第8話リーシェ、デートする
「まったく、勇者ときたら、私を待たせるなんて、酷いのですわ」
「一時間も前から待ってるからです」
「アリス? それはそうと、何故あなたもいるのですの?」
「え? 決まってるじゃないですか? リーシェ様の日常回を配信するんですよ」
「そんなの需要ありますの?」
私は疑問に思います。ダンジョンでの探索に興味を持つ人がいても、私のプライベートに何の価値がありますの?
「あ! リーシェ様! 勇者様です」
「あ! 勇者!」
「ごめんね。待たせた?」
「いえ、今来たばかりですわ」
“一時間前から待ってる癖にww”
“三十分前に来る勇者もなかなかww”
「魔王?」
「なんですの?」
「可愛い過ぎる、ぶはぁッ!」
“リーシェちゃんもだけど、勇者もたいがいだよなぁ”
“バカっプル”
“俺たちは一体、何を見せられてるんだ?”
「か、可愛いなんて、そんなことないのです」
「いや、世界一可愛い。だけど、魔王はいつもその格好なの?」
「あ! これは、その」
「すいません。リーシェ様は異世界から来たばかりで服の持ち合わせが」
アリス? 確かにそうですわ。でも、なんでですの? あなた、デートにはこの魔王の服がいいって、力強く言われたので、つい、着てしまいましたの。でも、これ露出が多くて皆さんの視線が気になりますわ。
「魔王! みんなお前を見てるぞ! 魔王が可愛い過ぎるからか?」
「違います! こんな変な露出の多い服着てたら男の人の視線集まるの当然です!」
アリス、酷いですわ。そんな風に思われるなら魔王服なんて着ないですわ。
「私、変ですの?」
「全然変じゃない。むしろ可愛い!」
”だから、俺達は何を見せられとる?”
”まあ、何かやらかすだろうww”
「ところで、勇者様? 勇者様って、聖剣に選ばれた勇者じゃないですよね?」
「ん? 俺か? 俺は召喚勇者の方だ。君らの世界から召喚されてしまって、勇者になって、魔王を倒した」
「え? 魔王を倒したんですの?」
「は? 魔王はリーシェ様じゃ?」
「いや、ややこしい話なんだけど、魔王を倒したけど、新しい魔王が誕生するって前魔王から聞いてね」
「はあ」
「君らの王様に報告したら、夢見の賢者の予知で、魔王が新しい魔王になるって聞いて、飛んで来た」
”誰か意味わかる?”
”解説、はよ”
「すいません。意味が」
「ごめん。ちょっと、説明が足らなかった。俺が召喚された時、聖剣に選ばれた勇者一行が出立して行った、魔王や君と一緒に」
「あら、おかしいですわ。出立の時にお会いしてましたら、絶対覚えてますわ」
「それが、俺は遠目で魔王を見ていただけで、多分、君は俺を見てなかったと思う」
「それは間違いございませんわ。一目見たら、必ず恋に落ちますから」
「リーシェ様、顔赤くして、もじもじしないでください」
”この子、チョロ過ぎん?”
”チョロインww”
「そんな訳で魔王達聖剣の勇者を見送って三か月後に俺達召喚勇者のパーティは王都を出立したんだ」
「そうなんですの? では、私達は追い越されたのですわ」
「ああ、その様だ。帰りに聖剣の勇者達の亡骸を発見した。それで魔王だけがいないことに気が付いた」
「そんなに私のことを覚えていてくれたのですの?」
「当たり前だ。魔王を一目見た時、一目惚れだった。可愛すぎッ!」
そうか、やはり勇者パーティは全滅しましたの。
当然の報いですわ。
"あの、聖剣の勇者と召喚勇者ってどういうこと?”
”説明よろ”
「あ。すいません。皆さんはご存じないですよね。勇者には二種類ございまして、聖剣に選ばれた勇者と異世界から召喚された勇者とがあるのです。聖剣の勇者は聖剣から類まれな力を得られ、召喚の勇者は強力な類まれなタレントを得ます」
”流石アリスちゃん、異世界冒険団、唯一の常識人ww”
”まとめ。リーシェちゃん、聖剣の勇者と魔王討伐に出る→召喚勇者三か月遅れて魔王討伐に出る→召喚勇者、聖剣の勇者を追い越す→聖剣の勇者全滅する→召喚勇者、魔王を倒す→新魔王誕生で召喚勇者この世界に来る→召喚勇者リーシェちゃんに一目惚れする”
”有能ww”
”わかたww”
”あれ? だけど、召喚勇者はなんでこの世界に来れるの?”
「そう言えば、それは不思議ですね? ちょっと聞いてみます」
”よろ”
”はよ”
「勇者様? 勇者様はどうやってこの世界に来たのですか?」
「ん? 君は魔王の僕か? ああ、俺は元々この世界の人間で、召喚勇者の血統なんだ。過去の召喚勇者は俺のじいちゃんや先祖だ」
「ええ! そうですの?」
「知りませんでした」
「ああ、それで過去にこっちとあっちを行き来する手段は確立してるんだ。転移する処には勇者の紋章が書いてある」
「成程ですわ。私も勇者の紋章に手を触れたらですわ」
「私も偶然勇者の紋章に」
”なるほど”
”こんにゃく買って来た!”
”出たこんにゃく女!”
”こんにゃく女だけど、何か聞きたいことある?”
”なんでそんな性癖に目覚めた?”
”料理の最中に偶然、手にこんにゃくがあたって気持ち良くて”
”それを尻にあてようと?”
”うん。思い付きでやってみたら、ひゃんって声でた”
”なんかエロい”
”どんな態勢でするの? やっぱり四つん這い?”
”そんなことしない。立ったまま”
”こんにゃくで尻ぶってあげようか?”
”嫌だよ。恥ずかしいw”
”そこは羞恥心残ってる?”
”謎の思考回路”
”やっぱり強弱つけるの?”
”もちろん、オンとオフはつける”
”どんな感じなの?”
”最初は割と真顔で弱くぺチぺチして、気分が乗ってくると強くぺチンと”
”気分が乗ってくる! ってどんな感じだよww”
”想像して吹いた”
”強弱つけるとこんにゃくも喜んでる気がする”
”こんにゃくも喜ばせるのかww”
”どんな顔してやってるの?”
”基本は真顔、乗ってる時はニヤニヤしてるかもwww”
”声とかやっぱり出ちゃう?”
”一番最初の一撃は何度やっても声が出るww”
”こんにゃくに尻を叩いてはいけませんという注意書きあるでしょ!”
”初めてぺチンとした時、これこれと思った”
”普通、思わねぇよww”
”こんにゃくの産地のHPに新たなこんにゃくの使い方というのがあったんだけど”
”よし、わかったww”
その日、勇者とのデートを終えて、アリスの家に戻ったリーシェ。
深夜零時を回って、二人共就寝中の筈。
「ん?」
アリスは目を覚ますとリーシェの気配がする。
ふと、目を開けると、全裸のリーシェが片手にこんにゃくを持って。
「ひゃん!」
「リーシェ様」
堕ちた剣聖を見てしまったアリスは一人涙するが、スマホの動画モードで撮影するのは忘れなかった。
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