第23話リーシェ、コラボ配信する3
やっぱりエリカさんは凄いのです。
あんなに殺伐としていた私達のサイトをこんなに盛り上げてくれて。
なんか、視聴者の皆様との距離が縮まったような気がするのです。
コラボやって良かったのですわ。学ぶべき所がたくさんありましたの。
真似できそうにないのですが・・・。
やっぱり先輩は凄いのです。
でも、少しずつでも自身の糧にしませんと。
そうなのですわ。先代の剣聖に弟子入りした時も・・・。
『ちッ! もう少しでやれたのに!』
寝込みを襲って来た師匠に寝込みを襲われたらどんなに鍛錬していても無駄に死んでしまうと教わりましたの。
それに、
『ああああッ! 謎の湯気で肝心な所が見えん!』
そうなのですわ! お風呂で襲われたら! そんな時、視界が悪いことを利用することも・・・
剣聖としての私は師匠の指導や導きでここまで来れたのですわ。
エリカさんからもたくさん教わりますの。
「リーシャちゃん、あそこに宝箱があるんだけど、リーシェちゃんならどうする?」
エリカさんがそんなことを言って来ましたの。
おそらくこれは私への試練ですわ。
師匠も服が溶けてしまう毒液を吐く魔物と対戦した時、同じことを言いましたわ。
もちろん服など気にせず倒しました。
おかげで服がほとんど溶けてしまいましたが、師匠は。
『よし、上手いぞ! ああ! 謎の霧で肝心なところが見えねぇ!』
ちゃんと褒めてくれたのですわ。
ここは慎重に考えて対処しませんと。
「もちろん開けますわ! きっといい物が入っていますわ!」
「ええ? いや、ちょっ!」
私は迷わず宝箱を開けて中身を見た。
・・・ミミックが現れた。
ドン!
とりあえず殴って爆散させる。
もちろん中身は空っぽですわ。
「残念ですわ」
「残念なのはリーシェちゃんの方かな?」
「ええ!」
驚愕するエリカさんの辛口の批評。
いつもこうして来たのに? 師匠からは一度もダメ出しされたことなんてなかったのに?
ミミックを殴る前に一瞬変な間があったからだろうか?
ちょっと微妙に気まずい空気を感じたので、仕方ないのですわ。
「リーシェちゃん。宝箱は色で大体危険度がわかるよ」
「色なのですの?」
“まさかの基本を知らないw“"
“さすがリーシェちゃんw“
"宝箱は色や形、紋様で大体わかる。それに普通あらゆる可能性を考えて対処する“
“何でいきなり開けたのかな?“
「リーシェちゃん? 今まで宝箱の罠はどうしてたの?」
「え? ミミックの場合殴る、毒矢とかは殴る、爆弾の場合爆発する前に殴る・・・です」
「・・・リーシェちゃん」
「リーシェ様は何でも物理で解決しますので・・・」
“実際リーシェちゃんだと問題ないこと判明w"
“宝箱で戦友を亡くした俺のトラウマがぁ!“
"たしかに問題ないけど!問題ないんだけ・・・ど?“
「リーシェちゃん。ダンジョンの罠は本当に危ないから。万が一未知の罠だったらどうするの?」
「その時考えます」
“駄目だw“
“出たとこ勝負しかないw“
“これ有名配信者の動画だよな?”
“いや、常識が如何に大事かを学ぶ教育動画ぜよ“
「宝箱を見つけた時は慎重に過去の資料を参考に対処! 未知の物はスルーしましょう!」
エリカさんが解説してくれましたわ。
でも、宝箱があるのに諦めるなんて選択肢があるなんて、目から鱗ですわ。
エリカさんは鑑定のスキルを持つ盗賊のタレント持ちがいればパーティの安全が高まるし、より報酬が増えるので、戦力として弱い盗賊さんを軽視してはいけないと説いていた。
なんか腑に落ちない。
「でも、未知の罠に出会ったとしても大抵のことには対処できるのですわ」
「へ? いえ、もし高レベルのモンスターハウスとか深層階へのテレポートだったら?」
「ちょうどいいレベリングになるか、近道出来て楽になるだけじゃ?」
ついついエリカさんに反論してしまいましたの。
“駄目だw意外と正論w“
“普通死んでるんだが?“
“脳筋の極み・・・か?“
「リーシェちゃんをみくびっていた」
「エリカさん。リーシェ様を侮っていましたね」
“まさかの常識が非常識に論破される?“
“いや、非常識に常識は通じないということか?“
“リーシェちゃんは可愛いから仕方がないw“
“そういう問題ではない・・・かと。困惑“
「もし罠にかかって対処を誤ったら命がないんだよ?」
「罠って階層に応じて危険度が下がるから、むしろ罠にはまって対処をすれば実戦での良い訓練になるのですわ。それに鍛えていれば大抵の罠は大丈夫」
「た、たしかに罠って魔物も使って来るから良い訓練になるかも。それにリーシャちゃん位まで鍛えていたら? 大丈夫だよね?・・・あれ? ということは罠の攻略の最適解は何にも考えないで開けること?」
良かったのです。エリカさんが私の意見に理解を示してくれたのですわ。
“駄目だエリカちゃんが罠にハマったw“
“負けないでエリカちゃんw“
“エリカちゃん、常識取り戻してw“
“毒されたままだと危険だよw“
視聴者さんに説得されてしまいましたの。
☆☆☆
エリカさんは視聴者さんに諭されて、何故か急に宝箱のことは保留にしましたの。
その後も視聴者さんと楽しく話して、時々私やアリスに話をふって場を温めてくれましたの。
そして無事、中層の魔物の狩場に到着しましたの。
「ここはリーシェちゃん抜きで戦おうかな?」
「何故ですの?」
「解説不能というか、過剰な火力で他の探索者さんに迷惑かかりそうで・・・」
「そうですね。リーシェ様って、レールガンの先のことなんて考えないで撃ってますよね? この間のエッグサイトの時もスカイタワーに流れ弾があたって一部損壊したような」
”リーシェちゃんドンマイ”
”エリカちゃんの言う通りにするんだよw”
”リーシェちゃんは深層が似合うから”
”でも、魔物がたくさん現れたら我慢できそうにない”
チャット欄はエリカさんを支持する言葉が多い。
私は何も言えませんの。
「本来コラボって協力プレイが人気あるけど、私とリーシェちゃんじゃ違い過ぎるから」
”そうそう。常識の差が激し過ぎてw”
”常識人とリーシェちゃんの共闘は不可能w”
”エリカちゃんの意見妥当”
”アリスちゃんと組んでみれば?”
「そっか! アリスちゃんと私でコンビを組んでみる?」
「え? 私ですか?」
「アリスちゃんは遠距離攻撃できる?」
「弓(小)と風の精霊魔法(小)ならあります」
「じゃぁ。私が前衛でアリスちゃんが後衛ね」
「お、お願いします」
エリカさんが天使のような笑みを浮かべてアリスを見るのです。
なんですの?
この差は?
私の不満をよそに配信はつつがなく進んでいくのですわ。
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