第42話 下位ダンジョン・1
ポルアさんもいっぱいいっぱいだった様で思わず叫んでしまったが、ボクは後の事を任せて下位ダンジョンへ向かう事にした。
店前で待たされていたシャイニスからは抗議の鼻先突きをされてしまい、機嫌を直して貰うのに苦労した。
すでに時間的には正午過ぎで定期馬車もこの時間のものは出発しているようだ、ボク達は走るので関係は無いけれど結構混んでいるかもしれない。
ウルグドから走って10分、参考対象として定期馬車で1時間、下位ダンジョン手前に到着した周囲には柵に囲まれた場所があり、その中には露店や天幕が見る事だ出来た、おそらくは冊子にも書いてあった領主と各ギルドが共同で管理する宿泊広場だろう、入口付近に管理人のような人が立っていて出入りする人達から何かを確認している。
通行所か何かだろう、チラリと料金表が見えたボクは利用しないので関係ないけれど、一々街に戻るよりも安い料金で場所を借りてテントを張った方が稼ぐのには丁度良いのだろう。
冒険者ギルドや商人ギルドが買取の出張所を下位ダンジョン受付近くに置いてあるようだから、多少の不便は気にしないのだろう、・・・うん、正直近付きたくは無い・・・くちゃい、衛生面をあまり考えていないのか色々な臭いが混ざっている。
詳しいく分析すると気分が悪くなるのでスルーして、下位ダンジョンの受付を目指す、周囲には初心者ダンジョンの様に14歳のFランク未成年者達が、Eランク以上の冒険者達に荷物持ちあるいはパーティーメンバーとして、同行させて貰うよ売り込みをしている。
彼等彼女等も本格的な冒険者としてダンジョンに挑みたいが、14歳Fランクは初心者ダンジョンにのみ挑む事が出来るが、15歳になるまでは成人冒険者と同行しない限り、下位ダンジョンに入る事が出来ない決まりになっている。
要は成人するまでは、初心者ダンジョンで腕を磨けと言う事だ、ただ一度でも攻略してしまうと人間誰しも上を目指してしまうものだ、更に初回特典の良いスキルを得ようものなら少しでも力を示したくなる、子供特有の万能感が抑えられなくなるらしい。
後は初心者ダンジョンの縄張り争いで弾かれ仕方なくここに来ている者もいる。
みんなで仲良くやっては行けないのだろうか?
あっちこっちで売り込みがおこなわれてはいるが、ほとんどが不発に終わる。
何故かって? このダンジョン都市ウルグド特有のルールがあって、未成年の命を保護する為に同行を許可した冒険者にはいくつかの責任が課せられる、内容は省くけれどハッキリ言ってメリットが無い、冒険者ギルドからの評価が少し上がるだけでデメリットの方が大きい。
依頼や知り合いであれば同行させても良いが、デメリットにしかならない他人の為に苦労するお人好しは極僅かで早い者勝ちだ、他所の国であれば肉盾要員に騙して同行させる冒険者もいるらしいので、ウルグドの政策は良心的に思える、流石は異世界人が築いた街だ。
そしてボクはお人好しではないのでそんな
進路を邪魔される事無く下位ダンジョン入口受付に到着した、一部気付いた連中が
「お願いします」
「・・・はい、確認しました問題ありません、初めて見る顔だね無理はしないでね、何かあったら逃げなさい、通って良いよ」
「ご忠告ありがとうございます」
ギルド職員に軽く頭を下げて先に進む、何を勘違いしたのかボクの後からギルド証を見せて入ろうとした未成年Fランクがギルド職員に止められて食って掛かっていた。
「何でアイツは良くて俺達はダメなんだよ! アイツも俺達と同じFランクだろう! 説明しろよ!」
失礼な、書類上は15歳のレディよ!
「個人の情報をお前達に教えるような義務は冒険者ギルドには無い! ギルド職員への暴行行為は立派な規則違反だぞ! これ以上続けるようならそれなりの罰則を科すぞ! 他の冒険者の通行妨害をするなさっさと散れ!」
罰則という単語に先程までの威勢は何処かに消え、急いで走り去っていった、ただ数人が納得いかない表情でボク達を睨んでいた、絡まれそうだな何処かで面倒だなあ。
溜め息を吐きながら下位ダンジョンへ攻略を始まる。
・下位ダンジョン1階層
見た目は石造りの遺跡風の外観、初手の空間把握を発動・・・マップ形成・・・索敵表示、下準備はヨシ!
隠し部屋は無し、通路に罠の反応は無し、先ずは人気の無いところに向かおう、初心者ダンジョンと違って通路を封鎖している冒険者はいないな。
横道に入って更に分岐を曲がる、そして今回初めてのモンスターに遭遇する。
================
名前 無し
Lv 1
種族 ダンジョンスライム
性別 無し
筋力 G
体力 G
器用 G
速力 G
知力 G
魔力 G
幸運 G
スキル
〈種族スキル〉
・分解(弱) ・物理攻撃半減
================
そうスライムだね、この世界のスライムは固形型なのかな、他の世界で様々なスライムを見てきたから、スライムにはちょっと詳しい。
世界が違うとゲル状型・群体型・寄生型など様々、気性によっても共存したり、掃除屋として無害だったり、全てを飲み込む厄災だったりと多種多様だ。
現状では非常に弱い扱いのようだ、通常で討伐しても魔石しかドロップしない、解体を組み合わせるとドロップ品は出るが非常に嵩張るそうで荷物を圧迫する為に不人気、1階層はほぼスルーされると教えて貰った。
ただし、冒険者ギルドとしてはドロップ品は欲しいそうだ、特に薬師や錬金術師がご所望らしい、以前は専門で請け負っていた冒険者が居たが不慮の事故で引退してしまったらしい。
今は依頼を請け負ってくれる冒険者が居ないため品薄で困っているとトトリアさんが説明してくれた。
品薄だから価格が高騰するのかと思うが、代用品がある為それ程高騰はしない、ただ職人としてはスライムのドロップ品を使用する方が品質も上がって扱いやすいそうだ。
そしてあまり依頼を受けてもらえないのは、スライム相手のドロップ品回収を「スライムあさり」と卑下する冒険者が一部おり、憂さ晴らしにいちゃもんを付けて暴行をするクズ共が存在する、今回の冒険者もそんなクズ共の被害者だ。
そしてそのクズ共もうだつの上がらない連中ばかりで、真面目に仕事をしている人間に対してどうこう言える存在では無い、とボクは強く抗議する。
まあボクに手を出したら四肢を砕いて「スライム分解刑」にしてやる、ふっふっふっ・・・仕掛けてこないかなぁ。
そんな物騒な事を考えながら、ボクは右手に魔力を纏わせ、プルプルしているダンジョンスライムに手刀を打ち込み素早く核を抜き取る。
そして抜き取った核を『デストロイ!』と握り潰す! この際本気で握り潰すと内部の魔石まで砕けてしまうので、途中でスッと力を抜くのがコツである。
その行程を3秒以内に行う事で素材を残したままドロップ品もいただく事が出来る。
注意としてはこの方法はボクの様な特別な訓練をした者でないと危険なので素人は真似をしないようにナイヤとの約束だよ。
茶番はこれ位にしてドロップ品の確認。
スライムゼリー:スライムの核を抜き取り、内部の不純物を除去した物、中和剤として様々な適性がある万能素材。
サッカーボール程の大きさのドロップ品と解体して残った素材分、確かに嵩張るねこれは、でもボクには関係ないので全て大籠に突っ込む。
その後もマップで位置を確認しながらダンジョンスライムを狩り続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます