第49話 続下位ダンジョン・1
面倒事を押し付ける事に成功した、多少は悪いとは思うので次の打ち合わせでは差し入れにお酒でも持っていこう。
冒険者ギルドで用事を済ませた後、街の市場をぶらりと回り、職人地区でひやかしをして、平民が利用する商店地区で軽い買い物をして、追跡を撒いた後マッドガーデンに逃げ込み一晩を過ごした。
いまだに付け回されているが、どれも今もところ悪意が無いので放置している、敵では無い様なのでボクから接触するのは面倒くさい。
敵ならばさっさと始末してしまうのだが、もう少し様子を見ようかな、明日も出発が早いので準備を済ませて就寝した。
~????Side~
「今回も見失った」
「了解」
「・・・いつまで続けるんだ?」
「上が良いと言うまでだ」
「他の連中は?」
「接触が無い限りは無視だそうだ」
「はあ~、じゃあこれで上がるぞ」
「ああ、おつかれ」
裏路地の影が暗がりに消えていった。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ~~~ッ!
ゴシャッ!
鳴り響く目覚ましの息の根を止めて起床、目覚ましを修復した後に朝食を済ませたのち、暗がりの中を歩き入場門へと向かう。
すでに入場門は開いていたので手続きを済ませて街の外へと出て行く、邪魔にならない位置まで歩き視界が開けたら、いつものように下位ダンジョンまでシャイニスと早朝のランニングを開始する。
途中定期馬車を追い越し、10分程度で目的地に到着。
朝早い事もあり空いている受付に素早く移動しギルド証を確認して貰いダンジョンへと進む、後ろから何かが急いで追いかけて来た様な気がしたが気の所為だろう。
転移部屋から10階層へと転移する。
・下位ダンジョン11階層
10階層転移部屋から階段を降り辿り着いた11階層。
見た目の変化はほぼ無く、ゴブリンがメインの不人気階層である、少し違うのは棍棒か錆びた剣のどちらかを装備している武器持ちのゴブリンが徘徊している階層。
棍棒・錆びた剣も大した買取金額にはならない、しかもこの武器はドロップ品としてしか入手出来ないため、稼ぎとしては優先順位が低く無視される事が多い、ただし失われたレシピで重ね加工すると『魔槌ゴブリンインパクト』『魔剣ゴブリンスレイヤー△』が作り出せる。
ただしそれぞれ各50本素材として必要となる、やってみたいが手間が掛かって面倒なので今回は集められるだけ集めてみて、飽きたら12階層へ進む事にする。
・下位ダンジョン12階層
飽きた! 各残り一桁になったけれど、突如スンと気持ちが萎えた、こんな時は無理に続けるのは心情的に良くないのが長年の経験なので、いったん別な事をして気持ちをリセットします。
そしてリセット相手が此方。
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名前 無し
Lv 12
種族 ダンジョンラットマン
性別 無し
筋力 G
体力 F
器用 F
速力 F
知力 G
魔力 G
幸運 G
スキル
〈種族スキル〉
・噛み付き ・引裂き(爪) ・毒(微)
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二足歩行のネズミ、ダンジョンラットマン。
体長1メートル程で灰色の体毛に鋭い前歯と爪、前歯には毒があり噛まれると数時間微熱と関節痛が起きる。
死ぬ気とは無いが苦しいそうだ、ドロップ品は魔石・前歯・爪・毛皮・肉ブロック、レアがダンジョンラットマン幸運の尻尾。
幸運の尻尾はドロップ率が3%上昇するアイテムである、ただししっかりと加工してから装備しないと数日で腐ってしまうので注意が必要。
まあ気分転換の相手にしかならないので、気になるところが無ければそのまま進路上の相手を討伐するのみで先に進む。
・下位ダンジョン13階層
ここからは、ダンジョンラットマンが複数体現れる。
そしてこの階層では一つ気になる場所を発見した、奥の隅に一カ所隠し部屋がある。
しかもそこそこ広い、考えられるのはトラップの可能性、モンスターハウスかな? 希少種のボス部屋かな? ちょっとワクワクする。
ボク達は他の冒険者パーティーに気取られ無い様に、立ち塞がるダンジョンラットマン達を蹴散らしながら移動する。
・・・チッ、近くを
此方には気付いてはいないようなので、立ち去るのを待つ事にするが、中々移動しない・・・こっちはマップの反応で位置を把握しているので動かない理由が分からない。
よし、目視で確認しよう気配を消し、認識阻害を掛け、隠密行動をすれば見つかる事はないだろう。
ステンバーイ ステンバーイ 慎重に通路の角から覗き込む。
・・・そこには一人を除き倒れている冒険者パーティーが見えた、反応からして死んではいない、魔導眼で遠見から鑑定。
〈病毒(中)〉と出た、病気・毒耐性が無ければ自然治癒が望めない状態異常だ、即死は無いが意識が朦朧として動く事が出来ない。
回復手段が無い場合はこの階層でも全滅もあり得る状態だ。
助けるべきだろうか? こっちの世界ではどうか分からないがボクの経験上、冒険者同士の助け合いは騙し合いと表裏一体なんだよね。
・・・ヨシ、手を差し伸べよう! もし手を払われたら見捨てよう!
「HEY YOU! お困りですか?」
怖がらせないように陽気に声を掛けると、遠目でもハッキリと分かるぐらいに、ビクリ!と身体が跳ねた後に武器を構え涙声で威嚇する女性冒険者が叫んだ!
「ダ、だ、ダレですか! そ、それ以上ちかろラナイでクだしゃい!」
呂律が回らずに噛んだ・・・ちょっと可愛いと思ってしまった。
「〈ライト〉分かったこれ以上は近付かない、一応確認だ? 助けはいるか? 不要なら立ち去る」
ライトで薄暗い通路を照らしボク達をはっきりと認識させた上で救助の有無を尋ねた。
「!?・・・た、たしゅけてくれますか?」
大粒の涙を溜め、すがるように問いかけてきた。
「必要なら助けますが、同意無しには手助けは出来ません、勿論無料とはいきません、それでも助けは必要ですか?」
酷い言い方だが、ここで甘い事を言うと色々と揉める、そして最悪の場合、仲間に一番攻められるのは、決断し同意した彼女だ。
「お、お願いします! 仲間を!友達を!助けて下さい!
お支払いは私が全てします!」
覚悟は出来たようだ。
「それじゃあ近づくけれど、攻撃はしないでね」
未だに武器を構えている彼女に近付く事を告げる、彼女も自信の状態に気付き慌てて武器をしまう。
「す、すみません! わ、わたし気が動転していて、すみません!」
「良いから良いから、それで何故こうなったのかゆっくりで良いから教えて貰えるかな? 原因が分かると対処しやすいから」
そうして、多少噛みながら彼女、ロルミアは事の経緯を話す。
・彼女を含む男4人女2人の6人パーティー『ブルースター』は全員Eランク冒険者でウルグド近くの農村出身の幼馴染の集まりだそうだ。
・皆それぞれ運も良かったのか冒険者向きのスキルが授かり、これまでも順調にダンジョン攻略が進んでいた。
・しかし今回斥候役の男が隠し部屋を発見した事で事件が起こる、パーティー内で探索をすると主張する者が3人、危険だから今回は見送ろうと主張する者が3人で、意見が分かれたのだ。
・議論の末に探索主張派にパーティーリーダーも居た為、強引に強行する事となったが、隠し部屋の中にはダンジョンラットマンの変異種が待ち構えて居た、出入り口も封鎖され強制的な戦闘に突入した。
・初めの内は戦闘も均衡していたが、次第に一人また一人と体調を崩し初め動けなくなっていく、事態の異常性をどうにか打開しようとロルミアもポーションなどを使用して支援したが一向に改善されなかった。
・このままでは全滅しか無かったので、彼女は切り札のレアスキルを使用してこの危機を脱した。
・戦闘を脱したまでは良いが仲間達の状態が一向に改善しない事に焦り焦燥していた所にボク達が声を掛けた。
・彼女のレアスキルも気になるがパーティーを追い込んだ状態異常の方法が先に気になった、詳しく鑑定した結果〈病毒(中)〉は変異種が空気中に毒素を撒き散らし、その毒素を吸い込んだ対象を状態異常にするものらしく、感染者からは伝染はしないようだ。
治療方法は専用の薬か魔法による治療で完治が可能、最も確実なのは神殿で浄化治療をして貰う事、お布施が少々高くつくが確実に完治する。
薬に関しては、在庫がない可能性と用意に時間が掛かる可能性がある、その場合重症化をして後遺症が残る場合もある、しかも専用の薬はお高い。
・・・え? ボクだったらどうにか出来るんじゃないのかって。
もちろん可能ですよ、魔法でチョチョイノチョイ! ですよ。
でもお高いですよ、ぼったくりますよ、だって今回の状況って明らかな自己過信による自業自得ですから、その事も伝えてから再度確認をした所、お願いしますと懇願されたので5人全てを魔法で治療して完治させました。
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