第24話リーシェ、コラボ配信する4

エリカさんを先頭に中層階を進むとスケルトンの群れに出くわしましたの。


「エリカさん、スケルトンのドロップする骨からはいいスープが取れるんです!」


「え? マジなの? あれ人型よね?」


「いえ、それがとても澄んだ濃厚な豚骨スープが取れるんです」




”魔物を食材扱いw”


”それもよりによってスケルトンw”


”あ!スケルトンが逃げ出したw”


”捕食者に出会ってしまったかw”




「アリスちゃんは後ろから支援してね! 私が突っ込みます!」


「は、はい! エリカさん!」




エリカさんとアリスが息もぴったりに動き出しますの。


なんか、私だけ疎外感がありますの。




「ていッ!」


「エリカさん危ない!」


「サンキュ! ナイス判断!」




”エリカちゃんのスキルは身体強化(大)と治癒(中)なんだよな”


”ソロには最適なスキルだけど、やっぱり支援があると楽だよな”


”いいコンビだねぇ”


”リーシェちゃんいたら一瞬で灰燼に帰すんだけどw”




「それは言わないお約束でしょ!」




”はい!エリカちゃん”


”やっぱエリカちゃんすげぇ”


”普通な戦いも良いな”


”凄い参考になる”




どうやら同業者も視聴しているようで、参考になるとの意見が。


まずいですわ。私、何もいい処がありませんの。


何とか挽回しませんと。


仮にもこのチャンネルのセンターなのに、これじゃただのモブですわ。


そうだ、この後のお料理で挽回を!


こう見えても前世で大貴族付の侍女をしてまして、究極のダンジョン飯を探求してましたの。




「風の精霊シルフよ!」


「ナイスタイミグ! 今だ!」




アリスの風の精霊の魔法で動きが鈍くなったスケルトンにエリカさんが一気に畳みかける。


しばらくして戦いが終わり、スケルトンの骨が三本程ドロップしましたわ。




「大量ですわ。骨が三本もドロップ」


「普通、捨てるんだけどね」


「なんてことを! かなり貴重な食材ですわ」


「それ、本当に食べても大丈夫なの?」




私がにっこりと笑って、天使の如くほほ笑むと何故かエリカさんが怯えた顔をしていますわ。




☆☆☆




「では、ここからは私がお料理しますわ」




”嘘だリーシェちゃんに料理なんてw”


”似合わないw”


”多分何かやらかすw”


”そもそもダンジョンの中で料理?”




名誉挽回ですわ。既にスケルトンの他、オークからドロップしたお肉を入手済。




「先ずはお肉の下ごしらえをします」




私はそう言いながら、おもむろにオークのお肉に拳を振り下ろす。


手間がかかるが、これもお肉の食感を良くするため。


オークのお肉は豚さんと違って、筋張っていて、外部から強くたたくことで硬い筋がキレて柔らかい食感になるのだ。




ドーン


ゴーン


ドカーン




”ただの破壊活動w”


”なんか予想通り”


”なんか料理とは思えない音がするんだけど?"


”料理と戦闘が同義とは?”




「下ごしらえは丁寧にした方がいいですわ」




”破壊音と天使な笑顔のギャップが草”




オークのお肉を三分程殴り続けると、ほどよくなったころ合いですわ。




お肉をまな板の上に置いて。




ガツン、ガツン、ガツン




包丁で一口大にカットして行く。


見よ。この包丁さばき! 皆さん絶対私がお料理できるとは思ってないのですわ。




”リーシェちゃんは何をしているのかな?”


”まな板ごと切れてるw”


”ちょっと予想通りで草”


”でも、意外と包丁さばきはすげぇ”




「何てことですの? こちらの世界のまな板は何で出来ていますの?」


「プラスチックですよね」


「リーシェ様、こちらの世界の科学の産物です」


「強度がアダマンタイトの十分の一位しかありませんの」




”まな板の強度のせいにしたw”


”アダマンタイトのまな板ってなんだ?”


”多分、深層階でしか手に入らない素材だろ”


”悲報。リーシェちゃん料理が致命的にダメなのが判明w”




そ、そんな。私が料理べたなんて!


何とか名誉回復を!


そうだ! 以前深層階で採集した歩き茸を隠し味に使いましょう。




「次に味付け用の歩き茸を刻んでいきます」


『ぎゃぁ』


ぶしゅ、ぶしゅ、ぶしゅ




”笑顔で人型の魔物を切り刻むとは・・・”


”あれ、下半身は人型なんだよな”


”血まみれの魔物を笑顔で包丁で斬り刻むかぁ”


”やっぱりマジキチリーシェちゃんらしいなぁ”




おかしいですわ。


なんか私のことを見直すのではなく、マジキチ扱い?




”ところで歩き茸って毒なかったけ?”




いい質問ですの。




「毒は我慢すると美味しいのですわ」




”真顔でボケないで”


”毒=死ぬやで?”




「いえ、そうじゃなくって、死線をさまよって食すダンジョン飯こそがだいご味なのですわ」




”ごめん。何言ってのかわかんない”


”これ、ボケじゃないの?”




「こちらの世界ではなじみがないかもしれませんが、歩き茸の毒って死にますけど、凄く気持ちよくなるんですよ」




私は前世で食した数々の毒系のダンジョン飯を思い出した。


一歩間違えて、死にかけたことが何度あったことか・・・いい思い出ですわ。




「歩き茸は比較的初心者向けのダンジョン飯ですわ。毒があって痺れますけど、この世とは思えない快楽がやって来て、キノコの味と相まって、最高の味となるのです。毒消し飲むの忘れると死にますけど」




”うん、うん、そうだよね。普通死ぬよね”


”よく今まで生きてたなw”


”気のせいかヤバい薬物の香りが?”




「先輩と究極のダンジョン飯を探求していた時に辿りついたのが、この究極の一品。初めての時は食べるのに夢中で死にかけたのですが、運よく通りがかりの至高のメニューの方のおかげで、命拾いしたんです。たぶん、あの時に通りかからなかったら今頃私は死んでいました」




”自殺を止めに入ったのかな?”


”普通、その段階で止めないか?”


”うん?究極と至高?”


”海〇雄山かな?”




「どんな毒でも毒消しがあれば消せますし、即効性の毒は薄めて遅効性の毒に変えて食べるんです」


「前の世界の貴族の食文化なんですけど、庶民は絶対そんなことしないです」




”やっぱりw”


”異世界にも常識人いて草w”




アリスめ、今回いい処ばかりかっさらって行って、主人の私をはめるつもりですの?


私はやや対抗するかのように言ってしまいました。




「あれから毒と見れば片っ端から口に入れるようにしているのですわ」




”・・・は?”


”リーシェちゃんは頭おかしいのかな?”


”自殺志願者と同じだよ?”




「でも。毒がある物って美味しいのですわ! 美食の前の小事、分かりますよね?」




”いや、わかんないよw”


”同意を求められてもw”




おかしい、おかしい。チャット欄からアホの子を見る視線を感じる・・・。




「それでまあ、三回位は死にましたわ」




”いや、さらっと頭おかしい発言止めよw”


”てか、なんで死んだのに生きてんの?”




「もちろん、ポーションで復活させてもらったのですわ」




”だから、気軽に死にに行く感覚おかしい”


”食への探求心が死の恐怖を上回るって何なの?”




なんかチャット欄から誹謗中傷を浴びせられているような気がしましたが、気に留めず、私はスケルトンの骨から出汁を取り、究極のラーメンを完成させた。


そっと、オーク肉のチャーシューを乗せると。




「さあ、エリカさん、アリス。食べましょう」


「「絶対嫌です!!」」




何故かエリカさんとアリスに拒否されましたの。

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