第16話 閑話 気になるあの子?
ナイヤがエルナに連れられて執務室から退室したその後、残された男3人はそれぞれでため息を吐くと、サーペスがパルムに話しかける。
「パルム、いくら娘が可愛いからって公私の区別は付けろよ、エルナは少しあの嬢ちゃんに傾倒しすぎだぞ」
「ああっ分かっている、でもな父親ってのは娘は可愛くてしょうがないんだよ! おまえだって5歳の娘の話になると鉄仮面が溶けるだろうが!」
「なっ、おっオレは公私の区別はちゃんとしているし、娘が成人しても線引きはしっかりとする!」
すると、パン! パン! と手を叩きファルが仲裁する。
「はいはい! 娘談義は後にして今の事を話しますよ!
で? お二人のナイヤ嬢への見解は?」
まずはサーペスが見解を述べる。
「白だ、あくまで被害者であってギルドに不利益をもたらす人物では無い、ただ見た目とは違い年相応とは思えない落ち着きがあるが、ランクと実力に違いがあるのは希にあることだ、ただ時折りオレを労う様な目で見ているのが気になったぐらいか」
「ああ、ナイヤ嬢は此方の役割分担に気付いていたようですよ、私にも同じように気を遣われていました、まるで年配の方に気遣われている気分でしたよ・・・長命種ではないですよね?」
そんなファルの疑問にパルムが答える。
「ナイヤくんは間違いなく人間の14歳だ、あと一月で15歳になるが実際成人だと言われても疑われる容姿ではあるが、オレも森で本人に聞いたときに一瞬時が止まった、資料で年齢を知ってはいたが本人を直で見てしまうとどうも年齢の認識が下がってしまう」
「ああそれ分かるわ、オレも役割上怖い幹部を演じているが、久々に心が痛んだ、そのあと更に労う様な眼差しになんかその良くは言い表せないがもう死んだ婆ちゃんに『頑張っているね、ご苦労様!』と褒められた様な幻影が見えて泣きそうになった」
「だから途中から黙っていたのですね」
呆れる様にファルが言う。
「しかし、もう直ぐ15歳ですか・・・あの見た目では立ち回りにもよりますが、損も得もしますね・・・まあ杞憂でしょう。
ナイヤ嬢はきちんと使い分けているようですし、それよりも知っておきたいのは彼女の素性ですかね、冒険者にとっては関係なくても、ギルドとしては対応が変わりますから・・・お父様、貴族ですかね?」
「貴族で無くとも上流家庭ではそう呼ばせているだろう、ただ『魔境の地』の素材を用意出来る人物に心当たりが無いのだが、パルムやファルはどうだ?」
「オレにも心当たりは無い、まずこの数年で噂にすらならないのがおかしい、それだけの素材を集めたのであれば必ず噂になる。
但し此処だけで活動していたらという条件付きだがな」
「他所の国でなら可能ということですね、『滅びし聖地』は多数の国と隣接していますからね、可能性はありますし、ナイヤ嬢の言葉を信じるのであれば、隠者の様な生活をしていたようですしかなり腕の良い御仁だった可能性がありますね」
「それどころか、何らかの理由で姿をくらました、有名人かもしれないぞ、名前を隠す辺りはんざ・・・いや、冤罪もあるしな・・・憶測でいうことじゃないな、すまん忘れてくれ」
「オレも似た様なことを考えたが、本人やそれ以外でも言うなよサーペス」
「サーペスはたまに失言しますからね、また奥さんや娘さんに怒られますよ」
「それは勘弁して欲しい、娘に10日間も口をきいて貰えなかったのは今思い出しても辛い!」
はははっと談笑する3人だが、すっとパルムが真剣な顔付きでファルに尋ねる。
「ファル、言いづらいかもしれないが聞かせてくれどうだった?」
「・・・嘘はありませんでした、しかし、いやあり得るのか?」
「?、どうした何か気になるのか」
「嘘は感知しませんでした、と言うよりも全てが真実だと感じました、今までこんな事は無かったのにそうだと思ってしまった、私のスキルが誤魔化された? すみません、今になって自信が持てなくなりました。
今まで相手にして来たどの人物にも所々に嘘や誇張はありました、そんな些細なところも感じ取る自信があったはずなのに、ナイヤ嬢に対してはスキルが全て真実だと判断しました・・・何故今まで疑問に思わなかった?」
「おい? ファルそれはナイヤくんが何らかの方法でファルのスキルに干渉したと言うことか?」
「・・・分かりません、対防護用のマジックアイテムは常に装備していますし・・・今までに無い体験なので疑心暗鬼になってしまいますね、ナイヤ嬢が清廉潔白で純真無垢な清い乙女ならば問題の無い結果なのかもしれないのですが、我々のいる日常にはそのような方いませんでしたので判断に困ります」
ああっ! と納得する2人、生きていた世界が弱肉強食だったので素直な人物の会ったことが無いのだ。
(もちろんナイヤは『メモリーBOX』の誤認系スキルで誤魔化しているがこの世界には無いスキルなので露見することは無い、もちろん爆発はしないよ!)
「箱入り娘か? あるいは教会関係か? ってことか」
「いやそれは無いな、森で出会ったときに感じたが自身の手を汚れることに忌避感を感じては居なかった、それどころか進んで仕留めたラッシュボアやウリボワを捌いてどう調理しようか考えながら歩いていたぞ」
「ただ素直で純真なだけと言うことなのか? 父親と隠者の様な暮らしをしていてそう育ったと?」
彼らからするとナイヤは得体の知れない珍獣に思えてしまうらしく、それから夜が明けるまで、あーでも無い、こーでも無いと不毛な話し合いが続いたが、納得のいく答えは一向に出なかったそうだ。
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