第39話 申し込まれても困ります。
阿鼻叫喚の冒険者ギルド、後からギルドに入ってきた者も何事かと周りに聞くが伝言ゲームに良くある伝達ミスでボクがおデブ君ことピロック君を冒険者達の目の前で叩きのめしてズタボロにしたと面白可笑しく伝えていた。
何処の何奴だ、引っこ抜くぞ!
その後何故か関係者を集めての話し合いとなったが、現在更なるカオスと化している、トトリアさんがピロックの胸倉を掴み吊し上げ、ボーネクは見知らぬ凄腕美女の冒険者に顔面を床に押さえつけられ、トムを含む取り巻きは隅っこでガタガタと震えている、ボクは果実水をクピリと飲み現実逃避をしている。
何故こうなった?
事の始まりは初心者ダンジョンでのボクとピロックのチョットした出来事を彼らが大事にしてボクからお金を強請さらには身体さえ狙っていた事が問題となった(労働力としての意味)。
順を追って話すと。
1,まずは話し合いとして泣き叫ぶピロックを横目にボーネクがボクにピロックの治療費大銀貨3枚(30万ギル)と迷惑料大銀貨2枚(20万ギル)を要求してきたので、ハッキリと拒否しついでに冒険者としての最低限のルールーも覚えておけないのかと煽り更に怒らせる。
2,あまりに五月蠅いピロックに以前人攫いのアジトで入手した、消費期限ギリギリの品質のよろしくない下位ポーションを無理矢理飲ませた後左肩をはめてやった、右手の砕けた骨もポーションのお陰で多少の後遺症は残るが骨は無事にくっ付いた。
なのでボクからピロックの治療費大銀貨3枚(30万ギル)とボクへの迷惑料大銀貨3枚(30万ギル)を請求した。
3,ボクの要求にボーネクとピロックが「自分達は頼んでいないお前が勝手にやった事だ!」と支払いを拒否、それどころか模擬決闘を申し込まれる。
模擬決闘とは冒険者同士が揉めたときの解決法の一つで、ギルド職員が審判の元で殺しは無しの模擬戦をする。
模擬戦の結果で勝者の言い分が採用されるという、強者に都合の良いシステムだ、その際には見物する冒険者が賭けを始めたりと娯楽の要素もある。
非常に理不尽な解決法だがこの世界では一般的な常識なのだ。
4,ボクの返事も聞かずにボーネクとピロックは自身の要求を伝え始まる、ボーネクは迷惑料と自身の名誉毀損で大銀貨10枚(100万ギル)を請求してきたが周りの目は呆れていた、元々の治療費も法外だが平民小僧の名誉に大銀貨を請求する事自体が非常識だとボーネクは気付いていない。
ボーネクとしては更なる要求を呑ませる為に法外な金額を提示したので分かりやすい大金として大銀貨と言っただけだった。
5,ここで問題が発生する、ボクが黙っているのを勘違いし調子に乗ったピロックが手順を間違える、代案としてではなく更なる追加の要求をしたのだ、要求の内容は5年間自分達のパーティー専属解体要員として無償で働けと、そこでボクは少しイタズラをしてピロックに微弱な精神誘導魔法を無詠唱で使用し「そんな奴隷契約みたいな事がまかり通る訳がないでしょう」と馬鹿にしたように告げると、ピロック君はそんなボクをバカにするようにボーネクが止める前に得意げに話し出す。
6,この国での奴隷制度は結構厳しく法で取り締まっているのでピロックの発言内容は完全に違法だった、聞き耳を立てていたトトリアさん含むギルド職員達も途端に動き出し、容疑者の確保と出入り口の封鎖をする。
ボーネクは事態の不味さに逃げだそうとしたが、一瞬で現れた見知らぬ凄腕美女の冒険者に顔面を床に押さえつけられ拘束された、残りのトムを含む取り巻きは隅っこでガタガタと震えていた。
ピロックを吊し上げながら怖い笑顔でトトリアさんが質問をする。
「おい小僧! 何処の誰にその下らねぇ悪知恵を仕込まれた!」
ギリギリと締め上げられるピロックはまともに話す事も出来ずに目線をボーネクへと向ける。
「ボーネク! てめえが主犯か!」
トトリアさんの威圧の籠もった怒号にボーネクは縮み上がり言い訳をし出す。
「ひぃ、な、何のことか分からない、ピロックが勝手に言った事だ、それにこれは冒険者同士の問題だろう、ギ、ギルドには関係ない話だ」
最後の方にはギルドは関係ないと言い切るが、君達は冒険者に登録するときに説明あるいは渡された冊子を読まなかったのかい?
「確かに冒険者同士の問題にはギルドは極力介入しない・・・だが! 犯罪が絡む場合は別だ! 冒険者ギルドは犯罪組織ではない! 犯罪に加担する犯罪者を冒険者ギルドは冒険者とは言わん!」
トトリアさんの言葉に何とか反論しようとするボーネク。
「でも『黙れ小僧! お前は犯罪容疑者だ!』・・・」
「覚悟しろ、尋問室でたっぷりと話を聞いてやる、こいつらを全員尋問室に連れて行け!」
ギルド職員に連行される6人、ボーネクとピロックは反抗しているがそれぞれ鳩尾に一撃が入り大人しくなる、その光景を見ていて他の4人は大人しくしたがっていた。
ボクは果実水を追加してその光景を眺めていた、そこにトトリアさんが近づいてくる。
「災難だったな、だが助かったよ」
何故かお礼を言われたので惚ける事にした。
「何のこと出すか? ボクは少しお話ししただけですよ・・・彼らどうなります?」
そんなボクの問い掛けにトトリアさんは、ゴツくて大きな手でボクの頭をポンポンし。
「実際の実行していなければ知っている事を聞き出した後に、二度とバカな真似をしない様に説教と再教育だな」
「・・・そうですか、それは良かった」
果実水を飲み干してそうぽつりと言う。
「ナイヤは本当に優しいな」
「そんな事ないですよ、ボクは結構他人に厳しいですよ」
コップをマスターに返しニンマリとした顔で答えた。
「・・・そうか、そう言う事のしておこう、もう帰っても良いぞ、一応は警戒しておけよ、今回の件に関わっている奴らもいるかもしれないからな」
「うん分かった、返り討ちにして突き出しておくね」
「・・・程々にな、気を付けて帰れよ」
トトリアさんと別れた後、索敵で敵対者を探しつつシャイニスを迎えに行き、その後町並みを進む。
・・・つけられてるなぁ、面倒くさい。
悪意が2に、中立が2、味方が1?・・・誰だろう、ギルド関係かな? ヨシ追跡者を撒こう、裏路地に入り目線を切って『マッドガーデン』起動、急いで入り入口を閉める、これで追跡者はボク達を見失う。
今晩はゆっくりと羽を伸ばそう・・・しっかし何処の何奴だ、ボクを嗅ぎ回っているのは、まぁその内接触してくるでしょうからその時に対処いましょう。
~????Side~
「あれ? 見失った、この距離で気付かれた? それとも他のゴミ共から逃げた? う~ん分からん、久々にビビッと直感に来たんだけど・・・夜這いは無理そうね、じゃあまたね♡」
んんんんんっ! 何か悪寒が走った、どうしようこのままお風呂入ってから寝ようかな? でも戦利品の確認もしておきたいな、先っちょだけ確認しようかな。
その後ナイヤは日が昇るまで財宝の確認に没頭していた。
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