第36話リーシェ、ちょっと魔王よりの大聖女ぽいなにかになる
「ステータスオープン」
私がそう叫ぶと目の前にステータス画面が現れる。
名前:リーシェ・シュテイン・サフォーク
職業:ちょっと魔王よりの大聖女ぽいなにか
年齢:十七歳十一か月
タレント:剣聖
ギフト:ビリビリ
スキル一覧:
聖典魔法(小)
空間魔法(大)
身体強化(極大)
探知(極大)
雷魔法(小)
「ほんとにちょっと魔王よりの聖女様ですね」
「なんで? なんで一体こんな中途半端な?」
私は自分のステータスを見て、愕然としていた。
勇者が私の前世からの想い人だと知れた時、私は何かが変わった感覚を得ましたの。
絶対大聖女へのジョブチェンジだと思ったのになんでですの?
「アリシアさん? これは一体?」
私は聖女のアリシアさんに聞いてみたりする。
「何とも言えませんが、やはり聖女の試練を通過していないからだと思います」
「聖女の試練とは一体何なのです? 筆記試験なら絶望的ですわ」
「いえ、私も聖女の試練については伝承だけしか存じ上げません。しかし、大聖女の資質を持った者が真の愛に目覚めた時に試練は果たされると聞いています」
「なら、勇者との深い愛に目覚めた私ならおkじゃないですか?」
私がブルブルと震えてそう言うと、アリスがポンと手を叩き聞いて来ましたの。
「リーシェ様は勇者様のどんな所が好きですか?」
「顔ですわ。カッコいいですわ」
「・・・他には?」
「勇者ならお金持ってそうですわ」
「・・・あの。その他は?」
「身長も高いですし。あ? そうだ強いですわ!」
何故かみなさんの私を見る目が冷たい。
特に聖女のアリシアさん。
何で人をそんな汚物を見るような目で?
「はい。証明終了です。リーシェ様は外見やお金だけで内面を全く見てません」
「清々しい位なクズっぷりですね」
「アリシアさん・・・酷い」
「勇者けいごの気持ちを考えたらそう思いますよ! あいつ、どれだけあなたの事を思っていたか!」
聖女のアリシアさんが私に対してキレた! なんで? 私は何一つ間違った事を言ってないのに!
「だから、顔良し、お金有り。そんな彼を好きにならないほうがおかしいわ!」
「外見しか見てないじゃないですか!」
「なんでですの? 顔が良くてお金がある上、私にだけ優しいとか最高でしょう?」
聖女様と私が言い争いをしている中、アリスはというと・・・。
「・・・リーシェ様。流石に聖女様が可哀想になってきたからその辺にしておいて・・・」
「えっ? でも・・・まだ私は言いたい事が一杯・・・」
「聖女様が勇者様のこと好きなのがわかんないんですか!」
「え?」
「・・・はい?」
アリスの突然のカミングアウトに私と聖女様が固まった。
「聖女様はね。いつも勇者様の話ばっかりしてたんですよ。聖女様だって勇者様のお願いだったからリーシェ様を診て頂いたのでしょう?」
「ち、違う。あのバカは私に何度も冷たい言葉を吐いたのよ? そんなあいつを好きになるなんて!」
私は思わず口角が吊り上がった。
「残念でしたわね。負けヒロインさん」
「こッ!? このぉ!」
「リーシャ様最低です」
「そうよ。だから魔王よりの聖女っぽい何かにしかなれないのよ!」
非常に不愉快ですわ。せっかくのカレーが台無しです。
代々木公園の一件が終わって、アリスの家で団らんを楽しんでおりましたが、アリスがステータス確認して見たら? なんて言うから見たのに、なんでこんな事に?
「あの。皆さん、それ位にしておいて下さい。僕が作った料理が冷めてしまいますよ」
そう口を挟んで来たのはキリカですわ。
・・・そう言えば。
そう、これははっきりしなければいけないことですわ。
いくら見た目が美少女でも、正真正銘の男の娘の上、異性・・・どころか私のこと好きとか同じ家には住めないですわ。
「キリカさん。とても言いにくいことなんですが・・・」
私はそう切り出した。
もちろん勇者に頼んで行先を見つけてあげてからのことですが・・・辛いことですが。
「そうです。キリカさん。とても辛いことですが、はっきり言わなければならないことがあります」
アリスがそう私の言葉に続きました。
ここはアリスの家ですから、確かにアリスから言ってもらうのが筋ですわね。
「キリカさん。とても残念ですが、リーシェ様にはこの家を出て行ってもらいます」
「そうです。キリカさん。あなたは男の娘・・・あれ?」
なんかおかしくありませんの?
今、アリスは私に出て行けと言ったような?
「アリス。間違えてますわ。出て行くのは男の娘のキリカでしょう?」
「違います。性格悪い上、強い以外何の取柄もないリーシェ様の方を追い出します」
「ちゃ、チャンネルは? 私はセンターですわよね?」
「明日からキリカさんにします。MCも出来そうですし」
う、嘘でしょ? 奴隷で従者のアリスが主人の私を追い出しますの?
私が情けない顔をしていると、キリカが切り出した。
「アリスさん。庇って頂いてありがとうございます。でも、そんな必要はありません。実は王国から使者が文を持って来ました」
「い、一体どんな?」
「・・・魔王抹殺の命令です」
う、嘘でしょ? 確かにキリカとは休戦状態ですわ。
それにこんなに仲良くなったのに。
男の娘じゃなきゃ追い出そうなんて思わないですわ。
「僕はしがない男爵家の一人っ子で、とても貧乏な家でした。でも、僕が剣豪になって、父がどこかの高位貴族とお近づきになって・・・」
「家の為、戦いは避けられないのですの?」
私は真剣な顔で言った。
殺し合いになりますの。
真剣にもなりますの。
「僕は食事が終わったらこの家を出て行きます。三日後、国立競技場で決闘になります。どうやらこの国の権力者と話はついているみたいです。次に会う時は敵同士です」
「・・・そ、そんな。それじゃリーシェ様を・・・追い・・・出せない」
私はアリスの暴言が耳に入らない位に呆然としてしまいましたわ。
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