第22話 帰ってからも冒険です。


 齢0歳でママになった、ボクはただ『ハイメガマナ粒子砲』と『Aカップ・スマッシャー』を打ち込んだだけなのに何故こうなった?


 そして現在ボクの手元には、寵愛の印として輝光樹の枝と葉に果実と分体の苗木を貰った。


 どれもキラキラとしていて綺麗だなぁ・・・・・・。


 ヨシ!現実逃避終了、珍しい物があったら収集してシャイニスの所まで戻ろう。


「じゃあボクは行くね、落ち着いたらまた会おう」


 幹の触れ、別れと再会の挨拶をしてその場を去った、輝光樹がサワサワと枝を揺らし見送ってくれた。


「ぴい!」


 ボクの姿を見つけると文字通り飛んで出迎えてくれたシャイニスの首元を撫でながら。


「ただいまシャイニス、でもちょっと離れていてね」


 シャイニスと距離を取り、ボクは装備を全て脱着し素っ裸になると生活魔法の高圧洗浄を唱えて身体の高濃度魔力を散らす。


 ちょっと全身がヒリヒリするがサッパリした、脱いだ装備も輝光樹に向かう際に改めて着替えた新品で、高濃度魔力下でどのような性質変化が起こるのか実験的にいくつかの素材と共に汚染させてみた。


 今は全て収納に仕舞って後でじっくりと調べてみようと思う。


 このまま外気に肌を曝しているのも涼しくて気持ちは良いが誰かに見られると露出狂と勘違いされるのでインナーのみ新品にして何時もの装備に戻した。


 さてこれからボク達はスニーキングミッションを行う。


 イスラートに隠密で侵入して何食わぬ顔で冒険者ギルドで現在の情報収集と冒険者ギルド証の更新を行う、何せボクはもう15歳だから(年齢詐称)、その後はさっさと準備を済ませてイスラートを出て、ダンジョンで有名な『ダンジョン都市ウルグド』に向かいダンジョン攻略を楽しむつもりだ。


 その後は周囲を監視している斥候を遣り過ごし、厳重な警戒態勢のイスラート外壁を余裕で越え、無事に潜入を果たした。


 シャイニスにはしばらくマッドガーデンに身を隠して貰い、ボクは単身で冒険者ギルドへと向かった。


 冒険者ギルドに着いて早々、てんやわんやの大騒ぎだった、情報の整理に周辺への連絡、冒険者への仕事の遣り繰り、次々と告げられる報告に受付は魔窟と化していた、寝ていないであろう目に隈を作り書類を持って右へ左へ更に奥へと大忙しだ。


 もう少し落ち着いてからに用事を済ませようかなぁと考えていると背後から声を掛けられる。


「ナイヤちゃん? ナイヤちゃん! よかった! 無事だったのね!」


 振り返ると同時に顔面オッパイ固めを決められ身動きがとれなくなった、エルナさんだったようで、嬉しさのあまり抱きしめられた、本人も徹夜でナチュラルハイになっていたから行動が大胆になっていた。


 一部の男達から羨望の眼差しで見られていたがようやく落ち着いたエルナさんが、その状況に麻痺していた羞恥心が回復してそのまま空いている応接室へと連れ込まれた。


「・・・こほん、取り乱してゴメンね、でもここ数日行方が分からなかったから心配で、更にあの騒ぎが起きて街も厳戒態勢になってしまって、そのナイヤちゃんを見つけたらつい緊張の糸が切れちゃって・・・てへ!」


 かわいいなぁ、おい!


「でも無事で良かった、もしかしたらって、心配だったのよ」


「えっと、ご心配をかけました、ここ数日不穏な感じがしていたから姿をくらましていました、それで無事成人出来たのでギルドに向かおうとしたら・・・何だか大騒ぎだったので、何かありましたか?」


 とぼけながら質問をするとエルナさんは少し考えてから真剣な表情で説明してくれた。


「ナイヤちゃんこれから私が話すことは重要な話しですから最後まで聞いて下さい。

 今から約3日前に魔境の地で異変が起こりました。

 原因は不明ですが、冒険者ギルドを含む全ての各ギルドが原因究明のため領主様と協力をして動いています。

 そしてこれは今朝もたらされた情報で隣国を含む『滅びし聖地』に隣接している全ての国でモンスターパレードが発生しているとギルド総本部より連絡があって、今はその対応で街全体が大騒ぎになっているの。

 すでに街から避難する人達も居て西門は混雑しているわ。

 冒険者ギルドも騒ぎを静めるために冒険者に依頼を出しているわ。

 街の監視塔と調査に向かった斥候からはこちらに向かうモンスターの群れは確認されては居ないそうだけれど予断を許さない状況なの。」


 ・・・、ボクが静かにエルナさんの話を聞いていると、何かに気付いたように「ちょっと待ていて」と言いハーブティーを準備してくれる。


 鼻を抜けるハーブの香りに少し表情を綻ばせるエルナさん、彼女も不安なのだろう、ボクの話すことで自身も落ち着こうとしているのかむしれない、ハーブティーを飲み再度話を続ける。


「ナイヤちゃんはもう15歳になって成人しているから冒険者ギルドとしては自己判断で行動して貰うことになるし、優先的に保護することも出来ないから、この後Eランクのギルド証明証を渡すから、出来るだけ速くこの町を離れなさい。

 こんな事は言いたくは無いのだけれどナイヤちゃんは自分では目立たないように振る舞ってはいたけれど・・・結構目立っていたの、イスラートの地方冒険者ギルドルールで一応は守られてはいたけれど、成人してしまうと適応外になるから今が一番危険な時期なの、しかも街がこんな状態だから混乱に乗じて犯罪を犯す連中が必ずいるわ。

 だから私としてはこの状態を逆手にとって街から逃げることを勧めるわ」


 ・・・。


「ナイヤちゃん、逃げることは決して恥ずかしいことじゃないの立派な戦略だから、今は貴方の安全のために逃げてここも安全とは言えないから、そしてナイヤちゃんがもっと力を付けたら、また会いに来てくれるとお姉さんは嬉しいな」


 そうにこやかに微笑みウインクするエルナさん。


「エルナさん、ご心配頂きありがとうございます。

 ボクもエルナさんの提案に賛成です、少し予定が早くなりましたが、ダンジョン都市ウルグドに向かおうと思います。

 旅の準備は結構前からしていたので用事を済ませ次第・・・。

 街を出ます、エルナお姉さん今までありがとう!」


 そう笑顔で告げるとエルナさんは、今にも泣きそうな顔でボクを抱きしめる、今までに無いオッパイの圧と頭に落ちる涙を感じつつボクは静かに目を閉じた。


 その後、落ち着いたエルナさんがEランクのギルド証明証を渡してくれて、目立たないようにギルドの裏口に案内してくれた。


 裏口にはムビナさんも待っていて、「餞別だよ」と言いムビナさん特製の干し肉を渡された。


 その後、お礼と少し話をした後二人と別れる。


 エルナさんに渡された、この先冒険者として早めにやっておくべき事、注意する事を書かれた冊子を懐に入れ西門を目指して進む。


 認識阻害を付与してある外套を羽織り顔が見えないように街中を抜けていく、所々にガラの悪そうな連中がうろついているが、ボク絡みの人達は数名だった、チートスキルはホント便利だ、索敵でポンポン識別出来る。


 ボクを印象付ける装備はしていなかったのと認識阻害のお陰でスムーズに西門へと辿り着けたが、門の前は結構混雑している。


 ・・・索敵にも悪意の反応が西門の内にも外にも集まっていた。


 特にボクと同じような体格の人物にチェックが入っている様で、道中にも待ち伏せがいるのかな?と嫌気がさした。


 そんなにボクのシャイニスが欲しいのか? この先認識阻害や認識偽装を施した装備を用意した方が良いかな。


 そんなことを考えながら順番を待っているとようやくボクの番になり門番の衛兵にギルド証を見せ西門を通過した。


 買収されている衛兵は別の相手に意識が向いていたので楽勝だった、まぁそう仕向けたのだけれどね。


 西門を抜けて混雑している街道を暫くは歩調を合わせて進み、敵対反応がなくなったのを見計らって、脇道にそれて街道から見えない位置へと移動する。


 冒険者ギルドで買った地図とアーザルトお父様から頂いた地図を比較して目的地を割り出す。


 どうやら昔からダンジョンが在った場所らしく、管理する国が時代ごとに変わるだけで位置に変化はないようだ。


 場所の確認も出来たし、寄り道しながらのんびり行くかな。


 ボクの冒険はこれからだ!

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