第34話 初心者ダンジョン・3


・初心者ダンジョン4階層


 うん、地形に代わり映え無し! でも鬱陶しい場所取り要員は居ないようだ、では何時もの様に空間把握でマップを形成してから索敵・・・6パーティーが活動中、内4パーティーが交戦中の模様、おっとこれは4階層の構造が一部違うぞ、壁に囲まれた空間が一つあるな、隠し部屋かな?


 他冒険者パーティーと鉢合わせないように立ち回って隠し部屋を調査しようかな、でもまずその前に4階層のダンジョンモンスターとご対面だ。


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名前 無し 

Lv 4

種族 ダンジョンボア

性別 無し


筋力 G

体力 G

器用 G

速力 G

知力 G

魔力 G

幸運 G


スキル

〈種族スキル〉

・突進 ・牙突き


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 体長70㎝程、口元に短い牙を生やした小柄なボア、野生のボアは体長1メートル以上はあるから小柄だ、ただ駆け出しの冒険者にはしっかりとした戦術で挑まないと大怪我をする、特にあの牙は突進中に刺さると肉をえぐられる。


 更に噛み付かれたら肉を千切られる可能性もある、タンク役は必須だろうな。


 ボクが動かないで思考している間にダンジョンボアは突進をしてくる、だがボクも別に油断している訳ではないので短槍の石突で頭蓋をかち割ると、ダンジョンボアは少しふら付きその場に倒れ淡く発光し始める。


 その後は何時ものように解体・収納・ドロップ品回収の流れで後処理をした。


 ダンジョンボアドロップ品一覧:魔石・牙・毛皮・肉ブロック,レア品はダンジョンボアの姿肉のみ、あまり多くない様にも思えるがボクの感覚がおかしいだけで、一般常識ではそもそもこんなにドロップはしないのが普通である。


 そう結論としてボクがおかしいのだ、しかしこの時のボクは比較対象がいないことで何処までが常識の範疇なのかが分かっては居なかった、でも言い訳をしたい!


 アーザルトお父様の資料にも冒険者ギルドの資料にも鑑定の結果にもそんな事は一文も記載されていなかった!


 結論ボクは悪くない!


 まあ改めて確認すると一般的なドロップは確定で魔石、運が良くて50%で何らかのドロップ品、更に運がツイていて複数ドロップ、神がかってツイているとレアドロップにお目に掛かれる。


 そうボクが異常なのだ、2階層でボクを拐かそうとしたおデブ君はその事を知っていたから強引に仲間にしようとしたのだ、でも普通にアウトです、通報します(物理)。


 そうしてコソコソとダンジョンボアを狩りつつ隠し部屋へと移動する周囲には他のパーティーの反応は無し、周囲の壁を慎重に調査しながら開閉の仕掛けが無いのかを調べる。


 半周ほど回ったところで隠蔽偽装が施された先端ぽっちを発見・・・この仕掛けはこの辺の冒険者には発見できんぞ、意地が悪いなと思いつつもボクが初物かなとちょっと嬉しい。


 何せ嘘か本当か初回は特別だとそれぞれの資料に書かれていたので少し期待する。


 ぽっちをポチッと押し込むと、石壁が少し後方へ沈み、次に横へスライドし空間が広がる、四方5メートル程の空間に宝箱がちょこんと鎮座していた。


 宝箱を視認したボクは直ぐには部屋に入らずに周囲の調査をする、何せ初めての隠し部屋であるならば初見殺しの罠がある確率がある、ボクなら必ず仕掛ける「初見殺しは製作者の華だ!」と何処かのクリエイターが言っていた。


 ・・・おかしい? 罠が無い・・・舐められている? それとも設置し忘れた? ・・・ふぅ、仕方が無いな帰りにボクが非殺傷系の罠を張っておこう。


 次は宝箱だが、やはり施錠も罠も無い木製のただの箱、モンスターの反応すら無い、最低ランクの宝箱だ。


 宝箱のランクは木・鉄・銅・銀・金・虹の六種類とされている、但し虹の関しては文献のみで信憑性が疑われている。


 危険性もないので宝箱を開ける、ボクとシャイニスで覗き込むと箱の中身は革袋1つと薬瓶1つが入っていた。


 まずは中身を取り出したのち、宝箱を持ち上げて引っ繰り返して激しく振ってみたが何も起こらなかった。


 取り敢えず宝箱は記念に大籠の中に押し込む、革袋の中身を確認してみるとダンジョン金貨が5枚入っていた、この金貨は共通硬貨として使用出来る、しかし初心者いや下位ダンジョンで金貨5枚は破格だ。


 パーティー人数によっては殺し合いになるかも、それだけ金貨の価値は高いのだ、ボクはシャイニスがいるとはいえソロだから関係ないけど人間関係は怖いからね。


 残る薬瓶は下位回復ポーションだった、但しダンジョン産なので最高品質の無期限型だ、消費期限を考えなくても良いポーションなので高値で買い取って貰える。


 この世界ではポーション等にも消費期限がある、品質の良いものほど消費期限は長期になるが、それを可能とする薬師や錬金術師は少数でほぼ何処かの国や組織に囲われている、その為通常の市場に出回る事は殆ど無い、何せ地位や金のある者達は国や組織から直接売買するからだ。


 なので期限無しのポーションが欲しいのであればダンジョンで手に入れるしかない、そしてポーションが入手出来るのは最低でも下位ダンジョン11階層以上からである。


 でも材料さえあればボクは期限無しのポーションを作る事が出来るのは内緒だ、アーザルトお父様の施設でも簡単に作っていたからそんなものだと思っていたが、市場調査したときにあまりにも品質が低くて驚いた、一時は結託して品質を一律にしていると考えたけれど、そんな事は無く一般の薬師と錬金術師の技量が低いだけだった。


 現状の一流と呼ばれている方達でも消費無期限のポーション・魔法薬を作るのは無理というか不可能らしい。


 アーザルトお父様は片手間でホイホイ作っていたけれども、そこまで今の技術は低下しているようだ。


 あっでも例外として妖精種と呼ばれる人族の薬師や錬金術師は今でも問題なく作る事が出来るらしいが、一部の人種としか取引をしていない為やはり市場には出回らない。


 それでも一般向けでは無いが時間遅延や時間停止のマジックバッグや収納系スキルに保管して置く事で消費期限を延ばす事が出来る。


 貰う物も貰ったので、しっかりと非殺傷系に罠を仕掛け隠し部屋を後にする、ついでに隠蔽偽装されていた部分を解除して多少のトレジャースキルがあれば気付けるように細工をしておく、気付いてくれると嬉しいな。


 きっとみんな笑顔になるだろう!(笑気ガス罠:モルセニアでの笑気ガスで麻酔効果は無く、一定時間笑いが止まらなくなる、状態異常笑気となり言葉を発する・集中するスキル・魔法が使用出来なくなる)

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