第46話 昔見ていた〇〇番組のノリで。


 ウルグドへ帰還後すぐに裏路地に身を隠しマッドガーデンへ移動、寝る間も無くレッツ工作開始♪


 シャイニスはすぐ寝床に入ってしまったので、ボクだけで鼻歌交じりにマジックアイテムを作製。


 現在、スキル中位製作Lv10なので失敗する事は無いだろう。


 こちらの世界のスキルを用いた方が不具合は出づらいだろう。


 生産系の別世界チートスキルは持ち合わせているが、今回についてはこちらの世界の職人でも作る事が出来るように調整しておきたい。


 まぁボクがヤルのだから碌な事にはならないけれど、出来る限り理性を保って最後の行程まで進めよう。


 では、レッツクラフト!


 ボクが物作りで使用しているスキル製作はノーマルスキルではあるが、使用者の想像力次第でレアスキルに匹敵するカスタマイズが出来る。


 その為知識や知恵に閃きや直感を必要とするため扱いが難しい所為か、この世界では不人気のスキルだが、ベテラン転生者のボクはその経験を遺憾なく利用して機能を好き勝手に改造出来るので当たりのスキルである。


 今回使用する素材と道具は。


・ゴブリンの腰布×6枚

・ゴブリンの魔石×2個

・魔力用紙×2枚

・魔方陣用特殊インク


 これらを用意した。


 先ずはスキル製作から『クラフトキューブ』を起動する。


 すると手前に正四角形の立方体が現れる、一辺が1メートルのソレはボクがカスタマイズし勝手に名付けた『クラフトキューブ』。


 要するに魔法による製作装置である、細かな設定も想像力でほぼ可能であり、大抵の事は一瞬で終わらせる事が出来る。


 では始めるとしよう、まずはゴブリンの腰布×6枚を『クラフトキューブ』に収納して起動! 綺麗な布袋×2枚が完成。


 次に魔力用紙と魔方陣用特殊インクを『クラフトキューブ』に収納して起動! 空間拡張の魔方陣が印刷された魔力用紙×2枚が完成。


 因みに空間拡張の魔方陣の図式は『ロストアーカイブ』から引用した。


 そして綺麗な布袋を裏返して、そこに魔力用紙1枚に魔力を込めながら丁寧に貼り付ける、これにより布地に直接空間拡張の魔方陣を書き込まなくてすむ訳だ、布に直接だとインクが滲むし線が途切れてしまうからね。


 最後の仕上げは、魔力用紙を貼り付けた綺麗な布袋2枚とゴブリンの魔石2個、袋口を締める紐2本を『クラフトキューブ』に収納して起動! レシピをしっかりとイメージして合成し、出来上がった物がこちらのマジックアイテム「収納袋(容量2倍)」になります。


 そして更に「収納袋(容量2倍)」2枚をゴブリンの魔石2個で合成すると「収納袋(容量3倍)」が出来上がり、同じ事を繰り返す事で最大「収納袋(容量10倍)」にまで拡張が可能です。


 ・・・製産コストは落としたけれど、このレシピで他の生産系スキルが同じ物を作れるかは、職人の知恵と腕次第かな?


 まあ10倍までやると手間と素材の量も凄く掛かるだろうな、金額的には安く済むだろうから、仮に失敗しても精神的なダメージ以外は些細な事だと思える。


 さて、素材はたっぷり掻き集めてあるから見本を各1枚ずつ用意しようか、一度行程を済ませてあるから後は『クラフトキューブ』の機能の一つ、製作自動化を使用してパッパと済ませてしまおう。


 その間にボクはレシピの清書をしておこうかな。


 ・・・う~ん、同じ姿勢は背中や肩が張るなあ(コキコキボキバキ)。


 どれ収納袋は全て出来たかな? ボクは『クラフトキューブ』を確認すると全ての作業が終わっていた、その後品質もチェックをしたがどれも問題は無かった。


 ・・・仮に市場に出ても容量2~4程度が妥当かな? 実際に分業無しで1人で作業していたらゲシュタルト崩壊が起きそうな気がする、同じ作業の連続だから次第に考えるのを止めてしまいそう、ボクはとんでもない物を現代に甦えらせてしまったのかもしれない。


 失われた技術や魔術は趣味の範囲で納めた方が世の為かな。


 ・・・あれだけやっていてまだお昼前か、冒険者ギルドに納品と買取を頼みに行こうかな。


 シャイニスに一緒に来るかどうか聞いたが、寝床で寝ていると返事が返って来たので、留守番を頼んでボクだけで向かう事にした。


 周囲の悟られないように偽装隠密を駆使し、裏通りから表通りに気付かれる事無く移動し、冒険者ギルドでいつものようにトトリアさんに手続きをお願いする。


「この時間って事は朝帰りか? あまりはしゃぎ過ぎて無理をするなよ、・・・よし常時依頼の魔石分は数に問題無い、この魔石の大きさだと10階層まで行ったのか。

 で? 買取は多いのか、肉類なら解体所になるが、もし珍しい物が手には入ったのなら相談に乗るが」


「ではお言葉に甘えて相談したい事があります」


「ほう!」


 ボクが相談がある事を伝えると、トトリアさんはニヤリと笑いいつもの部屋へと行くように指示をする。


 部屋に到着して互いに席に着くと身を乗り出してトトリアさんに尋ねられた。


「それで相談事って何だ? 面倒ごとか?」


「何だか楽しそうですね、では軽い相談事からしますね」


 そう切り出しまずは、大量のスライムの素材について、買取は可能なのか。

 次はドロップ品の買取について、狼牙のナイフやゴブリンテイムのスキルオーブは買い取って貰えるのかを先に聞いた。


「スライムゼリーはいくつあっても歓迎だが、だが申し訳ないが買い取り価格はそれ程高くは無い、それでもいいだろうか? 勿論せめてギルドでの評価はしっかりとしておく」


「それに関しては規定の価格でかまいません、これからも暇があれば集めておきます」


「すまん、助かるよほとんど品切れになっていて、一部の職人から何とかならないのかって、相談されていてなぁ、いやぁ本当に助かった出せるだけ全部買い取るから遠慮しないでくれ。

 それとここだけの話、ナイヤ下位ダンジョンを無事攻略出来たら報告に来い、Dランクに昇進させるから」


「良いの? こんな速いペースでランクを上げて、問題にならない?」


「そんな事は気にするな問題無い! それよりも実力とランクに差がある事の方が問題だ、ナイヤみたいな存在はなぁ、昔からある言葉で『ランク詐欺』って言うらしいぞ。

 落ち人が言っていた言葉で褒め言葉だと聞いている」


 ・・・間違って伝わっているなこれは、訂正するのもおかしな事になるから無視しておこう。


「それとドロップアイテムの買取も問題無いが、ただ物によっては専門店に売った方が高いときがあるからな、ギルドで金額を聞いてから店と比べて売り払うのも一つの方法だぞ。

 まあ面倒なら冒険者ギルドにまとめて売ってしまっても良いがな

 このナイフは何処も買取値に差は無いが、スキルオーブは人気によって大きく差額が異なる、特に人気なのは魔法系、次は戦闘系、その次は冒険者寄りの特殊系、後他は職業によって色々かな、ああっ一番人気は収納系だな、冒険者ギルドでも高値がつくが、商人ギルドが更に高値で買い取っている」


「・・・そうなると収納系のマジックアイテムも高額ですか?」


「う~ん物によるな、第一に容量と内部時間、第二が重量軽減と耐久性、最後が大きさとデザインで価格が決まるな。

 だが実際問題は妥協して最優先は容量か内部時間の二択だ。

 より多くの物が入るか、少しでも長く鮮度良く保存出来るか。

 付属や取り付けする事で、似たような効果のマジックアイテムもあるが、ダンジョン産か著名な職人が作った物でないと、効果は期待出来ないな、ほぼ気休め程度だ」


「なるほど、参考になりました、トトリアさんは鑑定は出来ます? 実はこんな物があるのですが」


 そう言ってそれぞれを横に丸めて束ね、大籠の上に置いていた『収納袋(容量2倍)』を取り出し、広げてトトリアさんに見て貰った。


「これは・・・! これを何処で、いや違うな、誰の作品だ?

 オレへの相談の本命はこれかい?」


「はい、そうです、無視しても良いかなと思ったのですが、価値はどれ程かなと好奇心が湧いてしまって」


「・・・収納容量は2㎥のみ、無地で真っ白な布袋のマジックアイテムか、しかも生産品・・・」


「ありきたりですよね、コストは出来るだけ最低限にしてあるけれど、あまり価値が無いようなら持って帰るので、参考の為にトトリアさんの感想を聞かせて下さい」


 ?


 フルフルと震えるトトリアさん、収納袋を握りしめ。


「な、な、なんじゃこりゃ~~~!」

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