第4話 人造人間は雷鳴と共に目覚める。


 昼間だというのに薄暗く、分厚く真っ黒な雲に覆われたその日は何時もと違った。


 男はカップに満たされた真っ黒な液体をすするように飲みながら空を眺めていた。


 ズ ズズズズズズゥ~~~!


 カップの中身を音を立てて飲み干す男、空のカップを眺めつつ思いにふけ呟く。


「良く行儀が悪いと叱られたな・・・何故今になって思い出す?」


 男は疑問に思いつつも周囲の計器類に目を光らせていた。


「今回こそは成功すると良いのだが・・・」


 そして、控えていた女性が再度カップに注いだ真っ黒な液体を少し音量を下げて啜り始める。



 轟音が轟いた、空は今まさに稲妻が駆け巡りゴロゴロと鳴り響いている。


 そんな最中、分厚い雲を貫くような異質の落雷が爆音と共に男の施設に設置された高く伸ばされた棒状の機材へと落ちる。


「ふっ ふはははははははっ! 遂に来たぞ! さあ! 来い! 来い! 来い! 来い! !? 来た! 来た! 来た! きたっ!!  目覚めよ! 魔導式人造人間718号!!!」

 

 外では雷鳴が、施設内では男の笑い声が木霊する中、ソレはゆっくりと目を開けた。


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・!」


「・・・・・・・?」


「・・・・・・ん」


「・・・あぁ」


 騒音の中で意識の覚醒と共に周囲を見渡しながらそれは小さく短い産声を上げた。


「おおっ、おおっ、遂に目覚めたか! 改めてこの誕生を祝福しよう! ハッピィィバァァスデェェェ!! 魔導式人造人間718号!!!」


 男はオーバーリアクションで大きく両腕を広げ大声でソレに叫びかけた。


 ?、ソレは戸惑っていた、転生直後なので記憶の回復と確認、肉体と精神体とのリンクに齟齬が無いかの確認、目の前で芝居がかった行動をしている老人との関係性の模索、そして今回は女性体に転生した事への確認事項。


 彼女は緩やかに傾斜している寝台に寝かされている、先ず始めに腕をゆっくりと動かし手前で手のひらをにぎにぎと動かす、そしてそのまま自身の胸に手を当てて・・・揉む。


 むにむに ムニムニ もみもみ


(推定Aカップ・・・感度悪し・・・揉みごたえは正直硬い・・・今後の成長に期待・・・股間はやはり無いか)


 そんなことを思考しながら周囲を見ると、此方の奇行に戸惑いと怪訝な表情をする老人に確認と質問をするために尋ねる。


「あっ、あ、おとうたま・・・」


 滑舌がまだ悪いようだ・・・よし!


「おとうさま・・・ボクのおっぱいは大きくなりますか?」


 ・・・この世界での私の一人称はどうやら『ボク』のようだ、我が女神はどうやらは『ボクッ娘』に興味があるらしい、たまにあるのだ妙な語尾や話し方が深層意識に植え込まれて送り出されることが、まぁ何時ものことだから気にせずに続けよう。


 そんなことを考えている間に老人はプルプルと震えているのに気付く。


(いきなりおっぱいは不味かったかな?)


 そんなことを考えていると老人は突然オーバーリアクションをしながら叫ぶ。


「ンンンンン~ン グゥゥレイトォ!! 素晴らしい!! すでに個を持っている! 自身の身体に興味を示している! 意思を! 疑問を! 立場を! すでに理解している! 今までのにはあり得なかった! しかも! おとうたま! ンンン~ン かわいい!! 更に初めての興味がおっぱい! おっぱいだぞおっぱい! 安心するが良い我が娘よ! 小さくてもおっぱいはおっぱいだ!! 魔導式人造人間718号よ!」


 ・・・転生先失敗したかな・・・。


「あ あのボク、魔導式人造人間718号と呼ばれるのは少しイヤなので、『ナイヤ』と名乗って良いですかお父様」


 そうお願いすると元気な老人は驚いた顔でブツブツと独り言をつぶやき始める。


「・・・名を欲した? しかも718をじって名を決めた? ここまでしっかりとした自我が芽生えているのか!

 ナイヤ・・・ナイヤ、良い名だ! 良しナイヤよワシのことはお父様では無く『おとうたま』と呼びなさい、更に少し恥じらいながら呼んでくれるとなおグッド!」


 やっぱり転生先を間違えたな今度はきちんと精査してから選ぼう・・・。

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