第10話 はるばる来ました辺境都市イスラート。


 『魔境の地』、『境界の草原』、『帰らずの森』それらを合わせて『滅びし聖地』と呼ばれる辺境から抜け出し一番近く(約10㎞)に発見した『辺境都市イスラート』に到着しなんやかんやで100日ほど経った。


 ボクは今冒険者としてソロで活動しています。


 この期間で生の情報を集め常識ある一般冒険者としてお仕事に励んでいます。


 此処はイグルート大陸中央寄り東部を支配統治するテップル王国西部末端『辺境都市イスラート』。


 イグルート大陸中央に位置するのS級危険地帯『滅びし聖地』でその外側で監視と討伐と資源採取をしているのが『辺境都市イスラート』である、他所の国にも似たような辺境都市があるらしい。


 辺境などと言われているが街全体は賑やかで活気がある、周辺にはモンスター以外にも獣などがおり食料にも困っていないようだ。


 此処での冒険者の仕事は『帰らずの森』付近での採取や討伐に狩猟、街中での依頼など様々で選り好みしなければ仕事はとりあえずある。


 この世界の冒険者についてだがランクがあり、高い順からA・B・C・D・E・F・見習いと成っている。


 特殊ランクで最高位のSランク、最下位Gランクがあるがどちらも特殊な条件を満たさない限り昇進も降格もしないそうだ。


 この世界での成人は15歳からでギルド証の正規発行も15歳からになるが各冒険者ギルドの采配により条件付きで15歳以下でも仮発行が許可されている。


 基本冒険者ギルドは冒険者同士の問題は自己責任として介入しないが、手数料を支払うことで仲介等もするし、相談があれば職員の裁量範囲で乗ってくれるときもある、ギルドルールを上手く利用すると冒険者ギルドは非常に便利な組織だ。


 要するに無知や無能には厳しい世界なのだ、話がそれたが見習いは12歳から仮発行して貰える、仕事の内容はギルドが用意した常時クエストや街中や外壁周辺でのみの仕事がほとんどで、ギルドの決めた講習会にも定期的に参加する事が義務付けられている。


 14歳からはFランクの仮発行が認められているが15歳になるまでは他の街への移動はギルドの許可が無い限り出来ない。


 その代わり14歳まではギルドがある程度のサポ-トをしてくれる、成人した冒険者からの揉め事もギルドが無料で仲介してくれるし各種講習会も無料で参加出来る、但し15歳になると有料になる。


 このイスラートでは未成年の冒険者が悪い大人の食い物にされないように配慮しているのだ、他の冒険者ギルドと比べると破格の対応らしい。


 なのでボクも14歳(偽装)で登録したが、もっと年下だと疑われた、登録時に使用する魔力登録と年齢確認用のマジックアイテムをハッキングして偽ったので問題なかったけれど。


 まあ限りなく15歳に近い14歳で登録した、この世界の年月時間は一週6日、一月30日〈5週〉、一年12ヶ月〈360日〉、1分60秒、1時間60分、1日24時間。


 一週間は、光・闇・火・水・土・風の六っつの順で分けられていて大体の国が光の日を休養日としているが生活が貧窮している人間には関係ない日だ、そして当然休養日後の闇の日は一部若者から嫌われている、作為的なモノを考えるのはボクだけだろうか?


 四季も地域のよるがしっかりとあり、この地域は比較的暖かいが雪も多少降る。


 次は貨幣になるがファンタジーらしく硬貨が主流だ、銅貨一枚100円位の価値らしい。


 銅貨10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で銀貨1枚って感じで。


 銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、金板、大金板、ミスリル貨と9種類あるが金貨なんて平民が拝むことはまず無いらしく、ほとんどが銅貨と銀貨で取引されている、貨幣単位は共通で「ギル」、100ギルで銅貨1枚、銅貨一枚以下の品はまとめ売りらしい。


 そんなわけでボクも後一月程で15歳になります。


 ・・・今の所はテンプレらしいテンプレには遭遇していなくちょっと寂しい、まあ成人前の子供にちょっかいを掛けるとギルドでの評価が下がるからバカ以外は絡むことはないけれど、他所から来た冒険者がイスラートのルールを理解せずに注意を受けているのを何度か見たな。(初回のみ注意で済ませる但し程度にもよる)


 さて今日の仕事分を納めてこようかな。


 


 冒険者ギルド・イスラート支部、結構な大きさの石材と木材を合わせた造りの建物で建築様式が何処かと聞かれてもイスラート式?としか言えない、だって他の街に行ったことないから。


 大きめの入り口を潜り受付に進む、この時間帯は空いているので順番が直ぐに来る。


 ボクのことを気に掛けてくれる受付のお姉さんがいるので休みの日以外はそこへ向かう。


「あら、ナイヤちゃんお帰り! 今日のお仕事はどんな調子でした?」


 何時もニコニコ営業スマイルで迎えてくれる受付お姉さん。


「エルナさんただいまです、今日もぼちぼちです常時依頼の確認と獲物の買取をお願いします」


 カウンターに常時クエストの品を置き確認が終わるのを待つ、エルナさんは中位鑑定持ちなので結果は直ぐに出る。


「うん、問題なし良い品です、ナイヤちゃんの納品する品はどれも丁寧に採取しているから評判良いのよ、指名依頼したいって言っている方もいるのよ、でも一応保護対象期間中だから15歳になるまではEランクに昇進出来ないのよね、(小声で)ナイヤちゃん後一月程で15歳でしょ。

 ナイヤちゃんギルド評価高いから15歳を迎えたら直ぐにでもギルドに申告してね、Eランクの証明書を渡すから」


 可愛らしくウインクを知るエルナさん。


「(小声)そんな重要なことを新米の冒険者に言って良いんですか? 人によっては浮き足立ってやらかしますよ」


「そんな考えが出来るナイヤちゃんだから話したのよ、15歳を超えると一応大人として全て自己責任になるからね、ギルドとしては注意喚起する事しか出来ないし、私としても若い子達が不幸になるのは見たくないのよ。

 それに! ナイヤちゃん何時も目立たないように注意しているけれど、結構狙っているパーティーが居るのよ、良いのも悪いのもね、Dランクになれば遅かれ速かれ接触してくるでしょうから、出来れば私としては素行の良い人達とパーティーを組んで欲しいのだ・け・ど」


「え~、ソロの方が揉めないし、儲けも独り占めだし、気楽で良いし、男の冒険者・・・臭いし」


「ぷっ! だ ダメよ、本人達の前で言ったら粗暴そうでも結構繊細な人もいるから」


 プルプルと笑いを堪えるエルナさん、身体のくねらせ方がエロいな。


「繊細な人は結構身嗜みに気を遣ってますよ」


「そうね、でもお試しで良いから1度他の冒険者とパーティーを組んでみて、Dランクまでは依頼の実績とギルド貢献度で試験無しで昇級出来るけれど、Cランクからは昇級試験があってその試験は他の冒険者と臨時パーティー組んで行うからその前に経験しておかないと苦労するのよ・・・本当に」


「何だか実感がこもってますね?」


「これでも現役は離れているけれどCランク冒険者だったからね、面倒くさいのが混ざっていると殺意を覚えるわ、だから他人との関係も早い内の経験しておくと試験で足を引っ張られる前に対応が出来るから経験しておいて損はないわ。

 これ先輩からのアドバイスね♡」


 ウインクしながら助言してくれるエルナさん。


「う~ん、分かりまして御助言胸に刻み前向きに検討します」


「む~、まあナイヤちゃんにも事情があるでしょうから無理強いはしないけれど、相談なら何時でも受け付けるから困ったことがあってら何時でも来てね!」


「エルナさんありがとうございます、困ったときは頼りにさせて頂きます」


「じゃあこれ、常時クエスト『薬草採取』の報酬3,000ギルね、狩猟でのモンスターの買取はいつも通りでお願い」


 そう言ってカウンターに大銅貨3枚をトレーに乗せてボクの前に出してくれる、ボクは硬貨の確認をすると手早く腰に装着している『ブサカワ猫ポーチ』に仕舞いお礼を告げてその場を離れる。


 そのまま買取カウンターに向かい受付から奥の解体場に指示を出している恰幅の良いお姉さん(45歳)に話しかける。


「ムビナさん、買取お願いします」


「ん~ん、おや! ナー坊かい、今回は何を仕留めたんだい?」


 カウンター越しから此方を覗き込んで今回の成果を訪ねてくる、女性だが180㎝以上あり色々とデカイ。


 仕留めたモンスターを取り出すために背負っていたボクがすっぽり入りそうな大籠を下ろし蓋を開け中身を出す。


「・・・角有りホーン2匹に角無しブリッツ1匹のラビットとホールラットが3匹だね、相変わらず綺麗に処理してあるブツだね」


 口調はあれだが仕事には誠実なお姉さん(45歳)だ、後此方ではモンスターの数え単位は全て統一して『匹』である。


「これで全部です」


「そうかい、血抜きも問題なし、内臓も綺麗に抜いてある、外傷の傷も頭部への打撃一つのみ、他素材に損傷無し、魔石は別にしてあるのかい?」


「はい、此方にまとめてます」


 革製の小袋を開いて見せる。


「買取は?」


「自前で使います」


「そうか、じゃあ他は買取で良いね、品質が良いから買取上限一杯で支払うよ」


「ありがとうございます、それでお願いします」


「あいよ! 誰か! これを解体に持って行ってくれ!」


 奥の解体所に良く通る声で指示を出す。


「へい! 姐さん! 今向かいます!」


 すかさず奥から返事が返ってくると、若い解体所職員が回収に来る。


「姐さんこれですね、おおっ綺麗なブツですねえ、解体しやすくて良いですね」


 嬉しそうに話す若い職員、するとムビナさんがギロリと睨み。


「生意気言ってないでさっさと運びな! それとどんな状態でも最良の解体をするのがウチらの仕事だ! 軟弱なこと言ってると切り落とすよ!」


「す、すみやせんした~!」


 若い職員は慌ててモンスターを奥へと運び込んでいった。


「まったく、慣れ始めて気が緩んでやがる・・・(小声で)後で若いの全て締めておこう」


 言い方はキツいがこれも経験則から来ているムビなさんなりの優しさなんだろう、何せ刃物を使いモンスターを解体する仕事だから、知識と技術が無いとえらいことになるからね。


「じゃあ内訳だ」

・ホーンラビット:5,000ギル×2

・ブリッツラビット:4,000ギル

・ホールラット:4,000ギル×3

 合計 26,000ギル


 銀貨2枚と大銅貨6枚良い稼ぎだ、通常の買取額だと1,000ギル低く、状態に応じて更に下がるそうだ、ボクは下がったためしはないけれど、酷い物は穴だらけだったりスプラッターだったり時には買い取り拒否の場合もある。


 ただし希少なモンスター素材であれば欠片でも高額買い取りするそうだ、要は小物は損傷少なく仕留める様にと言うことだ。


 金額に問題ないことを告げ直ぐにポーチに仕舞うと軽い挨拶をしてその場から足早に去る。


 何せ人の少ない時間帯にもかかわらず、ヒマそうにギルド内の休憩場所でウロウロチラチラと此方を見ている暇人がいるので関わるとウザいんですよアイツら、まあそんなこんなで何とか生活は出来ています。


 アーザルトお父様、ボクは元気です。

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