第21話リーシェ、コラボ配信する1
首相SIDE
「異世界人がこの世界でも魔法が使えることは予見されていましたが、予想より十年は早い展開になってしまいました」
「一体、どういうことなんだ? 魔法が使えるのはダンジョンの中だけではなかったのか?」
「ダンジョンが発生した所以は未だ不明ですが、我が国は米軍経由の情報でダンジョンと異世界は接続されていることを把握していました。そして、すぐさま異世界人との接触に成功。彼らの魔法の知識は入手済みです。それと同時に異世界人はこの世界でも魔法を使うことができることを確認済みです。彼らの心臓は高濃度の魔素を溜め込んでいるのです」
「では、ダンジョンの中の魔物はどうなっているのだ?」
「ダンジョンの魔物も長い時間をかけて体内に魔晶石を形成し、将来、ダンジョン外での活動が可能になることは予見されていました」
「しかし、エッグサイトに現れた魔物はどう説明するのだ?」
ここは首相官邸。増税にしか興味がない増税ゴリラこと板野真一は珍しく増税以外のことに関心を示していた。名前は意外と普通である。
「これを見て下さい。魔物の額には謎の結晶がはめ込まれています。おそらくこれが魔晶石の代わりをしているのでしょう」
「それで・・・」
仮にも一国の首相、流石に増税のことだけに注力する訳にはいかなかった。
要は国防問題にまでに発展している。
「我が国が異世界のレンブラント国に説明を求めた所、魔王城近辺に大幅な魔力の増大を観測。その後、同時にその消失を確認しました」
「待て! 魔王だと?」
「首相とて容易に話して良い内容ではございません。くれぐれも口外しないようにご留意をお願いします。あなたはこの国の真のトップである我々官僚の指揮下にあることを重々理解ください」
「ぐ、ぐぅッ!」
この国の闇が見える一場面だが、さすがの増税ゴリラも放置できる内容ではない。
「つ、つまりあれは? まさか?」
「そうです。異世界の魔王軍です」
「一体どうすれば? あれだけの軍勢がいつ都心、いやこの国の何処に現れるかわからないなど、もし国民に知れればパニックになるぞ!」
「ご心配には及びません。レンブラント国より貴重な戦力の提供を受けました」
「そ、それは?」
「魔王には・・・勇者・・・と言うわけですよ」
「勇者?」
首相は唖然とする。
「とりあえず情報管制をしきます。首相も勝手な行動は慎むように願います」
「グッ」
黙って頷く首相。その表情には苦悩が見てとれた。
☆☆☆
スパチャの臨時収入が入ったので、アリスが私用のスマホを買ってくれましたわ。
早速先日勇者に買ってもらった可愛いおしゃれ着に着替え、メイクを施して、可愛い自分を自撮りしてSNSに上げるつもりですわ。
映える写真をアップして、フォロワーさんがたくさんついてくれるといいな思ってしまいますの。
そう言えば?
「アリスがエゴサはしない方が良いって言ってましたが、エゴサってなんですの?」
私は早速ググってみたりする。
エゴサ:インターネット上で自分自身の評価を確認すること。
先日、エッグサイトで頑張りましたから、さぞかし良い評価が期待出来ますわ。
早速画面をタップする。
Viki
探索者リーシェ
またの名を深層のバーサーカー、鮮血のマジキチ。
ダンジョン内で無類の強さを誇るが、笑顔で魔物を殺戮する姿はむしろ悪魔よりとの評判。
容姿端麗、スタイルは良く、清楚系と言っても過言ではないが、ダンジョン内での鬼神の如き戦いぶりから、性格破綻者と見られている。
ネット民には好評だが、一般人は見た瞬間にプラウザバックする。
なお、こんにゃくを使用した新陸上競技、ペチンペチンの発案者でもある。
「クソッタレなのですわ!」
思わずスマホを窓の外に投げそうになるが、すんでの所で踏みとどまった。
『ぴこぴこ』
スマホから通知音がする。
早速お返事なのですわ。先ほど皆さんにご挨拶のメッセを送っておいたのですわ。
実は先日のエッグサイトでの一件で勇者やエリカさん、アキラさんのメアドをゲットしたのです。
アインのメッセージを開くとエリカさんからだった。
『コラボ配信しませんか? 宜しければ私の配信にゲストとしてご招待したいのですが、如何ですか?』
コラボ配信!
って、何ですの?
早速ググって見る。
『ダンジョン配信の機能で、他の配信者とライブで同時配信する機能を指す』
なるほどなのですわ。有名な円城エリカさんとライブで同時配信しましたら、きっと同接増えますわ。
それに誤った私の評価を正さないと・・・。
きっとアリスが無言配信なんかするから誤解が生じたのですわ。
・・・私も無言だったけど。
よし! エリカさんに解説を丸投げするのですわ!
自分でも、なんて良い考えなのですの!
ポンコツのアリスでは無くエリカさんに解説もやってもらって、ちょっと私に関する誤解もそれとなく解いてもらって。
そうだ! アリスが言っていた魔物料理の配信をするのですわ。
私の女子力を見れば、皆さんも私のことをバーサーカーなんて言わないと思いますわ。
前の世界でも散々言われてましたが、こっちの世界でなら、まだ取り返しがつきますわ。
私はエリカさんにメッセを入れていた。
待ち合わせ場所は渋谷ダンジョンの最深部。
『出来るかぁ!』
何故か、エリカさんから謎のブチ切れメッセが来ましたわ。
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