第9話リーシェ、投げ銭を要求する
「リーシェ様。Wのトレンド、リーシェ様とこんにゃくになっていますよ」
「え? 私がですの? なんで私が? それになんでこんにゃくが?」
「リーシェ様は自覚ないのですね。こんにゃくについては、アハハ!」
アリスがなんか誤魔化しているような気がしますわ。
「それより配信、始めますよ」
「わかりましたのですわ」
配信が始まった途端、ピコピコとアリスのスマホから立て続けに音が鳴る。
”お! 配信始まった!”
”今日は何やらかす?”
”昨日のこんにゃくは傑作だった”
”配信事態は普通だったんだけど”
”まさか掲示板にあんな切り抜きうpされるとはww”
”こんにゃくのリーシェちゃんww”
”昨日からWのトレンド、リーシェちゃんとこんにゃく一色”
「あ、あれ、私、そんなに有名になったんですの?」
”最強の探索者”
”可哀想な子”
”アホの子確定済ww”
「アホの子? 何のことですの?」
”掲示板見てないの?”
「すいません。皆さん、あの切り抜きは私がこっそりとだから内密に」
”了”
”察し”
”今後の為に協力ww”
何なのですの皆さん? それにアリスまで私をのけ者にしてますわ。
「リーシェ様。とりあえず始めましょう。なんか喋ってください」
「え? 私ですの?」
「他に誰がいます?」
「嫌ですわ」
「家から追い出しますよ」
涙目にもなりますわ。だって、私、大勢の前でスピーチとか苦手ですわ。
「み、みなさん。おはよう、ご、ご、ございますです、痛ッ!」
”噛んだ”
”本当に噛んだッぽい”
「アリス。痛いですわ」
「リーシェ様。我慢して早くダンジョンを進むのです。しないと追い出しますよ」
「はい、わかりましたの。ぐすん。家を追い出されたら、困りますわ」
”可愛いww”
”見た目は清楚系ww”
”これで尻を”
”止めろ”
”了”
「ま、まだ配信者始めたばかりで何を喋ればいいかわからないのですわ」
”ドラゴン倒したのどうやったんですか?”
”今日のパンツの色は?”
”おっぱい何カップ?”
「ドラゴンを倒したのはレールガンですわ。雷撃の魔法の応用で、電磁力で一円玉を射出しましたわ。パンツの色は黒ですわ。胸のサイズはFカップらしいですわ。昨日、ブラというものを買いましたの」
”全部話すとかw”
”セクハラにも神対応ww”
”リーシェちゃん、そういうのは話さなくていいんだよw”
「そうですの?」
「リーシェ様。エッチな内容はスルーしてください」
「おk」
”異世界転移二日目で、おkだと?”
「あと、皆さん、できましたら、できましたらですが、投げ銭をお願いしますわ」
”投げ銭知ってるんだ”
”俺、超投げるよ!”
「ありがとうございますですわ。人気Vtuberに投げ銭したいのですわ」
”転移二日目でVtuberに投げ銭だと?”
”投げ銭したくて、投げ銭欲しいとかww”
”ホストとキャバ嬢みたいなww”
”闇を見たww”
「リーシェ様。実は私に腹案があります。二階の隠し部屋に最下層へ転移できる便利なアイテムがあるんです!」
「まあ、なんて親切なんですの!」
”いや、それ最悪なトラップだから!”
”初心者用の取説にも書いてるでしょ? 立ち入り禁止って!”
「これですのね」
”ああ、聞いてねぇ!”
「さっさと最下層に行きましょう」
”ああああああああああ。トラップを自ら踏むとは”
”斬新なトラップの使い方ww”
「......」
「......」
”......”
”......”
”今北産業! 何が起きてる?”
”無言配信”
”配信事故?”
”ある意味そう”
”説明求む”
”十分前から語彙力のないリーシェちゃんとアリスちゃん沈黙”
”十分前から、S級の魔物登場→レールガンで消滅→リピートww”
”最下層でS級の魔物と出会って何も起きないとかww”
”頭おかしいのか?”
”リーシェちゃんが頭おかしいレベルで強すぎww”
”無言の単純作業を十分間続けるとかww”
”それを見ていて意外と飽きない”
”非日常のダンジョン最深部に日常があったという非日常ww”
”それも服が昨日勇者に買ってもらったおしゃれ普段着とかww”
”非日常の破壊者ww”
”あれ? 誰か戦っている?”
ボケッとして歩いていたけど、チャット欄で気が付きましたわ。
誰か戦っていますわ。
”マズイ! 竜の虚がレアな魔物に苦戦してる!”
”ほんとだ! 竜の虚の配信見て来たら、リーダーの進藤アキラが重症!”
”重症て?”
”モザイクかかるレベル”
”それヤバい!”
気が付くと私は走り始めましたわ。
「ダメだ! このままじゃ!」
「何とか撤退を!」
「助太刀致しますの」
「はっ?」
「へ?」
ここではレールガンは使えませんわ。
皆さんを巻き込んでしまいますの。
「宝剣、アゼリューゼ!」
私は相棒の宝剣を収納袋から出すと構えて走った。
「せやぁ!」
タンク役とおぼしき戦士風のいでたちの方に迫っていた触手を切り裂く。
新たな触手が私に迫るがバク転してかわす。
足がついた瞬間、地面を蹴ってダンジョンの天井に向かって飛ぶ。
跳躍のエネルギーが尽きていないうちに天井を走って魔物の真上にたどり着く。
この魔物の弱点は真上ですわ。
天井を蹴って、一気に魔物との距離を詰める。
「せい!」
宝剣を一気に振り下ろす。
魔物は真っ二つになりましたわ。
「あ、ありがとう」
「助かります」
「でも、リ、リーダーがぁ」
私が視線を移すと、壁にうずくまるように座っている男性がいましたわ。
手と足がもげて、目玉も飛ばされて、内臓もデロッて出てますわ。
「大丈夫ですわ。これ位、かすり傷ですわ」
「は?」
「何を言って?」
”ちょッ!”
”リーシェちゃん、マジで何を?”
私は収納袋からポーションを取り出すと、男の人に飲ませた。
”......”
”......”
”......”
あれ? なんで皆さん無言ですの?
”それ、何?”
「ポーションですわ」
私は良くわかるようにドローンに瓶を見せた。
”え?”
”は?”
”意味がわからん”
”わかった。全然わからん”
皆さんどうしましたの? ダンジョン攻略にポーションは必需品ですわ。
”ああああああ!”
”それ、ポーション!”
”特級呪物ww”
”やっぱ、リーシェちゃんはやらかすww”
「これ、こっちではそんなに珍しいんですの? 私は美容液代わりに愛用してますわ」
”美容液……? 美容液とは……”
”ふェッ!?”
”ヤバすぎる”
”頭おかしい”
”美容液? 特級呪物を?”
”それ一つで億稼げるけど……?”
「え? これって、そんなに貴重なのです?」
知らなかった。ポーションなんて、前の世界じゃ一山いくらで売ってましたわ。
”非日常の破壊者ww”
”天然の疑いも?”
”頭おかしいのは確定”
”可愛いから俺は好きww”
「きょ、今日はここまでで……なんか私やらかしましたの? そう、配信一時間以上だし、皆さんそろそろ飽きたと思いますわ。今日はここまでにしますね」
”草”
”面白過ぎるw”
”誤魔化すの必死w”
”ヤバ過ぎ謙信w”
その日の配信を切ろうとした時に見てしまいましたわ。
【同接数百万】
「ひゃん……」
つい、情けない声を出してしまいましたわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます