若干強そうに見える、威嚇しながら首の後ろ辺りから何かを散布している、おそらく病毒だろう彼方も戦闘準備は万全のようだ。


 まあ例え万全でもボク達には病毒は通用しないし、元々の地力が違うから・・・瞬殺です、ゴメン!


 解体もドロップ品回収もいつも通り手際よく済ませ収納、珍しい素材だと病毒に毒腺が手に入ったドロップ品と一緒に、変異種だけあり内臓や血液が薬や毒の素材として有用みたいだ。


 更に幸運の尻尾も効果が5%になっていた、流石は小ボスだけのことはある。


 討伐報酬の宝箱も銅ランク、相変わらず施錠も罠も無し、中身は中位状態異常回復ポーション×11本? 金貨11枚入った革袋、ショートボウの魔法弓が1つ入っていた。


 少々数が多いのはどうもこの隠し部屋は討伐されない間の訪問者数分ポーションと金貨の数が累積していくようだ。


 ボク等が2,ロルミアさん達が6人,その他が3人犠牲になっているという事だ。


 ショートボウを鑑定してみると『魔法弓病毒の牙』と出た。


 性能は病毒(小)生成・病毒耐性(小)となっている、矢に病毒を生成して当たった対象を弱らせる効果と、使用者に装備時病毒に対して耐性がつく効果。


 正直微妙だ、冒険者ギルドに買い取って貰おう、ポーションはどうしようかな? 後回しでも良いかな。


 その後隠し部屋を隈無く調査したが何も無し、しけているもうちょっと何かを仕込んで置いて欲しかった。


 残念な気分で隠し部屋から出ると、ロルミアの仲間達が目覚めていた。


「やあ、お目覚めかい? 気分はどう? 不調はない? ・・・ところでどうして3人しか居ないの?」


 そう、そこには申し訳なさそうなロルミアさんに女性が1人と男性が1人うつむいた状態で座っていた。


 予想出来ていたし、マップで敵対反応に変化した3つの反応が離れていくのも確認している、良く見ると結界のマジックアイテムも無くなっていた。


 逃げた3つの反応は12階層を目指して進んでいる、10階層転移部屋を目指しているのだろう。


 取り敢えず結界のマジックアイテムを遠隔で反転させる、こうする事でモンスターを寄せ付けない効果が、モンスターを引き寄せる効果へと変わる、更に盗難防止のために仕掛けて置いた自爆装置を程よい所で起動させよう。


 概ね何が起きたのかは分かっている、泣きそうな顔で・・・いやもう泣いているロルミアさんが涙と鼻水と涎まみれで経緯を語った。


 ボク達が隠し部屋へ突撃してから数分後に5人が意識を取り戻した、皆のぼやけた意識がしっかりとし始めた頃にリーダーから状況の説明を求められる、ロルミアさんはパーティーメンバーが病毒で意識を失った事、自身が必死で皆を隠し部屋の外へと連れ出した事(レアスキルについては黙っていたいようだ)。


 そして、ボクに一人金貨一枚で治療してもらった事を話した、当然予想した通り揉めた、まずリーダー・斥候の男・魔法使いの男がロルミアさんを激しく責めた、しかし回復師の男と槍使いの女が彼女の擁護へと周り、パーティーは2つに割れた。


 その後リーダー達は全ての責任をロルミアさんに押し付けパーティーメンバーからの追放を言い渡して逃走、その際に斥候の男が結界のマジックアイテムを持ち出していった。


 彼女達も阻止しようとしたが魔法使いの男が攻撃魔法で牽制してきた為にどうにも出来なかったらしい、悔しさと情けなさで更に酷い顔になっているロルミアさんにタオルを渡して謝罪を受け入れた。


 元々予想していた結果の一つだったので驚く事も無いしその為の仕掛けすらしている、ボクの中での最悪のシナリオはロルミアさんが殺されて残りが全員逃げている事だ、彼女も生きているし2人も仲間が残っている。


 まずは今をどうするかについた話し合う事にした、残った2人からは治療のお礼と元仲間の謝罪をされた、治療費についても必ず払うと誓って貰えたので、1人につき金貨一枚を無期限で払えるときに払ってくれと伝えた。


 払う意思と誠意さえあれば期限は設け無いつもりでいた、ロルミアさんにも金額しか伝えてはいない、3人がポカンとした顔をしていたので、ここに残った人だけの対応だと伝えた。


 そんな話をしている最中にダンジョンの何処かで大きな音と振動が伝わってきた、何処かで誰かが爆発系の魔法かマジックアイテムを使用したようだ、こんな大きな音を立てたらモンスターが慌てだして大きく動き出し周囲の関係無い冒険者に襲い掛かるかもしれない、何処の何奴だ迷惑な!


 

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