第37話 初ダンジョン攻略。
初のダンジョン攻略達成? とは言え無いかな、あくまでダンジョン体験版と言ったところか、まぁチャレンジモードは明らかにデスモードだったけれど。
どこかでライフリーパーにシステムをジャックされていたのかもしれない、なにせライフリーパーに有利な内容だったし、高確率で転移者を呼び込める仕組みに人の欲を刺激する財宝の数々、質の悪いのが転移者は特別扱いなので、ほとんどが強いし自信過剰になり気味だ、実に良い生け贄といえる。
これまでの考察をしつつ無事に初心者ダンジョンから出て来たボク達にギルド職員のおじさんが話しかけてくる。
「よお、お帰り初のダンジョンはどうだった定期馬車が来る前に入ったから3階層移行は空いていただろう。
真っ直ぐに進めば直ぐに攻略出来るからな、問題は無かったろう」
「予想していたダンジョンと違って驚きました、後2階層でチョット揉めたくらいで問題は有りませんでした」
そう答えてから2階層での出来事を話した。
「そいつは災難だったな、まぁ解体スキル持ちを自分達のパーティーに入れたい気持ちは分かるが、しかっし手を軽く払いのけられたぐらいで泣き叫ぶってどれだけ脆いんだそいつは?
うん! ああっアイツ等か、結構前に腕を押えてる小僧を連れて出て行ったのが居たな、まぁ気にするなこんな事冒険者では日常茶飯事だ、痛いのが嫌なら辞めれば良い、犯罪で無ければ何をしても自分の自由だ」
得意げに冒険者としての心得を話す職員のおじさん、元冒険者だったのだろうか。
「参考になる話をありがとうございます、今度は下位ダンジョンに挑戦してみます」
「おお頑張れよ、でも無茶はするなよ命を大事にな」
軽く礼をしてウルグド方面へ向かう、周囲には冒険者待ちの子供達が道外れでいくつかのグループでたむろしている。
街に帰る相手には寄ってこないのが面倒が無くて良い、まあ職員の見える場所で問題を起こせばどうなるかは理解出来ているようだ。
・・・懲りないなぁ溜め息が出る、視界が切れる場所で待ち伏せしている連中がいる反応は若干敵意寄り、朝に振り切った子達かな?
・・・ヨシ今回も振り切ろうフルスロットルで。
結果、ぶっちぎりました。
跳ね飛ばしてはいないのでセーフ、若干のソニックムーブは起きたけれど、一応防護魔法をかすり傷程度で済むようにかけておいたからアウト寄りのセーフだと思う。
そんな一幕もあったけれど無事にウルグドに到着、ただシャイニスのご機嫌取りに少し遠回りはしたけれどね。
途中でモンスター数体をはね飛ばしてしまったのはご愛敬。
まだ日は高いが冒険者ギルドに買取と報告をしに行こう、ギルド施設内は結構込んでいる、でもトトリアさんの受付前は空いているようだ、相変わらず強面の受付に話しかける。
「トトリアさん、常時依頼の確認と買取良いですか」
話しかけながら魔石の提出とドロップ品をカウンターに置く。
「おう、早速行って来たのか、ずいぶんと早い帰還だな、どれ確認をしよう・・・魔石の数は問題ないな、肉ブロックの数も良し、常時依頼分は問題無い。
次はドロップ品の買取か、どの品が幾つぐらいある?」
そう尋ねられ、大籠から姿肉や毛皮各一つずつ取り出し置いていく。
「・・・解体スキル持ちか、解体した物もあるか?」
解体した物もカウンタ-に置く。
「・・・良い仕事だ、ウチに欲しいぐらいだ、解体した物も買い取れるがどうする?」
「ではお願いします」
「よし、他にはまだあるか? 遠慮しないで出して良いぞ、ダンジョンのお陰で冒険者ギルドは儲かっているからな。
そう言えば初心者ダンジョンに行っていたのだったか、どうだった良いアイテムは出たか」
トトリアの本人は気を利かせての笑顔だけれども大人も引く笑顔に、ボクも笑顔で返し答える。
「生活魔法のスキルオーブが出ました、でもボクすでに生活魔法を持っていてどうしようかなと」
必要の無い素材を次々とカウンターに置きながら今回の成果を楽しそうに話す。
そんなボクを顔は怖いが優しい眼で見ながらカウンターに置かれる素材の量に待ったをかけるトトリアさん。
「ナイヤちょっと待て!もう出すな! 出した分は此奴らに精算させるから、チョット荷物を持って奥に来い」
呼び出しを食らってしまった、大した量は出してはいないはずだけれども、どこに不備があったかな?
そのままトトリアの後をついて行くと空き部屋に案内される、そして席に座るように促されて座ると少しの間を置きトトリアさんが飲み物を出してくれた。
「まぁ飲みながら聞いて欲しい、質問に答えたくなければ答えなくて良い、その事でギルドがナイヤに何か不利益になるような事はしないと俺が保証する、でだ単刀直入に聞くがその大籠はマジックアイテムか? 見たところ空間拡張が施されているように思えるが」
ボクとしては予測の範疇なのでコクリと頷く。
「そうですよ、形見の品です」
そう答えると悪い事を聞いてしまったとトトリアさんは顎に手をやり。
「スマンな嫌な事を聞いてしまった、俺としては他の冒険者に聞かせたくなかったのと忠告のつもりでここに呼んだんだが、ナイヤに対して悪意がある訳では無いのは分かって貰いたい」
本当に性格と人相が合ってない人だよなこの人。
「もちろんトトリアさんが悪い人ではないのは直感で分かります、ボクの為にありがとうございます、他にも聞きたい事がありますか」
微かに涙目になるトトリアさん、苦労しているんだなこの人。
「ああ、スマン年を取ると眼が乾くもんでな、後聞く事はまだ買取に出す素材はあるか?」
「自分で必要な物以外は売ってしまいたいですね嵩張るので、籠を圧迫してしまうし」
「分かった解体が必要な物は解体所に、嵩張らない物はこのテーブルに出してくれ、因みにこのテーブルで足りるか?」
「肉類は解体所で良いだろうから、細かい物なら十分足ります」
「そうか、じゃあよろしく頼む、作業しながらで良いから聞いてくれ、その大籠はかなりの容量が収納出来ると俺は思う、その言いにくい事だが狙われる可能性がある」
素材を出しながらトトリアに質問をする。
「その場合は返り討ちにしても犯罪にはなりませんよね」
「ああ、言いたい事は分かる冒険者だからな自分の身は自分で守るのは当たり前だからな、冒険者同士のいざこざは基本ギルドは介入しないが犯罪行為に関してはギルドも取り締まるな、勘違いしているバカも居るがな、強盗に対しての反撃は犯罪にはならないが、何事にも例外があるから気を付けろ」
「例えば、強盗側と取り締まる側が繋がっていたり、貴族だったり、有力者の身内だったりしたら此方が悪くなるって事?」
「滅多には無いが希にあるな、得の高額な物が絡むとな、その大籠みたいなマジックアイテムはそれなりに出回っては居るが、それでも金にしようと奪う奴もいるし、因縁を付けて無理矢理に合意させる場合もある、流石にギルド内でやるバカは居ないがな、兎に角気を付けておきなさい」
テーブルに買取分の素材を全て出し終わり、トトリアの話を黙って聞いていた。
「これで終わりか、長話でスマンな希にナイヤのような言っては悪いが身の丈に合わない装備やマジックアイテムを持った若いのが、酷い目に遭うのを何度も見てきたからな、老婆心から余計な世話を焼いてしまう」
寂しそうに語るトトリアさん。
「いえ、そんな事無いですよ貴重な忠告ありがとうございます。
ボクなりに生かしていきますから、気になる事がありましたら忠告して下さい」
「はぁ~、ナイヤは本当に良い子だな」
「前の街でもよく言われましたし、色々と忠告も受けました、その知識はボクにとっての財産ですから」
とっておきのスマイルで答える。
「・・・任せろナイヤ、俺が高値で買い取るように掛け合ってやるから、さあ解体所に行くぞ!」
やり過ぎた! まずい、下方修正しないと。
「トトリアさん、正規の買取で良いですから無茶しないで下さい」
そのまま説得を続けながらボクはトトリアさんの後を追い解体所へと向かった。
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