第30話 必ずしもお礼が良いモノとは限らない。
今ボクは宿で頂いたモノを確認していいる、まずはユニークスキル。
『ロストアーカイブ』:過去現在で失われた技術・製法・術式等が全て記録されたデータバンクへアクセス出来る。
アクセス後に再現も可能、ただし未来に関してはアクセスすることは出来ない。
微妙だ、このスキルがお礼というのは少しおかしい、悪いスキルでは無いむしろ有用ではある、失われた叡智に触れることが出来るのは素晴らしいが、同時にトラブルにも成る。
『真実の書№9』:モルセニアの過去から現在の歴史を閲覧出来る神聖書の9冊目、未来については閲覧出来ない。
世界に真実を知ることが出来る本型の情報端末、祭器や神具の類いと言える、コレを渡された人達は頭を悩ませただろう、人類の悪行がこれでもかと記載されていた。
更に質の悪いことに真実を閲覧してしまうと内容をねじ曲げたり虚偽の事実を伝えることが出来なくなり、そして伝えた真実を他者がねじ曲げたり、虚偽の事実を伝えようとすると強烈な不快感と共に、それら嘘を粛正しようという強い使命感に捕らわれ、「殺してでも粛正する!」と対象に襲いかかる位に汚染される。
ボクの9冊目にはそんな機能は無いけれどね(確認済み)。
でだ、何故この2つの説明をするかと言うと、世界樹を消滅させたのが人族の仕業で、その原因となった術式がボクの頂いた『ロストアーカイブ』に記録されていた・・・ばっかじゃねぇのぉ!
ナンテモン寄越すんじゃぁー!
と心で叫んだら、「真実の書」から回答が来た、質疑応答出来るのか!
回答:ユニークスキルはダンジョンの宝箱や神の贈り物・報酬として保管された空間からランダムに排出されます。
本来であれば特定のユニークスキルを選別して与えることは出来ないことになっていますが、『ロストアーカイブ』につきましては満場一致で人類には早すぎるという見解になりました。
モルセニアの人類だけではなく、今は落ち人もいるため歴史を繰り返すだけではなく、より悪い方向へ進む可能性の方が高いと
意見がまとまりましたので、『猫の手』所属のナイヤ様にお礼兼そのまま(死後)持ち帰って貰おうという次第です。
ユニークスキルは一つしか存在せず、保有者が死亡した場合保管ボックスに戻り、またランダムで何処かの誰かに与えられます。
問題の『ロストアーカイブ』はこの数千年の間、排出率を最低限に下げておりましたがそろそろ留めるのも限界でした、一度出現したユニークスキルは破棄出来ませんのでこの際、信用の出来るナイヤ様にお渡ししてそのままお持ち帰りして頂こうと言う次第です。
ナイヤ様でしたら間違った扱いはされないと信じております。
・・・色々とぶっちゃけた上に長いわ! 要は優れたスキルではあるけれど人類には扱いきれないからボクの『メモリーBOX』行きにして欲しいと・・・危険物回収か!
しかし世界樹の真実を知ってしまった人達はそれでも破壊の力を欲するのだろうか?・・・・・・なーんちゃって!
答えなんて分かっているだろう、争いの果てにそれ以上の事をやらかすだろうよ。
ボクも数回見てきたから・・・初期の頃だったからあの頃は凹んだなぁ、ただその後我が女神に溶けるほどに慰めて貰ったけれど、あれはえがった! すっかり癖になった。
後はコレか、『落ち人』又は『渡り人』呼び方は様々だがここ最近は落ち人で定着している、作為的な呼び方ではあるが要は異世界から転移してきた人々のことだ。
しかも一方通行で帰ることの出来ない事象、アーザルトお父様の資料にも落ち人については記載されていたけれど、あくまで異世界の訪問者と言う程度だった。
ボクの元々の知識と「真実の書」から得た情報でまとめると、これは期間限定の転移であり世界の流れからは一瞬の出来事になる。
説明するとモルセニアと別の世界が一時的に重なり合い、重なった接点から別世界の人間を吸い上げてしまったいる状態だ。
モルセニアからは代わりに魔力が流出して別世界で世界規模の異変が起こっている。
そして更なる問題はその別世界は平行世界の地球らしい、向こうはダンジョンフィーバーだってさ90年前から、モルセニアは900年前から異世界人が現れている。
時間の流れが10倍ほど違いモルセニアは後100年、地球は後10年この状態が続くらしい。
平行世界の地球側は約100年で3、000人程の行方不明者が出る、モルセニアでも1年間で2~3人の落ち人が現れるとされているが記録に残る事は殆ど無い。
900年前の初期には殆どの異世界人が対応しきれずにモンスターや原住民(野盗)等の餌食になっている、一部生き残り記録を残している者もいる。
平行世界の地球にダンジョンが出現してから本格的に対策されたのが20年ほど経ってからで、流れ込んだ魔力が世界中に満ちるまでダンジョンも成長せず、それまでは殆ど気付かれていなかった為、本格的にダンジョンが動き始めると同時に20年間徐々に蓄えられたモンスターがダンジョンから溢れて大混乱が起きた。
もちろん無警戒だったという訳でもなかった、その沈黙の20年間に世界各地で未確認生物が多数目撃されて秘密裏に捕獲もされていたが、出所が不明でダンジョンまでに調査が行き着かなかった。
そうして激動のダンジョン時代を乗り越え10年掛けてダンジョン対策も進み、ダンジョンが有用な資源として世界に浸透し始めた。
ただ全ての国が成功した訳ではなくモンスターが溢れた際にそのまま飲み込まれた国もあった、幸いに日本は無事に乗り越えてダンジョンを上手く資源として利用している国の一つとなっている。
ダンジョンの出現、モンスターの襲撃、そして人類の新たなる力『スキル』が発動することで世界の情勢も大きく変わった様だが、ボクには関係ないので割愛する。
要はその頃から異世界転移した落ち人はスキルをしっかりと認識していて、モルセニアでも適応し始めていた。
異世界人の転移時に必ず与えられる最低限の必須スキル『言語理解伝達』『下位収納』『下位全鑑定』、そして適性に応じた「転移特典スキル」に平行地球で身につけたスキルを持ってモルセニアに降り立つ。
降り立つ場所も様々で、人里であれば運が良く、モンスター蠢く秘境の奥地となれば死を覚悟しなければいけない、実際に生き残り自伝に書き残した落ち人もいる。
落ち人の対応も様々で手厚く保護する国もあれば、腫れ物扱いする国、利用するだけ利用し不要となれば始末をする国、絶対悪として国を挙げ公開処刑した国、900年の間に様々な対応が取られた。
もう既に滅んだ国もあるが、今でも健在な国は変わらない対応をしている。
・・・モルセニアの神々にとって異世界人とは扱いに困る代物の様だ、何せレアスキルやユニークスキルを高確率で転移時に引き当てるだけではなく、モルセニアの人種に比べた成長幅が大きくそれにより力を付けると増長して問題を起こす者が多かった(神々にとっては些細なことだが人々にとっては傍迷惑な問題)。
ただし全てがそうであった訳ではなく、本人の資質にもよるが情操教育をしっかりと受けていた者は比較的穏やかで協調性があった、後に英雄や勇者などと呼ばれる者達だ。
そのような訳で結論として『ロストアーカイブ』はモルセニア人にも異世界人にも渡せないユニークスキルと言うことだ、ボクがこのまま死後モルセニアから持ち出せば、再出現するにしても5,000~10,000年は掛かるほどのスキルなので暫くは安心出来るらしい。
でもその間に別の誰かが似たような術式を作り出さないだろうか? ・・・一から作り出すのと見本があって模倣するのとでは完成する確率が違うのかな? う~んまぁなるようになるだろう。
まぁボクからするとお礼と言いながら危険物を渡してくるここの神々は良い根性をしていると思う。
さておまけではないが選択可能と言われた残りのスキルギフトは『ワールドストア』を選んだ。
〈ユニークスキル〉ワールドストア
・金銭や価値のある物を用いて全世界の品と交換出来る。
・効果はスキル習得者が存命の間のみ有効。
皆さんお馴染みの売買スキル、本来であればモルセニア全世界での解釈になるが、今は平行世界の地球とも繋がっている状態、ボクはもしやと思い「君に決めた!」とこのスキルを選択し確認した。
アタリだったよ、平行地球の品も買うことが出来る! 微妙に品名の違う品や全く知らない品もあったけれども「大丈夫だ問題ない!」コレで在庫が増やせる。
ボクは結構自覚はしているが収集癖がある転生中の各世界で色々と集めて持ち帰ってくるのだ、メモリーBOX内にある各世界で習得した収納系スキルには死蔵された思い出の品が詰め込まれている(たまに使用してり飲食したりする)。
おっ物々交換も可能のようだ、余し気味の小さな魔石をザラザラとスキルの受け入れ口に投入し、パネルから商品を選択し物々交換を選択し決定っと。
ボクの手前に魔方陣が出現して小型の段ボールがにょきっと現れる。
魔方陣は段ボールはそのまま床にポンと落として消える、ボクは段ボールの境目に指を押し入れガムテープを剥がさずに力任せに開く、蓋を開けた先にはやきそばパンと缶コーヒー微糖が入っていた。
・・・なつかしぃ、もぐもぐとやきそばパンを頬張りながら合間に缶コーヒー微糖を飲む、前世で企業戦士をしていたときの朝食に定番だったなぁ、18年の企業戦士と1年の魔法
今世は休暇がてらのんびりと過ごしたいなぁ、あっモルセニアの品も販売しているな・・・聖剣とか魔剣が販売されてる、良いのかコレは? 何気にこのユニークスキルもヤバいな、でも販売系スキルは1代限りで使用出来なくなるモノが多いから問題は無いか、ボクの前世で得たスキルも死亡と共に効果を失い「記念スキル」になったから1つを除いて。
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