第31話 いざ初心者ダンジョンへ。
スキルの検証で一夜を過ごし、夜明けと共に初心者ダンジョンへと向かう事とした。
いや~、『ワールドストア』の品揃えがえぐかった、通常であればダンジョンの奥深くに眠っているはずの魔剣や神々の試練を超えて与えられる聖剣、はたまたモルセニアの伝説上のマジックアイテムが金銭や物々交換で入手可能なのだ、まぁ価格は最低でも金板・大金板・ミスリル貨が必要になるが、危険を冒さずにこれらが入手出来るのは異常だ。
検証ついでにスキルオーブを検索してみたらレアスキルまでなら売買可能だった、更に素材に中にスチールツリーも有ったが加工された状態の物は販売されてはいなかった、どうやら何でも欲しい物を売っているという訳ではないらしい。
検証の結果を頭の中でまとめている内にウルグドの外へと出ていた、門外の周辺には各ダンジョンを往き来する馬車が停留しており乗車する客を待っている。
下位・中位・上位ダンジョンの定期馬車は数台並んで客待ち中で満員になった順に出発している。
それに比べると初心者ダンジョンの定期馬車は2台並んでいるが、まだスカスカだ集まりが悪いようだ。
冊子に記載されている各ダンジョンへの距離は初心者ダンジョンは馬車で30分程歩いて1時間程度の距離と記してある。
各ダンジョンはウルグドの外に存在し、それぞれの丁度良い移動距離の場所に街を置いている。
定期馬車は満員になるか出発時間になるまでは動かないので、ボク達は待つのも面倒なので走っても目的地に向かうことにした。
初心者ダンジョンは道なりに進めば辿り着けるので安全走行で向かうことにする。
ボクは走りながら初心者ダンジョンの注意事項を反復しておく、大したことではないが各ダンジョンとの大きな違いは、荷物持ちと呼ばれる子供達の存在だ。
定期馬車であれば初心者ダンジョン前の冒険者ギルドが管理する出入受付付近で停車するが、徒歩での移動になるとダンジョン付近の路上で進路妨害気味に荷物持ちの売り込みに来る子供達が待ち構えている。
元々初心者ダンジョンは通常の冒険者で有れば一度訪れたら、もう用のない場所なので常連は限られている、しかしダンジョンに入りたい子供達はそれ以上いる、つまり初心者ダンジョン初回様の奪い合いだ!
もちろん冒険者からすると事情を知らなければ子供など邪魔でしかない、地方の独自ルールなど知ったこっちゃ無いと突き放すことは可能だ、だがそこは子供だこちらも冒険者の事情など知ったこっちゃ無い、冒険者ギルド職員が見えない距離の場所で強引に嘘を織り交ぜ荷物持ちとして同行しようとする。
そして最近はそういった行動が目立つ様になってきているそうだ、あまり大人達を甘く見ると手痛いしっぺ返しがくると思うけれど・・・ガキだもんなぁ、理解出来ないだろうきっと。
そんなことを考えながら進む先にスタンバっている子供の集団があった、5人の男の子?身長が既にボクよりもある、きちゃない身なりの如何にも悪ガキと言った風貌の子供達が進路を塞いでたむろしている。
コンビニ前でだべっているDQNみたいだと一瞬思い出し、前世での迷惑行為に腹を立てつつシャイニスに指示を出す。
「シャイニス・・・抜けていくよ!」
「ぴい!」
ボク達は互いに速度を上げ道を塞ぐ
「おい! そこの~~~~~~~~~~?」
リーダーっぽい子が口上を述べている間に速度を上げフェイントを織り交ぜながら間を抜けて通り過ぎて行くボクとシャイニス、呆然とする子供達・・・彼らはお互いに顔を見合わせた後に虚仮にされたと思い顔を真っ赤にさせて追いかけてくる。
後ろの状況を確認しつつまだまだ前方で待ち構える悪ガキ共を見据えボク達は走り続ける。
ボク達の戦いはこれからだ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「途中から見ていたが、キミ凄いな!」
ダンジョン受付のギルド職員さんからお褒めを頂いた。
「はぁ、しかしここ最近は酷いな、悪ガキ共が調子に乗りすぎだ。」
「えっと、ボクの容姿が侮りやすかったんでしょうね」
ギルド職員のおじさんにギルド証を見せながら返答する。
「それでもだ、領主様と冒険者ギルドの温情で見逃されているのを理解せずにましてや履き違えている態度などもっての外だ、そろそろ引き締めが必要かな」
物騒なことを言い始めるギルド職員のおじさん。
「今彼らが厳罰されたらボクが逆恨みされそう」
「あー、無くは無いが結構前から問題になっててなぁ、近々短期の立ち入り禁止令が出る予定なんだ、状況次第ではあるが、今も明らかに拒否されたのにここに追いかけてきているだろう、周りの子供達も止めようとしていないし、大人を舐め始めている兆候だ、ここで引き締めておかないと非常に危険だ」
「まぁあの調子だったら資格を得ても直ぐ死にそうですね」
「・・・そう見えるかい、ああっもう良いよ、確認は済んだから、一応助言として1階層から3階層は横道を無視して真っ直ぐ階段を目指すことをお勧めするよ、横道はこの街出身のFランクの連中が身内の子供達を荷物持ちに連れて狩り場として占拠しているからね必ず揉める。
そんな権限など無いのだが、初心者ダンジョンに挑戦するのは食い扶持に困っているFランク連中か、始めてこの街のダンジョンに挑戦する余所者ぐらいだ」
「えっと確か初回攻略時にのみ宝箱にスキルオーブが入っているそうですね」
「そうそう、ノーマルスキルだが無視する理由はないだろう、まあどんな仕組みかは分からんが15歳以上からでないと駄目らしいがな」
そんな世間話をしている間に後ろの集団が距離を詰めてきたのでボク達はおじさんに軽くお礼を言いさっさと初心者ダンジョンに歩を進めた、そして後ろでは。
「おら! 悪ガキ共! これ以上問題起こすと明日から全員出禁にするぞ!」
ギルド職員のおじさん一喝すると皆蜘蛛の子を散らすようにその場から離れ始めるだけではなく、静観を決め込んでいた子供達が問題を起こした子供達へと詰め寄っていた。
自業自得とはいえ言い訳頑張ってね。
モルセニア初のダンジョン、始めてっていつもドキドキするよね、慣れると忘れてしまうけれど、今はそのドキドキを楽しもう。
初心者ダンジョンのタイプは遺跡型、綺麗にそろえられた石造りで統一されている非常に歩きやすい。
一階層に下る階段の手前左側に横道が一本、転移部屋へと続く道だ、今は用がないのでスルーする・・・なんちって。
こほん、転移部屋は転移登録可能階層とダンジョンボス攻略後の転移陣でのみ使用する場所だ、初心者ダンジョンではダンジョンボスを討伐後に使用出来る。
階段をゆっくり通り一階層へと辿り着く・・・どうやら不備は無いようだ、ダンジョン探索において一つ懸念があった。
それはシャイニスの蹄だ、整えられた石の床では滑って歩きづらいのではないかと心配していたが、以前のシャイニスであれば魔法あるいはマジックアイテムで補助が必要であったが、進化したシャイニスには杞憂に終わった、スキル『天翔』で超低空状態で移動している。
ボク同様にシャイニスにも偽装アクセサリーを使用しているので、浮いているのがバレてしまうと変に勘ぐられ探られる恐れがある。
しかしシャイニスのスキルコントロールは達人の領域だ、ボクでなければ見逃してしまうほどの、これなら安心して先に進める。
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