第28話 事前の準備は大事です。
冒険者ギルド受付前では明確に並ぶ列の人数差が出ている、通常受付は2カ所以外ほぼ均一で、ここからは受付嬢の姿が見えない(ボクの身長が低いため)が、残りの2カ所は1つが長蛇の列でもう一つは今0になった。
理由はあの受付だけが受付嬢では無く受付おっさんだからだ、しかも強面の厳つい中年だ。
まあ並ぶんだけれどね、ボクがおっさんの受付カウンターに向かうと周囲の冒険者達が「マジかアイツ」と驚いた顔をする。
「スミマセン、今日ウルグドに来たばかりなんですけれどお話聞いても良いですか?」
ボクはスマイル0円で和やかに笑顔で話しかける。
「え?・・・ああスマンな、そうか初めてか良いぞ、どうせ時間はいくらでもあるからな、だがまずは冒険者で合ってるか? 新規登録では無いよな」
「はい合っています、これがギルド証です」
「どれ確認する・・・問題ないな、ようこそ冒険者ギルド・ウルグド支部へ、受付のトトリアだ」
「Eランクのナイヤです、ヨロシク!」
「おお元気が良いな、良いことだぞ、若いのはそうじゃ無いと舐められるからな色々とな、で何が聞きたい?」
「先ずはダンジョンの情報はどこで調べられるのか、ダンジョン攻略のルール、あとウルグド支部の独自ルールもあれば教えて欲しいです、最後はご飯の美味しい宿屋も知りたいですね、あっ出来ればテイムモンスター可の所で!」
「うむ、ナイヤは何処の支部から来た?」
「イスラート支部で登録してEランクの昇進してからウルグドを目指して来ました」
「あそこはガキ共の扱いが他所よりずっと良いからな、他所に行くと扱いの差に面を食らう注意しておきな、ウルグドは見習い制度は無いが14歳からの登録は可能としている。
ダンジョンの情報は2階に資料室があるからそこで調べな、分からないことは管理人がいるから聞くと良い。
ダンジョン攻略のルールについては、この冊子を初回無料で渡しているからしっかりと読んどきな。
後はウルグド支部の独自ルールだったな、ダンジョン関連以外は他所とほぼ同じだ、希にルール詐称をする奴がいるがいるがその際はギルド証の提示とギルドへの確認をしてくれ、基本ルール以外の怪しいものであれば従う必要は無い。
ダンジョンについても冊子に記載されている事は守ってくれ、「知らなかった」は事前にダンジョン前の受付で確認されるから通らないからな。」
大方伝え終わったトトリアさんは少し考え込み話しを再開する。
「おそらくナイヤが始めに挑戦するのは初心者ダンジョンだと思うが、あそこだけは少し特殊でな知らないと面倒な事になる時がある、特にナイヤは見た目で侮られやすそうだからな」
「まぁ、自覚は有りますから運搬用テイムモンスターと何時も行動しています」
「それでもちょっかいを掛けるバカは居るからなぁ、ただ今回の場合は冒険者じゃ無く、14歳になっていないガキ共なんだわ」
「子供? 見習い制度はさっき無いと言ってなかった?」
「ああ、ウルグドの規模と特殊な状況だと管理出来なくてな、まぁギルドを介さずにガキ共で見習いの真似事はしているがな、お陰で問題も起きる。
だがその辺りは今回はどうでも良い、問題は初心者ダンジョンの受付入口に
本来であれば下位ダンジョンに許可のない者が入ることは出来ないが、暗黙の了解で荷物運びとして冒険者に同行する事が初心者ダンジョンでは見逃されている。
事情としては下位ダンジョンでありながら階層が5階層までしか無く、モンスターも手頃で条件も良いといった理由で食うに困ったガキ共を3階層までなら荷物持ちとして、1パーティー上限5人まで同行出来ることとなっている。
ただし必ず冒険者の同意があることが条件だがな、勝手に同行しようとすれば入り口前の職員に止められる」
そう言ってボクをじっと見るトトリアさん・・・うん何と無く理解した。
「どんなに若くてもパーティーを組んだ冒険者を相手に、バカな行動をする子供は極一部を除いては居ないけれど、ボクはその極一部以外でも侮られる可能性があると?」
「・・・察しが良くて助かる、取り仕切っている数人の年長者はいるがな、反りが合わない連中が別々のグループで売り込んでくる。
まぁそこのグループから冒険者になった先輩が後輩の面倒を見て荷物持ちに連れて行くが、問題はそこから溢れた連中だ。
周囲に馴染めなくてそんな状態な奴から、問題が有りすぎて孤立している奴もいる。
まあいくら粋がっても所詮は子供だ、ギルド職員が在中している目の前で問題は起こさないはずだたぶん、何せ目立つ問題を起こせばしばらくの間ダンジョンへの出入りを禁じられる。
元々この暗黙のルールもダンジョン伯とギルドマスターがお目こぼしで見ていないフリをしてくれている事だからな。
ガキ共もその辺を理解している奴はしっかりと徹底しているが、理解していない奴らが問題を起こす」
「問題を起こした者だけの処罰では無く、連帯責任って事?」
「そうなるな、立場の有る人間からの施しにケチを付ければ、
余っ程余裕のある冒険者にまで上り詰めたのなら別だが、そこまでに成ったらもう底辺の事なんぞ見向きもしないだろう」
「冒険者ってそんなものでしょ、栄光か脱落か見極められる者だけが登っていけるって、酔っ払った先輩冒険者が得意げに力説していました、そして今回手に入れたお宝を売って故郷の幼馴染と結婚すると、まぁ次の日の早朝に身包み剥がされて裏道で半裸で死にかけていましたけれど、それでもコレが冒険者だって言ってまた何処かで冒険者を続けてます(前世の話)」
「命知らずだなそいつは、真似るんじゃねえぞ命あっての物種だ、若い連中の早死には気分の良いものじゃねぇ」
「ご忠告ありがとうございます、トトリアさん♪」
微笑みながらお礼を伝えると、一瞬の間を置いて強面が赤く染まる
「////そんなんじゃねぇ! 大人としての助言だ!」
うむ、照れ顔も怖いな、本当に外見で損をしているなこの人、根は良い人みたいだし。
「ごほん、よそ者のナイヤはガキ共には気を掛けずにダンジョンに向かいな、寄って来たらキツメに脅して追い払いな面倒を見る必要なんて無いからな、その役目はこの街の若造共がやることだ」
そう言いながら懐から煙草を取り出し、『リトルファイア』と呟き煙草の先端に大豆粒ほどの火球を作り出し火を付けて一服し始める、その光景に前世の魔法中年世界では非難の的になるなとつい思ってしまい視線を隣に向けると、笑顔を引きつらせた受付嬢がトトリアさんを心の中で睨み付けていた(様に見えた)。
ボクは煙草吸わないから関係ないけれどね(猫様によろしくないから)。
トトリアさんにお礼を伝えてその場を後にする、まだ視線を感じるが悪意がないのでおそらくトトリアさんとまともに話していたからだろう。
あの手の人は恐れられてはいるが一部からは慕われているとボクの経験上の憶測が囁いている、まぁ適当だけど。
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