第48話 閑話 クレイル・ブリザー


 久しぶりに冷や汗をかきました、何者ですか彼女は?


 必要な話を終わらせ執務室から出て行ったEランク冒険者ナイヤさん、トトリアさんの紹介でお話程度ならと面会しましたが、とんでもない人物です。


 まず確定ではありませんが、全ての情報を偽っています、ですが私でも見破る事が出来ませんでした、そして直感が悲鳴を上げていました『敵対するな! 街ごと滅ぶぞ!』と不覚にも瞬間意識が0.1秒飛びましたわ、はずかしい///。


 面会に内容は収納系マジックアイテムに関する相談でした。


 私の親友の言葉を借りるのであれば、失われた技術『ロストテクノロジー』と言える内容でした。


 今までの収納系マジックアイテムトは方向性が違い、低コスト・空間拡張のみの収納袋、量産体制が確立する事で低ランクの冒険者でも購入が可能となり、冒険者ギルドとしても悪い話しでは無いと思えたのですが。


 著名な職人との衝突も考えて慎重に進めようとしました、しかしナイヤさんの考えも一理あるかなと思い取り敢えずは進めてみようと思いました。


 ですがナイヤさん本人は自身が表に出る事を嫌がりましたので、職人ギルドのギルマスを説得(物理)する事となりました。


 彼はドワーフですので伝統的な(物理)交渉でお話し合い(殴り合い)を致しましたらきっと納得して下さると思います。


 ちょっと昔の血が騒ぎますわね、オホホホホ!


 彼女ナイヤさんとの出逢いから、最近昔の夢を良く見るようになりました。


 我が親友メグミ、周囲からは聖女と崇拝されていましたが、本人は「自称聖女です」と照れながら訂正していた。


 私もあのダンジョンのモンスターパレードで死にかけていたところをメグミに救われた。


 後世の書物にはダンジョンのモンスターパレードは発生直前とされていたが実際には既に初期ではあるが発生していた。


 当時Aランク冒険者の私はモンスターパレードが発生した際報告の為に見張りとしてパーティーで参加していたが、到着したときには既にモンスターパレードは発生しており逃げられる状態では無かった。


 後に発覚した事だが、当時国が派遣していた管理者(貴族)が周囲への警告もせずに逃げ出した為に被害が拡大したそうだ。


 更に胸くそが悪い事にその貴族は王族の親類縁者で実績作りのために、管理役を名乗り出て見事失敗したため、王族に泣きつきこの失態を記録には残さない事にしたらしい、勿論改ざんしてだ! 私達冒険者が必死で押えた事さえも揉み消されてしまった。


 当時のギルドマスターが国に丸め込まれてギルドの記録も書き換えられている。


 当時は私もただのAランク冒険者だったので何も出来なかったが、その後報いはしっかりと受けてもらった事は私と数名の友との秘密だ。


 恩人であり親友であったメグミに街造りを手伝って欲しいと頼まれて、私達は喜んでその手伝いをした。


 他の3人とも交流をしていき、2人とは良き友と成った、でも1人だけあの捻くれ者とは生涯に置いて分かり合う気は無い!


 アイツの所為でメグミは・・・、最後まで笑っていた「あの人には私が居てあげないといけないの」って最後まで笑っていた。


 なのにアイツはそんなメグミに対して「来るな! 近寄るな! オレの側に近寄るなぁ~~!」と拒絶していた、私は今でもアイツを許せない!


 いつも「帰りたい、帰りたい、シンカンガ、シンサクガ、ツヅキガ」と訳の分からない事を呟いていた。


 そんなアイツを困り顔で慰めていたメグミをいつも蔑ろにしていたアイツを私は殴り飛ばそうとしたが・・・敵わなかった、指一本として届かなかった、本気を出したアイツに唯一近付く事が出来たのはメグミだけだった。


 メグミを失い一時期は無気力になったが、親友と過ごした数々の思い出が私を立ち上がらせた。


 メグミ曰く『可愛いは正義!!』を実践し、ウルグドの発展に尽力し、気が付けば冒険者ギルド・ウルグド支部のギルドマスターにまでなっていた。


 各ダンジョン伯ともに協力し今もこの街のために心血を注いでいる。


 忙しさの中で昔の記憶も埋もれていたときに現れたのがナイヤと名乗る少女だった、有能な部下であるトトリアさんの紹介で面会をしたEランク冒険者・・・ランク詐欺である。


 アイツ以上にヤバイ、アイツを知っているから辛うじて感じ取れる深淵からの実力・・・本人が隠したがっている事が唯一の救いなので追い詰めないように話を進めた。


 実際の話、非常に良い話なのだ、色々と経済が潤うし、私が後ろ盾となって彼女を守ればダンジョン伯の子達も迂闊には手を出せない、長生きをしているからそれなりの地位と繋がり、相手の黒歴史を知っているのよ。


 ・・・そんな事を思い出し少し懐かしくなり初心者ダンジョン5階層(封印の地)へとお忍びで向かう事にした。


 墓参りという訳では無い、実際は今でも生きているので。


 ・・・おかしい? ・・・封印の気配がおかしい?


 いつも感じていた気配が無い、アイツの使い魔の気配すら無い、使い魔が世に放たれた! ・・・いや落ち着きなさい! そんな情報は何処からも入って来てはいませんでした。


 メグミから教わった方法、こんな時はクールに、クール クール、落ち着いて深呼吸。


「ひっひっふうひっひっふう」


 良し落ち着きました、流石はメグミね。


 ・・・私ではアクセス権限が無いので、これ以上の調査は無理ですわ、管理を任せてあるカマモト家当主か他のダンジョン伯を呼び出してアクセスして頂かないと行けませんわね。






 ブチ切れましたわ! 久々にブチ切れてしまいましたわ!


 過去の粗暴な私が顔を見せてしまいましたわ!


 いい歳をした男性2名とまだ幼さが残る男性1名が粗相をしてしまうぐらいの迫力だったと本人達が後に語っておりました。


 封印の管理を約20年程一切していなかった事が今回判明しましたわ。


 主犯はカマモト家前当主、あの男は当初から反抗的で他2家を嫌っておりましたが、ここまでの事をしているとは思いませんでした。


 ダンジョンの管理は部下任せでいいかげん、現当主への申し送りも嘘を織り交ぜ歪曲させた情報を伝えていました。


 何より許せないのは当主の証であり、ダンジョンへのアクセス権を持つ『マスターメダル』を偽物とすり替えて現当主へと渡していた事ですわ! 万死に値します蛮行ですわ! 殺すぞあのヤロウ!


 行方を暗ましている様なので、各家の暗部を放ち追跡させています「生かして捕えなさい! 後悔は此方でさせて差し上げますわ!」としっかり言い聞かせてありますからどんな手段を用いても生かして連れてくるでしょう。


 ダンジョンへのアクセスは他2家が予備で保管していた『マスターメダル』を使用してアクセス致しました。


 その結果、『そのご質問にはお答え出来ません』


「だからネクラマンサー尾根倉命の使い魔を倒した人物と何時討伐をしたのかを答えてくれるだけで良いのよ」


『個人情報及び関連する情報はお答え出来ません』


 使い魔は既にこの世界には居なかった、討伐されていたのだ!


 封印する事しか出来なかったあの化け物を討伐したのだ!


 一体誰が? 何時? ・・・少し前の私であれば思い付かないでしょう、しかし今は1人思い浮かぶ人物がいる・・・でも聞く事が出来ない、彼女は英雄を望まない、名誉を嫌がる、心の内で感謝してくれたら良いと言うだろう。


 私もそれで良いと思ったが、問題が有ったダンジョン側からの余計な情報がダンジョン伯達の欲望に火を灯した。


 説得の最中にお礼と褒美を与えたいと告げて情報を得ようと1人のダンジョン伯が言うと『既に報酬として当ダンジョンで保有する全ての財宝を譲渡しましたので不要です』と。


 何故その情報を伝えたの? 質問を拒否しなさいよ!


 ほらぁ、3人とも冷静を装っているけれど人の欲望がだだ漏れてるじゃないのよ。


 どうしようかしら、本人に聞いてから対策を立てる? いいえ、それは悪手と直感が更に悲鳴を上げているわ!


 知らないていで対処しましょう、この街を陰ながら救い新たな利益をもたらしてくれた英雄に心からの感謝を込めて。


「ありがとう」と心の中で告げる。


 まあ情報も無しに真相へと辿り着くのは難しいでしょうけれどね、何せ約20年分の情報を精査しないといけないのだから、前当主の捕縛が急がれるわね。


 誤情報としてこの20年で急に羽振りが良くなった冒険者を調べてみるのはどうかと伝えておこうかしら。



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