第9話 魔境の地のモンスターと怪物。



 (魔導眼起動)

 ナイヤの額が中央から縦に盛り上がり『くぱっ』と皮膚が縦左右に開く、そこから虹色に輝く楕円形の結晶が姿を現した。

 〈マナクリスタル〉と呼ばれるソレは魔導式人造人間718号ナイヤの武器で有り、重要器官で有り、奥の手でも有る。


 七色に輝くマナクリスタルに意識を集中しマナ粒子操作を使用して周囲の探索・探知・索敵・マップ作成・鑑定を取り敢えず行う、額のマナクリスタルは鑑定系・感知系の役割を担当している。


 ナイヤには計5カ所に〈メインマナクリスタル〉が内蔵されていて、それぞれの箇所によって役割分担がされている。


 先ずは先程述べた額に1つ、次に左右に肩甲骨に各1つ重力操作・空間把握・推進機能等を担当する要は体重の増減から飛行など応用は多岐に及ぶ。


 次はへその少し下に1つ時空間を担当していてスキルに関係の無い収納・時間操作・空間操作など、使い熟せば空間転移移動が出来る。


 最後が胸骨の中央に1つ各マナクリスタルへのマナ粒子調整・操作・貯蔵・放出を担当している。


 各メインマナクリスタルには役割があるが、何らかの原因で他のマナクリスタルが損傷した場合は他のマナクリスタルでの代用も可能だ。


 そして常時は皮膚の下に埋もれて収納されている、収納状態でも問題なく使用で来る、気分が乗っているときに外部へと露出する。


 そして〈マナクリスタル生成吸収〉よって必要時に身体の各所生成される〈サブマナクリスタル〉を駆使するのがナイヤの戦闘スタイルである。

 それ以外は手加減している状態だ・・・ただ現状まだ正確な手加減は出来ない。


 サブマナクリスタルの機能は生成した箇所によって状況に合わせたマナ粒子の使用変化をする。


 簡単な例では、シールド・ソード・ビーム・属性魔法への変化等、イメージとアイデアによって様々な使い道がある。


 更にマナクリスタル自体を素材として身体から取り出すことが出来きる。


 素材としても優秀で高度な付与も可能で、増幅器としても一級品である、マジックアイテム・魔法武具等にも最高の素材となる。


 先程から話に出てくる〈マナ粒子〉とはアーザルトお父様が長年の研究から発見した魔力に含まれる成分の1つで、純粋なマナ粒子のみを集めることで、通常の魔力とは別物の出力と性能の魔法が行使出来るようになる。


 但し通常の方法ではマナ粒子を操作することは出来ないため、アーザルトお父様が考えついたのがマナ粒子に作用するマナクリスタルを作りだし、それを自在に操れる機能スキルとマナクリスタルをボク(魔導式人造人間)に埋め込んだ。


 なのでボクが使用する魔法は加減をしないと生活魔法の〈種火〉でさえ青色の火になり、下位魔法でさえ上位魔法の威力になってしまう、厨二心が捗る、いひっ♡


 ・・・どうも厨二心を刺激され楽しくなると変な笑い声が出てしまう、我が女神がまた気まぐれで妙な癖を深層意識にプログラムしたのだろう、お茶目な御方だボクもオタク気質なのでこれはこれでアリだと思う。


 心の中で暇つぶしに解説している間に脳内マップが完成し、実戦テストの対象となるモンスターが赤い点で次々と表示されている。


 その中から一番近い対象に気配を消しながら接近する事にした。


 ・・・目視した対象は、灰色のゴリラのようなモンスターだった。

 (魔導眼起動)

 モンスターを鑑定してみる。


================

名前 無し 

Lv 80

種族 ウォリアーグレイコング

性別 ウホ♂


筋力 B

体力 B

器用 C

速力 C

知力 D

魔力 E

幸運 F


スキル

〈種族スキル〉

・剛力 ・咆哮 ・ドラミング ・連係


================


 力が強く体力もある・・・丁度良い相手だな、それに・・・。


 周囲を警戒しながらムシャムシャと食事をしている足下には仕留めた獲物と使用した得物が転がっており上手そうに千切り取った脚を頬張っている。


 得物は非常に使い込まれた棍棒のようだがどう見てもボクの身長よりでかい、2メートルは優にあるだろう。


 鑑定してみるとスチールツリーと出た、魔素濃度の高い土地でのみ植生する樹木で鋼鉄のように硬くしなやかなで熱や火にも強く魔力伝達も良いと良い所取りの素材であり高値で取引される。


 まあ加工するには中位木工Lv7以上のスキルが必要らしい、でもボクは生産系のチートスキルを前世で習得しているから楽勝だけどね。


 あのウォリアーグレイコングは手頃な太さの幹のスチールツリーを引っこ抜き、その後周囲の硬い物に叩きつている内に余計な部分が削れて今の丁度良い手頃な得物に収まっている、お気に入りって表示されていた。


 手頃な相手ではあるが慢心せずに相手をして貰おう。


「コーングちゃーん、あっそび~ましょっと!!」


 その辺に落ちていたソフトボール程の大きさの石を掛け声と共に投げる、加減して投げた石はウォリアーグレイコングのケツに超エキサイティングし「グホッ!」と突然の衝撃に声を上げ反り返る。


 グルルルと唸り声を上げながらケツを押えてボクを睨み付ける、牙を剥き出し足下の棍棒を拾い上げ大きく息を吸い込み怒りの咆哮を叫ぶ!


 この五月蠅い咆哮は魔力が含まれており対象がレジスト出来なかった場合は一時的に硬直してしまう。


 でもボクには効かなかったけど。


 そんな此方の様子などお構い無しに棍棒を上方に振りかぶり殴りかかて来るウォリアーグレイコング、バカなのだろうか?

 ああ!ボクが小さい(145㎝)ので見下しているのと、これがコイツのお決まりの攻撃パターンなのか。


 力の限り振り下ろされる棍棒をバックステップで避ける、瞬間ボクが先程まで居た場所が弾け飛んだ!


 ドゴン! と腹に響く音と共に飛び散る土や小石をシールドで防ぎ体制を整えると、ボク側から見て左から右へと棍棒での薙ぎ払いが迫る。


 迫り来る攻撃に対して上半身を後方に反らし交わす、思い通り動く良い肉体だ、攻撃を避けられたことが面白くないウォリアーグレイコングは再度折り返し右から左へと棍棒を薙ぎ払う。


 今度の攻撃は前傾姿勢に屈み懐へ潜り込もうとしたがウォリアーグレイコングは棍棒攻撃後に追撃で空いている左手で此方を掴みに来る。


 だがその攻撃を華麗に受け流しそのままの勢いで宙に舞わす、幾多の前世の中で体得した『夢天想生流合気術むてんそうせいりゅうあいきじゅつ』今此処で披露する。


 案外生前の知識と記憶だけでもぶっつけ本番で上手くいく物だ、まあこの身体の性能あっての結果だけれど、空中で5回転半した後地面に激突するかと思っていたが意外にも姿勢制御は出来るようで四つん這いの状態でしっかりと着地を成功させていた。


 ・・・うむ良い位置だ、四つん這いの状態でボクを睨み付けようと顔を上げるウォリアーグレイコング、しかしすでにボクはそこには居ない、ボクを見失い慌てるヒマも与えずに奴の懐へと潜り込む。


「そう、その頭の高さが欲しかった」


 そう呟き地を這うように突き上げるアッパーを顎に打ち込み振り抜く!


「ウボッ!!」何か言いかけた状態で頭が跳ね上がり『ボキン!!』と鈍い音が響き、後頭部が一瞬背中に当たりそのまま跳ね返ってダラリと頭を下げ項垂れる。


 鑑定ではすでに死亡と出ている、何せ3メートル近い相手なので145㎝のボクでは拳が届かなかった、地面に転がせば急所にも届くだろうと前世の技を使ってみたが。


「さて、これ素材はさっさと仕舞っちゃってと、身体も温まってきたし、おかわりといきますか!」


 最高位収納にモノを納めて周りを見渡すとウォリアーグレイコングが群れをなして此方を威嚇している。


 そう、ウォリアーグレイコングは群れをなすモンスターなのだ、しかも単体よりも連係をする戦闘を得意としている。


 ・・・いひっ♡


「さあ! 今から君達はボクの強敵フレンズだ!」


 ウォリアーグレイコングの群れに向かい口角を上げニコリニチャと笑う。


『これからボクとらないか?』


 この時からボクは徐々にアクセルを上げて行き、『魔境の地』で実戦経験を積んだ。


 『魔境の地』を戦闘しながらぐるっと一周すると40日程過ぎており、その後人が住んでいるエリアまで辿り着くのに10日掛かってしまった。(途中でまた寄り道をしてしまう)



 後日談になるがナイヤの実戦調整によってこの後起きるモンスターパレードの被害が1割減ることになるのは本人も知らない。

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