第37話リーシェ、作戦会議をする
「アリシアさん。先程の件はお詫びします。ですからどうか私の力になってくださいのですわ」
「あー。もう、本当は嫌だけど、けいごが悲しむし、キリカさんも絡んでいるからするわよ」
よかった。アリシアさんがチョロくて。
私なら絶対相談になんて乗ってあげませんわ。
「あの、リーシェさん?」
「何ですの?」
「今、凄く失礼なこと考えていませんでした?」
「確実に考えていたと思います。リーシェ様は悪い事考えると分かり易く顔にでますから」
「口角が思いっきり吊り上がっていたわね。一体何を考えていたの? 正直に白状なさい」
「え、と、いえ、アリシアさんはチョロくて助かるなーって、あは」
アリシアさんは何故かため息をつくと。
「私もたいがいお節介だとは思うけど、あなたも大概よね」
「アリス、私、褒められていますの?」
「アリシアさんの言いたいことを一言で言うと、リーシェ様は最低です」
「・・・そ・・・そんな」
私が最低? なんで? なんですの?
「おバカなリーシェ様のことはとりあえず放置して、善後策を検討しましょう」
「そうね。私も気になって王国に確認をとったのだけど、色々不明な点が多いの」
「何が不明なのですか? こんな悪党のリーシェ様に抹殺命令が出るのは当然では?」
「ア、アリス、酷すぎますのですわ」
私が涙目でアリスを見るが、アリスは無視して話を続けましたわ。
「リーシェ様。率直に言って、逃げるという選択肢はないのですか?」
「アリス。私は剣聖です。自身のプライドにかけて決闘から逃げることはできません」
「そう言うところだけはリーシェ様は真面目なんですね、はあ」
「本当、そうね。でも、私の掴んだ情報だと、キリカさんに出たリーシェさんの抹殺命令は王命ではないわ。つまり、キリカさんの父上関連の上位貴族による独断」
「それならやっぱり逃げて時間稼ぎをすれば、聖女様や勇者けいご様の力で何とかなるんじゃ?」
アリス。アリスはわかっていませんね。剣聖も剣豪も長い歴史ある名誉ある称号です。
その重さ、尊さが私に自分の命可愛さに逃げるという選択肢を与えないのですわ。
「アリスさん。私も聖女だからわかるけど、剣聖も剣豪も誇り高い称号です。並大抵の努力でその位置にはいられません。だからリーシェさんの言うことももっとな話よ」
「なら、どうすればいいのですか? リーシェ様はとにかく、キリカさんが死んだりしたら、私は悲しいです」
「アリス? なんでそんなに私のこと嫌いになったのですの? 私、仮にもあなたの主人ですわ。そんなに私は悪い主人ですの?」
「正直、勇者様がなんでリーシェ様の方がいいかがわからないです。客観的に見て、聖女のアリシア様の方がよっぽど相応しいです。それなのに勇者様はリーシェ様のことを好きで、そのくせアリシア様はこんなにリーシェ様に良くしてくれて・・・理不尽です」
アリスはそんなことを考えていたのですの?
しかし、私より聖女のアリシアさんの方が相応しいなんて酷いですわ。
そりゃ、性格なら負けますけど、顔だって・・・あれ? アリシアさんって凄い清楚で顔立ちが整っていますの?
スタイル? あれ、乳以外、何も勝っていませんわ。
家柄? 確かアリシアさんは私より高位の侯爵令嬢・・・。
私、乳以外何も勝っていませんわ!
「ア、アリス・・・勇者っておっぱい星人ですの?」
「知りませんよ! 大方、乳以外、アリシア様に勝てるとこないの自覚したんでしょうけど!」
「二人共、乳は置いておいて、真面目に話をしましょう。先ずは戦力分析からです」
アリシアさんに一喝されて、しゅんとなる私とアリス。
「先ず、剣技については剣聖のリーシェさんも剣豪だったキリカさんも同等でしょう。問題はキリカさんが聖剣に選ばれて、そのステータスが大幅に向上している点です。その上、キリカさんはダンジョンに潜っていますから、何かギフトを授かった可能性があります」
「そう言えば、ダンジョン配信で、キリカさんのギフト公開するの忘れていました!」
「アリス。とんでもない不手際ですわね」
「リーシェ様、追い出しますよ」
「ごめんなさい。もう言いませんの」
「アリスさんもリーシェさんも仲たがいしないで、真面目に考えてください!」
そんなことを言われましても、頭脳戦はアリスの担当で、私はブルーワーカーなのですわ。
「アリシア様、ごめんなさい。こんなリーシェ様の為に考えてくれているのに・・・」
「いいのです。それより、はっきり言えるのは、戦力は拮抗しているか、キリカさんの方が上だと言う点です」
「何故はっきりと言えるのですの? 私もこの世界でギフト『ビリビリ』を授かったし、魔王になって空間魔法も使えるようになりましたわ」
「リーシェさん。あなたも魔王討伐の為、聖剣の勇者パーティに選ばれた身、空間魔法への対策は考えていませんでしたの?」
「・・・あ」
「そうか。リーシェ様がやっている位だから、当然キリカさんも?」
そうか、戦況は私に悪い方に傾いているのですわ。
「そこで聞きます。リーシェさん。あなたはキリカさんの息の根を止めるつもりですか?」
「いえ、そんなことはしません。万が一死んでしまったら、ポーションで生き返らせます」
「例え、キリカさんがそうしてくれなかったとしても?」
「しません。仮にも認め合った友人を殺すことはできませんわ。技の優劣をつけることは出来ても、命まで取るなんて友達にはできませんわ」
アリシアさんは何故かほっとしたような顔色になると、切り出した。
「聞いて安心しました。勇者が何故あなたのことが好きなのか、わかったような気がします。だけど、あなたは甘すぎます。それではあなたが死んでしまいます。だから、私に考えがあります。それに従ってください」
私はそれからアリシアさんが話してくれた内容に驚きを隠せなかった。
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