第15話 第3のサブギルドマスター。
冒険者ギルドイスラート支部のギルドマスターとサブギルドマスターに囲まれた、ボクことナイヤは今回の騒動について聞かされた、まぁボクはただ森に逃げただけだけど、冒険者ギルドはそうでは無かった様だ。
事の発端は、エルナさんがボクの装備の違和感に気付き、レアスキルを使用して完全では無いが装備の性能を見抜いてしまう、そして職務上仕方がなくギルマスへ報告をした、ギルマスもその報告を受けて良く考えたのち報告書は自身とサブマスの2名以外の閲覧を禁じ、ギルド内では4名のみしか知らない情報のはずだった。
だが問題が発生する、冒険者ギルドイスラート支部は本来はギルドマスター1名、サブギルドマスター2名の構成で運営していたが、2年程前に冒険者ギルド本部から左遷された貴族の4男坊を押し付けられる、しかも条件付きとはいえサブギルドマスターの役職付きでだ、左遷されたと言うことは、何かしらの問題を起こしたらしく、本来であれば只の職員として送られるはずが、本部のある派閥の幹部が貴族に気を利かせたのか? 4男坊から賄賂を貰ったのか? 条件付きのサブギルドマスターとして着任してきた。
相手の貴族が冒険者ギルド本部と良い意味で関係が良かったために、その4男坊の扱いに気を効かせ条件付きなら問題ないだろうと黙認されてしまう。
条件についてはサブギルドマスターの役職ではあるが、名前だけの名誉職の様な扱いで正式には“名誉サブギルドマスター”とされておりギルド内の幹部権限は殆ど無いものとなっている。
だがそれはあくまで権力の有る人達が言っていることで、4男坊とはいえ貴族に籍を置く者を平民のギルド職員が逆らえる訳も無く、権限のない役職をあたかも同等あるいはそれ以上の権限がある様に振る舞い、腫れ物扱いとなっている。
もちろんこのままでは冒険者ギルドの業務に支障が出るため、円満排除するための準備をサブギルドマスターのファルさんが担当していた。
そのため業務の負担が残りの2人に被さったがギルドの平和のためにと頑張ったそうだ、そのおかげで最近になり十分な証拠が集まったので、最後の追い込みへと進んだ。
ギルマスが領主と貴族関係への根回しに、ファルさんはギルド本部と4男坊の父親への交渉、残ったサーペスさんがギルドの業務を請け負った。
そのために4男坊への監視と牽制が疎かになってしまった、一応4男坊の子飼いに紛れてファルさん自慢の部下である冒険者達が紛れ込んではいたが、流石に冒険者ギルド内やギルマスの執務室まではついて行くことは出来無かった。
今回もちょくちょく冒険者ギルドに戻って来ていたギルマスへの報告であり、何時もの調子で報告書を保管していた。
そして事件の発端が起こる、サーペスも急な業務で数日の間、冒険者ギルドを留守にした、もちろん他の職員や役職持ちにも指示はしてあった。
まぁ役立たずの4男坊にも余計なことをしない様に釘を刺しては置いたが、あの阿呆は勝手に執務室に侵入して閲覧禁止書類を漁り、
そして子飼いの冒険者(ファルの部下も含む)に
既に証拠と根回しも済んでいた為、4男坊をそのまま特別
更に4男坊には余罪があるらしく、実家からは1度は庇ったがもう愛想が尽きたので勘当を言い渡されて、身分が平民となり処分も公開処刑となるらしい。(かなり無残に処刑されるそうだ)
・・・ガス抜きと警告のために残酷な見世物をするのは何処の世界も変わらないなと思うが、実際に効果があるからボクからは何とも言えない。
まあ忙しかったと言うことだけはわかる、別に襲われても返り討ちに出来るし、人知れず始末することも容易だが、立場のある組織が全て片付けてくれるのであれば、ボクからは何も言うことは無い、どうせ近い内に移動するし。
「まあこんな訳だ、ギルドのゴタゴタに巻き込んで済まなかった、冒険者ギルドも1枚岩じゃ無いから嫌がらせであんなゴミに役職付けて送ってくるクズが結構いてな、違法組織も潰しても潰しても湧いてくるし、経済的にも儲けているからしょうがないとはいえ、領主様には同情するよ」
そう話しながらボクの様子を気にして居るギルドマスターパルムさん、まだ話したいことがあるらしく、彼なりにタイミングを計り問いかけてくる。
「それでだ、ナイヤくん冒険者が自分の手の内を曝す様な事をしたくないのはわかっている、我々も元冒険者だ昔ギルド職員に情報を寄越せと立場を笠に着て言われたときはオレもブチ殺してやろうかと思ったことはある。」
「ギルマス?」
ファルさんが諫める様に声を出す。
「ごほん! すまん、話しがそれた・・・ぶちゃけよう! ナイヤくんの装備は何処で入手したんだ、スチールツリーなんかはここいらでは『魔境の地』でしか採取出来ない物だ。
伐採自体が困難で、Bランク以上の6人パーティーを組んで慎重に現場に向かい、魔法で伐採音を消しても何処からか伐採音を聞き付けてモンスターが寄って来るわ、スチールツリーは堅くて時間が掛かるわで、当時は1本持ち帰るだけで一苦労だった。
だからこそ、子供のナイヤくんが採取出来るとは到底思えないし、そこまで行ける冒険者は限られているが最近は『魔境の地』まで出向いて納品された記録は無い。
ギルドで把握していない情報や状況はイスラート事態の危険にも繋がる、出来るだけの礼はする、どうか教えて欲しい!」
どうもまどろっこしい駆け引きをしたくない様でストレートに聞いてきた、ファルさんは半笑い、サーペスさんは顔が引きつっていた、ボクは言いくるめ様とするよりかは好感が持てた。
どのみち装備の殆どは現地産の素材で作り出しているので困る様なことも無い。
「ボクが知っている事で良いのでしたらお話ししますよ」
「・・・え、いいの? えっと怒ってない?」
「怒ってませんよ、装備に関しては全てお父様が用意してくれました、素材は地元の素材を使用したと聞いています。
付与もお父様がボクを気遣って準備してくれたことですので詳細に関しては伏せさせて下さい。
あと、ボクにとっては大事な装備なので売ることは出来ません」
「・・・そうか、ちなみにナイヤくんのお父様は何方に? それと御名前を聞いても良いかい? 」
?、何かに警戒している・・・アーザルトお父様の名は出さない方が良いか。
「・・・(うつむき少し震えながら)お父様は・・・もう・・・すみません・・・お父様は長年、人(王侯貴族)を嫌っていて名前を教えるのを・・・凄く嫌がるので、お答え出来ません、ゴメンナサイ・・・」
「い、いや! ごめん悪かった! 無粋なことを聞いてしまった! そ、そうか、お父様の贈り物か! もちろん、取り上げる様なこともしないし、させない! ギルドマスターパルムの名に掛けて誓おう!」
「ありがとう、ございます、パルムさん、ぐす」
「そ、そうだ! さっき約束した秘蔵の蜂蜜を出そう! 今、紅茶と茶菓子を持ってこさせるから!」
机の下をモゾモゾしている、・・・なるほど、この部屋今まで魔法で閉鎖隔離されていたな、今も動作は解除と連絡だろう。
その後、エルナさんがワゴンで色々な茶菓子と紅茶を運んできて、秘蔵の蜂蜜を堪能しつつ和やかな様子で聞き取りは終了した。
茶菓子も袋に包んで貰いお土産に貰ってエルナさんに付き添われ執務室を出て行った。
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