第7話リーシェ、告白される

「んッ!」


思わず短い声が漏れてしまいますわ。


身体の中心に何か魔力の渦のようなものを感じますわ。


「な、何をしましたの?」


「何もしておりません。あなたが本来の力に覚醒しただけです。魔王様」


「そんな訳がありませんの!」


「どうですかな? おや? 変化が現れたようですな」


「リ! リーシェ様! 早めに自害してください!」


アリスの言うことはもっとですわ。でも、酷くありませんの?


「リーシャ様の衣装が!」


「魔王らしくなりましたな」


気が付くと私の騎士の誇りを表わす白と誠実さ表わす青を基調としていた鎧が姿と色を変え、漆黒の......エロい恰好に変わりましたの。


「露出多すぎませんの?」


「ごほん。不肖、私めがデザインしました」


「エロ目ですよね?」


「う! 煩い! 決してこれから毎日お仕えする魔王様をエロい目で見ようなどしてへん!」


アリスの突っ込みへのリアクションから、どう考えてもエロ目ですわ。


「あなた。誰ですの?」


「申し遅れました。悪魔将軍、クリムゾンでございます」


本当に私が魔王に? 魔王は決して人族とは相容れない存在ですの。


魔王が存在するだけで魔物は活性化し、地は枯れ果て、人間には致命的な厄災となりますわ。


もう、人類の敵、魔王として生きるしかないのですの?


「待て! 魔王!!」


「だ、誰ですの?」


頭がぼんやりしかけた時に声をかけられ、驚きの声を呑んだ。


突然現れた男は?


「俺は勇者けいご。魔王に要がある」


「な、何ですの?」


「お前は人類の敵として世界をその手に掴むだろう」


「それで? 私にどうしろと言いますの?」


アリスみたいに自害しろとでも言いますの?


ええ。わかっていますわ。それが一番合理的な方法ですわ。


「お前の立場はわかっている。だからこそ、今言っておかなければならないことがある」


「一体何を? それとも勇者様は私に死ねとおっしゃりますの?」


自嘲気味に言ってしまいましたわ。


「お、俺と付き合ってください」


「は?」


「え?」


私は驚いて、勇者の顔を見てしまいましたわ。


黒髪に紫がかった綺麗な瞳。整った顔。


わ、私、生まれて初めて告白されましたの?


「魔王様! 勇者は魔王様の敵ですぞ!」


「わ、わかりましたわ。あなたと付き合いますわ」


「え? ま、魔王さま?」


「か、勘違いですわ! ひ、一目惚れなんかじゃないですわ! 自分でもハイになって、『私は何を?』と『私、ラッキー♡』が交互に繰り返していているけど、初めての恋はもっとロマンティクな展開を期待していたのにどうしてくれますの? とか。勇者と魔王という設定で告白するとか、設定萌えで私をキュンキュン死させる気ですの? 私をゾッコンにさせた責任を早く取れと言いたいですわ、とか、今すぐ結婚して子作りして、子供は五人は欲しいとか、その前に婚姻届けを早く取りに行った方がいいとか、新婚旅行はこっちの世界のヨーロッパがいいとかなんて! 全然思っていませんわ!」


「魔王様、それ、あれですやんか~」


「魔王!」


「勇者!」


イケメンの勇者にギュッとされる。


「んっ♡......ではないですわ」


「ああああああああああ! この悪魔め! 魔王様を誘惑するとは! 悪魔将軍クリムゾンが抹殺してくれるわ!」


「レールガン!!」


「ギャアアアアアアアア!!」


危ないところでしたわ。私としたことが、危うく魔王へと闇堕ちしかけましたわ。


「悪魔将軍クリムゾンよ。正義の為、お前を倒しますわ!」


「いや、魔王様? 色ボケして、理性止まってますやん?」


「勘違いするな。私は決してイケメン勇者にゾッコンで都合の悪いお前を消しにかかるとかじゃないですわ」


「逆にそれ以外に何があるんですかぁ?」


細かいことに煩いヤツですわ。


人生で初めてイケメンに告白されたのですわ。誰だってこうなりますわ。


「わ、私は魔族と人族の間の友和の橋渡し役として生きる決意をしただけですの。決して色恋沙汰での軽率な行動ではございませんわ」


「真っ赤な顔で言われても説得力ありませんなぁ!」


「この魔剣」


「魔剣リームシュトアーナですがな」


「そう、そのリームシュトアーナでお前を斬る」


「酷いですなぁ。しかし、私とて悪魔将軍! お前を絶対服従させたる!」


何故か悪魔将軍の目が赤く光っているような気がしますわ。


そうか、これは魔眼ですわ。人を服従させる魔法ですの。


本来、聖職者、特に聖女の得意分野ですわ。


しかし、聖女はいる筈もないし、力を借りるなどごめん被りますわ。


「さあ。私の眼から目が離せないでしょう?これが魔眼、絶対服従の魔法でっせ」


「クリムゾン。お前はどうして人に害をなそうとするのですの?」


「人間は下等、弱いじゃない?」




”いきなりの展開に書き込みわすれてた”


“何故にア〇ラ構文ww”


“ワロタ。フラグ立った”




「そうですの。良かった。やっぱりあなたは本物の化け物ですわ」




“ア〇ラ構文完成ww”


“なんで自分から言うのか?”




なんかみんな変なノリですの。


本当に魔王にジョブチェンジしたのか、自分のステータスをそっと確認しますの。




名前:リーシェ・シュテイン・サフォーク


職業:魔王


年齢:十七歳十一か月


タレント:剣聖


ギフト:ビリビリ


スキル一覧:


空間魔法(極大)


身体強化(極大)


探知(極大)


雷魔法(小)




なら、あれが使えますわ。




「魔王様。私は千年生きた魔族やで」


「クリムゾン、私は一分前になったばかりの魔王だ」


「ば、バカな! この私がぁ!」


踵を返して勇者のところに向かう。


「クリムゾン、自害しろ」


ザシュ


クリムゾンの魔法を反転してやりましたわ。


空間魔法の応用【アクセラレータ】の能力ですわ。


「皆さんありがとうございますですわ。とあるの魔法知識で解決ですわ」




”既知感ある安定の落ち”


”魔王の衣装エロ可愛い”


”尊厳破壊は格別”


”こんにゃく買って来た”


”ふぁ?”


”またお前? 早く死ね!”


”男の尻をペチンぺチン?”


”私、女だけど?”


”ふぁ?”


“specオクレ”


”JD20歳、身長158cm、体重、ウェスト秘密、バストDカップ、ドヤ”


”やばい、MVP確定してしもた”

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