第146話 アメリカ到着
飛行機は着陸体制に入った。
朝ごはん?を食べて、腹が満たされて。
少し眠くなったところでうとうとしてたら着陸態勢だ。
眠気まなこでベルトを締める。
飛行機の滑走路に降り立つその瞬間の、ドンっという衝撃で目が覚めた。
「あ、到着か。」
小物入れに入れていた荷物やパソコン、デバイスの類はすでにスーツケースにしまっている。
ボディバッグからカーニーのサングラスを取り出し、かける。
このサングラスは渋谷の近くで新しく買ったサングラスだ。
ベルト着用サインが消えたところで上の棚からスーツケースを取り出して、シップを後にする。
徳森さんにも軽く手を振って、入国審査に向かう。
すでに何度も来たJFK国際空港。
勝手知ったる他人の家とばかりに入国審査をパスし、荷物受け取りを果たし、
税関でも、持ち込み荷物として大したものは持ち込んでないのでちゃんとパス。
晴れて入国の運びとなる。
「長かったけどあんまりキツくなかったな、やっぱり。」
私の車は別便で先にニューヨークに着いているはずなので受け取りに向かう。
ファミリー用の大きなスーツケースを乗せるカートにたくさんのスーツケースを乗せて運送会社の事務所に行く。
「こんにちは、藤原ですが、日本から車が来ていると思うのですが。」
「あぁ、こんにちは。
藤原さんですね。確かに到着しています。
まずパスポートの確認をさせていただきます。」
私はパスポートを担当者に渡す。
「お願いします。」
「ありがとうございます。
念の為コピーをとらせていただきますね。」
係員さんは手早くスキャナーでパスポートを読み取る。
「ありがとうございました、こちらご返却です。
それでは実車確認に行きましょう。」
担当者さんらしき人と共に実車を確認しに向かう。
到着するとちゃんと室内に保管されてあり、傷なども着いた様子はなかった。
「ありがとうございます。」
「こちらこそ。受け取りのサインをお願いできますか?」
「わかりました。」
わたしはサラサラっと日本語の漢字でサインをする。
「手続きは以上になります。良い旅を。」
「ありがとうございました。」
私は車のトランクを開け、スーツケースを詰め込む。
なけなしの後部座席にもスーツケースを詰め込む。
そして助手席にもスーツケースを詰め込む。
想定通りかなりギリギリだったが詰め込むことが出来た。
スーツケースを乗せてきたカートは担当者さんがその辺に置いておいてくれれば後で返しに行くと言っていたのでお言葉に甘える。
運転席に乗り込む。
ブレーキを踏む。
センターコンソールにあるミサイルの発射ボタンのようなエンジンスタートボタンを押す。
エンジンがかかる。
けたたましいエンジンの咆哮が空港にこだまする。
このGTRはプッシュボタンでエンジンが始動する。
確かにプッシュボタンでスタートする車もいいがわたしはキーを回したい。
キーを回すことが儀式なのだ。
随分と味気なくなったものだと思う。
小さな頃は父や母が運転席に座って車のキーを差し込み、エンジンをかける姿に憧れた。
「今となっては昔のことか。」
積みすぎたスーツケースのためか、やや重くなったハンドルを切り、倉庫を後にする。
時刻は16時半。
約束の時間は17時半なので十分間に合うだろう。
ロングアイランドエクスプレスウェイを通り、新しい我が家が立つウィリアムズバーグへ向かう。
途中のジャンクションで進路をブルックリン方面にとり、途中のマンハッタンアベニューへと入る。
マッキャレンパークを右手にしばらく車を走らせると、
イーストリバーの近く、ウィリアムズバーグ橋からさほど離れていないその場所にそこそこ大きな邸宅が見えてきた。
「いや思ったよりデケェな。」
車を家の前に停めるとエージェントさんが出てきてくれた
「あ、やっぱり藤原さんだ。」
「どうも、遅くなりました。」
「とんでもない!車は中に停められるのでどうぞこちらに。」
エージェントさんがリモコンで門扉を開けてくれ、車を中に進める。
「ガレージは?」
「もうできてますよ。そこのマークがついてるところに止めてください。」
「わかりました。」
見ると黄色く駐車場のように枠がつけられているスペースがあった。
そこに車を停めると、エージェントさんも運転席の横に立ち、何やらリモコンを操作する。
すぐに立体駐車場のように車が沈んでいく。
「これが楽しみだったんだよなぁ。」
「これは私も憧れます。」
下につくとそんなに広くはないが車を6~7台は停めれそうな地下空間に到着した。
簡単なガレージ機能も備えているらしい。
車の出入り口は今使ったここと、もう一つ裏口がある。
そちらはもう少し大きなリフトが備えてある。
「せっかくなんで、地下から説明していきますね。」
「お願いします。」
私は車を降りて、スーツケースを車から下ろしながら答えた。
「この地下駐車場は基本的に生活できる設備は全て整っています。
もともと地下シェルターとして製造されていたものを改装しました。」
「物騒ですね。」
「アメリカのセレブの間では常識です。」
「なるほど。」
私はどうやら常識を破壊するところから始める必要があるらしい。
「車はおそらく6台は十分停められるでしょう。
あとこちらにゴルフのシミュレーターを用意しております。
ご注文通り最新のトラックマンも用意しました。」
「ありがとうございます。」
エージェントさんもスーツケースを二つ受け持ってくれて、
2人で計5台のスーツケースを押しながら歩いていく。
「排水、換気は最大限に注力しておりますので、中でどれだけエンジンをふかされても、外でどれだけの大雨が降っても問題ありません。
リフトは自動ではないので、戻す時はリモコンかボタン操作で操作していただく形になります。耐荷重はこちらの小リフトで5トン、裏口の大リフトで20トンとなっております。」
「わかりました。
なかなかごついですね。」
「そうですね。ご注文通り、簡単な重機なら入れるようにしました。」
「ありがとうございます。」
「では中に入りましょう。」
「はい。」
この家は地上二階建て、地下一階建ての家となっている。
しかし、セレブの家といえばつきもののエレベーターは完備していない。
整備は大変だし、1人の時に止まったら怖いし。
無駄にセキュリティも高いためおそらく救助も遅れると考えたとき、エレベーターの選択肢は自然と消えた。
しかし今のようにスーツケースが山ほどある時。
エレベーターがあればよかったと思う。
「あ、藤原さん、前の住人さんが荷物用のエレベーター入れてますけどそっち使いましょうか。」
前の住人さんナイス!!!!!
めちゃくちゃナイス!!!!
2人で荷物をエレベーターに乗せ、地上階にゴンドラを送る。
人間は階段を登る。
階段を上り切ると玄関だった。
「玄関ドアを開けて右手が地下につながる階段になってます。
荷物はここに出てきます。」
一見柱のように見えるが正面に回り込んでみると確かに荷物用エレベーターだ。
地下からの階段はこのエレベーターを囲むようにぐるりと回っている。
「エレベーターは2階まで繋がってます。」
「ありがたい。」
「それじゃここで靴脱いでもらって中案内しますね。」
「お願いします。」
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